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  • Shino Nishikawa

マトルキャットと謎のヘイリエント

マトルキャットと謎のヘイリエント

「お父さん。アムタールムでの万博に来られるなんて、夢みたいだね。」

幼いアスタ・モアサは、父親のレーター・モアサに言った。

「そうだな。お前も、何かを開発して、化学者になれ。」


兄のジェイソンは、友達のマルコと一緒に、面白機械を見ている。


「父さん、こっち。」

お父さんは、アスタの手を離した。

「あ‥。」


3人で何かを話している。すると、そのロボットの開発者が来た。

「こんにちは。開発者のマイケル・ドーワッツです。」

「マイケル先生、こちらは素晴らしいロボットです。」

「ありがとうございます。」


「アスタも来いよ。」

兄のジェイソンが、アスタの下に来た。

「え‥。」

「大丈夫だから。」


アスタは、ポップコーンをちらりと見た。

「なんだ、腹が空いたのか?」

「うん。」

「ちょっと待ってろ。」

ジェイソンは、売店に行った。


「アスタ、ジェイソンは?」

「売店に。」

空気が揺らぎ始めた。


「え?」

「あの‥売店に!」


バン

大きな爆発が起き、目の前が見えなくなった。


「アスタ!アスタ!」

「え?」

「大丈夫か?」

ジェイソンが覗き込んでいた。


「うん‥父さん達は?」

「今、探してくる。‥とにかく、お前はこっちだ。」

「え‥。」

ジェイソンは、アスタを担ぎ、外に出た。

外には、救急隊や警官が到着していた。


「何が起こっている。」

「おそらくテロです。」『犯人は、魔法を使っています。』

若い刑事は、小声で言った。


警部は、舌打ちをした。

「マトリアシル国王に連絡を。一刻も早く、魔法族の警官隊を呼ぶのだ。」


警部はまた、舌打ちをした。

「今回は高くつくぞ。ケイテス。」


「ほら、お前はここにいろ。」

救護をしている太った女性の近くに、ジェイソンは、アスタを下した。


「俺は、父さんとマルコを探しに行ってくるから。」

「ダメ!!」

「大丈夫。兄さんは強いぞ!」

ジェイソンは、魔法の杖を出した。


サイレンが鳴っている。

中から、金髪の男が出てきた。

「大変だ!!逃げろ!!また爆発が起こる!!」

中では、白煙の中、ピンク色のシャボン玉のようなものが、ふわふわと浮いていた。


「君も早く。逃げるんだ。」

「中に‥お父さんとお兄さんが。」

「分かった。俺が連れてくる。さぁ早く。」


アスタは、太った救護の女性と一緒に逃げた。


金髪の男はまた、ホールの中に入った。

「おーい!!誰かいるかー!?いたら、返事をしろ!!」

「あ‥。」

ジェイソンは、目を閉じている父を支えながら、かすかに声を出した。


「いるのか!?」

「あ‥。」


金髪の男は、ピンクのシャボン玉を、目を見開いてみた。


「仕方ない。」

金髪の男は、杖をシャボン玉に向け、金色の光を出した。



カタン


「生きているのか?」

金髪の男は、ついに、3人を見つけた。

「しっかりしろ。」

金髪の男は、ジェイソンを担いだが、シャボン玉が揺れだした。


金髪の男は、目を閉じた。


バン


ホール内は爆発し、不思議な白い煙雲がすーっと出てきた。


「あ‥。」


白い煙雲は、ゴホゴホと咳をしながら、白髪の男になったが、すぐに金髪に戻った。

ジェイソン、お父さん、マルコが目を閉じている。


「お父さん‥。」


「見てはダメよ‥。」

太った救護の女性が、アスタの目をふさいだ。


病院の廊下のベンチで、アスタは目を落としていた。

お父さん、ジェイソン、マルコが、布をかけられて、運ばれてくる。


金髪の男が来た。

金髪の男は、方位磁石のような時計を出して言った。

「すまない。君の兄さんを助けられなかった。」


アスタは、涙をふいた。

「お父さんとマルコも、死んだもん。」

「そうか。本当にごめんな。」

金髪の男は、アスタの頭をなでた。


「俺を呪っていい。俺の名前は、キアラン・ジュード。」




「あれ?今のなんの夢?」

「分かんないけど、事件っぽい。」



今日、レリカとワイトは、アスタ・モアサと、フリスビーと昼食の約束をしていた。

「アスタって、今何才?」

「俺は、35才。」

「そうなんだ。若く見える。」


「いくよ!」

3人がフリスビーをして遊んでいると、カラスが飛んできた。


「あっ。」

カラスは、ナロウに変身した。

「ナロウ!」

「久しぶりね。」


「ナロウ。」

「父の最後の事件資料を調べたの。あなたが関わっていたなんて、驚いたわ。キアラン・ジュードは、私の父親よ。」

「そうか、今まで気づかなくて。」

「いいの。あの事件のすぐ後、父は失踪し、今も行方不明。もう30年目になるわ。」


「では、君は、今でも‥。」

「ええ。父と話したことがないの。」

ナロウは、カラスに変身し、行ってしまった。


『キアラン・ジュード?』

双子は、顔を見合わせた。


昼食の席で、双子はモアサに聞いた。

「アスタ、あの事件って何?」

「アムタールムで開かれた万博でのテロ事件のことだ。俺もその場にいたが、ナロウのお父さんが助けてくれた。」


「俺の父さんと、兄さんと、友達は亡くなったけどね。」



「なんか、おかしくないか?」

双子は、ベッドで話した。

「俺たちが夢で見た事件だよな。」


コンコン

「はい。」

「まだ起きているのか?」

プーチが顔を出した。

「うん‥。」


「僕たち、アスタが子供の頃に経験した、事件の一部始終を、夢で見たんです。」

「どういうことだ?つまり、お前たちは、夢で、モアサさんの過去に入ったということか?」

「そう。」

「ふん‥。明日になれば、オイドレンとロドリアムが来る。聞いてみよう。もしかしたら、魔法力が目覚めたのかもしれない。」



ケイテス・リーステインは、30年前のマトリアシル女王だった。

恋人はいるが、結婚はしていない。ケイテスも恋人も、アジア人だ。

マトリアシルとウイストンは、国王・女王同士が取引をして、お互いを攻撃しないようにしてきた。


執事兼恋人のオーリアン・ウェイが聞いた。

「女王様、ウイストンとの契約はどうしますか?」

「どうもしない。契約をしないことにする。」

「では、攻撃された時には、どうするんです。」

「消せばいい。」


ケイテスには、物や人を消す能力があったのだ。


「聞いていいか?」

恋人に戻ったオーリアンが聞いた。

「消したら、その人、どこにいくの?」

「どこか‥その場所ではない遠い所。」

「その能力、怖いよ。」


ケイテスは、透視能力もあった。

ウイストンの透視をし、攻めてくる気配があったら、丸ごと消していた。

うまくいくように思えていたやり方も、だんだんとほころびが出てくる。


いつものようにケイテスが、ウイストンの透視をしている最中、オーリアンが入ってきた。

「ケイテス。アムタールムでテロが起きた。魔法族が関わっている。多分、マトリアシルの者だ。」

「なぜ分かる?マトリアシル以外にも、魔法族は住んでいるのに。」

「とにかく、トライアン警部が連絡をしてきた。死者が出ている。」

ケイテスは振り返った。

死者が出ると、もう消すことは出来ない。


「現場に行きましょう。ビアン、瞬間移動を。」

女黒魔術士のビアンが、ケイテスとオーリアンを瞬間移動させた。


「ケイテス。今回は逃げられないぞ。」

トライアン警部は言った。

「マトリアシルの者かは決まってないわよ。」


ビアンはホール内に入り、事件現場を見ていた。

そこには、マトリアシルの身分証明書が落ちていた。

黄土色の髪の毛の白人男だ。

ビアンは、ケイテスの下に瞬間移動した。


「ケイテス様、これを。」

ケイテスは、蒼白な顔で、身分証明書を確認した。

『ローダン・トーチン』

身分証明書は、黒い煙となって消えた。


ケイテスに、トライアン警部が聞いた。

「どうするんだ!」

「申し訳ない。」


「警部。」

若手検察官が、事件の損害データを見せた。

「死者50人。破壊されたロボット、50億円。」


「ケイテス、軽く1000はいくぞ。100億円だ!」


「払う。」

ケイテスは、かすれた声で言った。


「警部。テロリストの女の死体です。」

キアランが、テロリスト女の生首と体を持ってきた。

「こいつ、どうします?」

「片付けろ!」

「だから、ちょうど女王がいるんで、引き渡したらどうですか?」

警部はうなだれた。


「わかった、ここに入れてくれ。」

オーリアンが、バックを開いた。


「よろしくお願いします。」

「申し訳なかった。」

「いえ、あなたが起こしたわけではない。」



場面が変わった。

霧の中を、キアランが走っている。

後ろから攻撃の光が、キアランに向かって発射され、キアランも振り返って、光を出した。


前にも男が現れた。

「ああ‥。」



双子は、夢の中で目覚めた。

「この後、どうなったと思う?」

窓際に、キアランが立っていた。

「キアランさん?」

「そう、俺の名前はキアラン。ナロウのお父さんだ。ナロウは元気か?」

「はい、元気です。」

「そうか。」


「その後、どうなったんですか?」

「死んで、埋められた。」

「ええ‥。」

「だから、俺は、亡霊なんだ。魔法の言葉で、ヘイリエントという。」

「ヘイリエント?」

「そうだ。君達は、ナロウと知り合いだし、ドーミーアクタティスだから、こうして会いに来た。」

「ドーミーアクタティス?」

「夢の中で、他人の過去や、予知夢を見る能力だ。頼みがある、俺の死体を見つけ、ナロウと、俺の妻であるジュインの下に、連れて行ってほしい。俺が死んでから、もう30年が経ってしまった。」


「よろしくな。」


双子が起きると、窓は開いたままだが、キアランはもういなかった。


「おはよう。朝食できているぞ。」

オイドレンが、部屋をのぞいた。

「うん。」


朝釣りを終えたロドリアムとオイドレンが、テラスでコーヒーを飲んでいる。


「大丈夫か?夢のことは。」

ガウン姿のプーチが聞くと、双子は首を振った。


「夢に出てきたヘイリエントが、僕たちがドーミーアクタティスだって。」


ロドリアムとオイドレンが、振り向いた。


「お前たちがドーミーアクタティス?」

「うん‥。」

「じゃぁ‥予知夢とか、他人の過去の夢を見るわけだ。」


「うん‥。」

双子は、怯えて困ったような感じだ。


「お前たち、それはすごいぞ。ドーミーアクタティスは、1000人に1人しかいないんだ。」



双子は、ボッティの試合を観に来た。

「ボッティ、頑張れー!!」

ボッティは、ボールを持ったまま、立ち往生している。

ついにボッティは、トラベリングをしてしまった。


「ああ‥。」


ボッティは、ブザービートを決めたが、試合はボッティのチームが負け、休憩時間になった。

「ボッティ!」

「先輩、来てくれたんですか?」

ボッティは、ボールを持ち、手を振った。


ボッティの下に、女の子達が集まってきたので、

「はぁ‥。」

双子はうっとりとした感じで座り込んだ。


別チーム同士の試合が始まり、双子は、真剣なまなざしで、試合を観た。


「おい、あれ。」

ワイトがレリカに言った。


ボッティが、年上そうな黒人女性と話しているのだ。

黒人女性は、ビヨンセのような髪型である。


「え‥彼女かな?」


「ボッティ!」

「彼女できたの?」

「違いますよ。チームメイトのブルサル君のお姉さんです。」

「ふ~ん。そうなんだ。」


「先輩って、好きな人いないんですか?」

双子とボッティは、マックに来た。

「いないよ。」

「それにさ、オイドレンが言っていたんだけど、魔法族は、愛し合えば、魔法力が消えてしまうらしいんだ。」

「え‥そうなんですか?」

「うん。」

「でも、先輩達は、猫耳が生えるだけで、魔法力は、まだないんですよね?」


双子は、首を振った。


「僕達たち、ドーミーアクタティスなんだ。」

「ドーミーアクタティス?!なんですか、それ。」

「予知夢や、他人の過去の夢を見る能力。」

「え‥。」


「じゃぁ‥俺の過去も、見ようと思えば‥見られるってことですか?」

「まだそこまでには、なってない。」

「あ~、よかった。」

ボッティは、胸をなでおろした。


「じゃ、俺もなってみたいです。それ。」

「いや、ドーミーアクタティスは、なろうと思って、なれるわけじゃないんだよ。」

「1000人に1人の確立で生まれるものだから。」

「まぁ、俺たちは双子だけど。」



「今日から、最後の夏休みだ。お前たちは、本当はまだ4才だからな、頭が悪くて、大学は無理だ。卒業したら、働いてみろ。」

プーチが言った。

「働く‥?」

「そうだ。」



双子はまた、夢を見た。

霧の中で、男達が、人の死体を運んでいる。


「ハロウ!」

キアランが、声をかけると、若い男と女が、銃を構えた。

キアランは、両手を上げ、言った。

「敵じゃない。メンイー(man eating group)に入りたくて来た。」


民族のようなメイクをほどこした男が、キアランを覗き込んだ。


「嘘じゃない。本当だ。」


「それなら、証明してもらう。」

まともそうな、白人のローダン・トーチンが、言った。


夜、たき火のまわりを囲んだ。

レアに焼かれた人間の目玉を、民族の服を着た男が食べ、民族男は戻しそうにした。


キアランや、メンイーのメンバー達は、それを見た。

民族男は走って、吐きに行った。



場面が変わった。

「キアラン、メンイーに会いに行くって、本当なの?」

「うん、本当だ。」

「ああ、殺されるかもしれないのよ。ナロウが生まれたばかりなのに。」

「ジュイン、すまない。俺の役目なんだ。」


「役目って、何‥!!」

ジュインは、キアランの胸に泣きついた。

「ジュイン‥俺には、アムタールムを守る使命がある。俺は、アムタールムの最高捜査官だ。」


「この子は、きっとニグラムバードだ。ジュイン、君が守ってくれ。」



また場面が変わった。

「食うのか?食わんのか!食わなければ、殺す。」

「いや‥さっきの男が吐きに行ったじゃないか。まだ‥食べるほど、熟成されてない。」


「ふん。」

ローダンは、骨付き肉にかぶりついた。

「その肉はなんだ?」

「これは、鹿肉だ。」

「じゃ、その肉をくれ。」


キアランは、鹿肉を食べながら、聞いた。

「なぜ、人の肉を食べる。」


メンイーのメンバー達は、立ち上がり、銃を一斉に向けた。


「分からないか。では、お前はやはり、スパイだ。」

「違う、念のために聞いただけだ。」

「人の肉を食べるのは、新しい魔力を持つためだ。」

『バケモノ。』

キアランがつぶやくと、メンイーのメンバー達は、大笑いした。


「その通りだ!!俺達は、バケモノになれる。」

メンイーのメンバー達は、人体模型が犬になったような、モンスターに変身した。



また、場面が変わった。

オーリアンがケイテスに言った。

「ケイテス、犯人の件だが‥。」

「犯人は、メンイーのメンバー達よ。」


「私は、女王の座を降りるわ。メンイーのメンバー達を捕まえたいの。」

「うん、分かった。」


その頃、魔術師のビアンは、城の方位磁石の前に立っていた。

この方位磁石は、次のマトリアシル国王を映し出す物である。


手をかざし、見えたのが、メンイーのローダンだった。

ビアンは、恐れおののき、座り込んだ。


ケイテスは、契約書にサインし、次の国王への、戴冠式が行われた。

次の国王は、カラス族のシャマンダー・レイになった。

オーリアンは言った。

「シャマンダーは、予知能力があり、予め決められてある歴史、100年先までを知っている男だ。」


戴冠式で、ビアンがケイテスに耳打ちをした。

「方位磁石が、メンイーのローダンを指しました。」

「そんな!!」


シャマンダーが言った。

「そうです。歴史上、決められていた国王は、ローダン・トーチンなんです。」

「どんな能力がある?」

「彼はマプランダーで、魔法力を奪う能力があります。ケイテス様の消去魔法は、奴には、効果がありません。彼はエフェンザです。」

「エフェンザ。強力な防衛能力の持ち主ってわけね。」


また場面が変わる。

霧の中で、光を出し、キアランは、メンイーのメンバー達を次々と倒したが、ついにバケモノが出てきた。人体犬だ。

キアランは攻撃するが、効果がない。

人体犬は、ローダンに変身した。

「やはり、貴様はスパイだったか。」

「なぜ‥アムタールムを攻撃したのだ‥。」


ローダンは思い出した。

ローダンが愛していた女性ヒタアは人間で、ヒタイアシスという、現在の中東の位置にある国の者だった。

ヒタアは、アムタールムの人間の男と愛し合い、子供を作った。

そしてローダンは、歴史上、決められていたマトリアシル国王だったにも関わらず、精神を狂わせてしまったのだ。

ローダンは、ヒタイアシスでメンイーを作り、メンバーに言った。

「アムタールムを狙う。」と。



「貴様には、関係ない。」

ローダンは言った。

ローダンは、キアランに手をかざし、魔法力を奪った。

「あああっ!」


「俺に‥何をした?」

キアランが目を見開いて、ローダンを見ると、ローダンは喉を抑え、苦しそうにしている。


「ローダン様は、今、お前の魔法力を奪ったのだ。」

民族男が来て、言った。

「死ね!!」

民族男の後ろから来た人体犬が、キアランに噛みついた。


メンイーのメンバー達は、キアランを運び、穴を掘り、土をかけた‥。



双子はそこで目覚めた。


双子は、痛そうに体を押さえながら、キッチンに行った。

「調子はどうだ?今日から、初めてのアルバイトが、始まるぞ。」

オイドレンが、コーヒーを淹れながら聞いた。


「たった5日間の仕事でも、仕事は仕事だ。いいか?工場の物を勝手に盗ったり、食べたりしたら、ダメだからな。」



双子は、パン工場で、流れてくるドーナツに、カラフルチョコレートをかける仕事をすることになった。


「どうだい?大変か?」

「今のところは、大丈夫です。」

「そうか。よかった。」


「来いよ!」

その人が呼んだ。

「え‥。」

「これ、食べてみ。」

「え‥。」

「いいから!」

双子は、チョコレートドーナツを食べた。


「はは、うまいだろ。」

その人は、指をなめた。


「おい!!何をしてる!!」

工場長が叫んだ。


「ヤバい。バレた。」

「勝手に食べるなと言っているだろう!!」


休憩になると、その人が話しかけた。

「おい、昼飯はどうするんだい?」

「あの‥お弁当を持ってきています。」

「そうか。ここのパン、1ドルで食べ放題だから。まぁ、不良品の物だけどな。」


食堂担当のおばちゃんが、不良品パンを積んだワゴンを持ってきた。

「お、始まった。」


「ふぅ~。」

その人が、ドサッとパンを置いた。

「食べる?」

「え‥。」

「いいよ。俺のおごりだから。」


帰り。更衣室で、その人が、ユニフォームを脱ぐと、なんとドロシーさんだった。


「ドロシーさん。」

「さよう。俺の名前は、ドロシー・ハッピー。」

「今まで、気づかなくて。」

「すみません。」

「いいよいいよ。双子にまた会えて嬉しいもん。」


「最近、調子はどうだ?」

帰り道、ドロシーさんが聞いた。

「普通です。」

「普通?君達が?」

「あっ、僕達、ドーミーアクタティスです。」

「ドーミーアクタティス?1000人に1人の能力だろ。」

「はい。僕達は双子ですが。」

「すごいじゃん。で、どんな夢見てんの?」


「ヘイリエントの夢です。その人が、僕達に死体を見つけてほしいって。」


ドロシーさんは、手の平をこすり合わせた。

「ええ、冒険?」

レリカは、首をかしげて言った。

「冒険ってまででは、ないんですけどぉ。」


「ちょっと待って。」

ドロシーさんは、双子のおでこを触り、目をつぶった。


「うわぁぁ。」


「これは冒険だよ!それに、この場所は、ヒタイアシスだ。」

「えっ、場所を知っているんですか?」

「うん。今度行くか?」

「はい!!」


「じゃぁ‥、日曜日。」

「お願いします!!」

「よし、決まりだな。魔術士が必要だ。瞬間移動するからな。知り合いを呼んでおく。」


「じゃあ、また明日な。」

「はい!」

「ありがとうございました!」


「あ、俺は、ハンドミラーだから。」

「ハンドミラー?」

「手の平で、相手に触れると、考えていることが分かる能力。」

「すごい‥。」


「バイバーイ。」

ドロシーさんは、手を振って行ってしまった。




「おい、ロド。すごいな。」

プーチの家に立ち寄り、釣り道具を手入れしているロドリアムに、オイドレンが声をかけた。

オイドレンは、木の小屋を持っているが、双子の父親として、プーチの家に、毎日のように出入りしている。


「何?」

「マイケル・ドーワッツが開発した、魔法アプリだよ。名前を検索すると、その人が新聞や雑誌に載った時の記事が、全て読めるんだ。」


『ロドリアム・ホッチナ。類我なる防衛能力で、トラから老人を救う。』


「エフェンザだったのか?」

「うん。でも、もう、大昔の話だ。魔法は、出来れば使いたくない。」

「ふん。もったいない。」


ロドリアムは悲しげな目をした。

本当は、マリー・ターオンという人間と愛し合い、魔法力を失くした過去があるのだ。

でも、今では、少し戻ってきている。


「ただいま。」

双子が、落ち込んだ感じで、家に帰ってきた。

夢を見るのが、怖いのだ。


「おかえり。どうだった?」

「仕事は‥大丈夫でした。」

「そうか。」


双子は、椅子に座り、お茶を飲んだ。

「これを見ろ。」

オイドレンは、ロドリアムの記事を見せた。


「すごいだろう?ロドリアム伯父さんは、防衛能力を持っているんだ。」

「何?これ?」

「マイケル・ドーワッツが開発した、魔法アプリだよ。」

「マイケル・ドーワッツ‥?」

「僕達の夢に出てきた人。」

「そうなのか?」

「うん。」


ロドリアムが来て、マイケル・ドーワッツを検索した。

いろいろな記事が出てくる。


『アムタールムのテロ』

「僕たちが見ている夢は、これです。」


「なぜ、こんな夢を?」

「ヘイリエントが‥僕たちに、自分の死体を見つけてほしいって。」

「それで‥探しに行くつもりなのか?」

双子はうなずいた。

「ヘイリエントは、ナロウのお父さん。テロを起こした犯人である、メンイーに殺されたんです。」


「ただいま。」

プーチは、町内の役員会議から帰ってきた。

プーチは以前、ハーミングハーミング町の町役場で働いていたのだ。


「川の掃除の件だが、ポシアンナ婦人無しで、行うことになった。婦人は、川の一部を、自分の土地だと主張している。」

プーチは言った。


「お前たち、初めての仕事はどうだった?」


「普通でした。」「よかったです。」


「そうか。普通でよかったは、良い仕事だということだ。」

「はい。」


「ところで、何を見てる?」

「マイケル・ドーワッツの記事だよ。この子たちが、夢で見てる。」

「なんの夢だ。」

「アムタールムでのテロ事件。ナロウの父親が、巻き込まれ死んだ。その死体を探しに行かないといけない。」


プーチは顔をしかめ、キッチンに入り、コーヒーの準備をしだした。

「プーチ。」


「ダメだ。行かせない。」

「でも、行かないと、この子達は、ずっと夢を見ることになる。」


プーチは深いため息をついた。

「なんでこの子達が、やらなきゃならんのだ。」

「仕方ない。1000人に2人の、ドーミーアクタティスだ。」



双子は、また、夢を見た。

マイケル・ドーワッツは、テロが起こると、ロボットの中に隠れた。

他の者も呼んだが、見えなかったし、返事がなかったので、とりあえず、自分だけ入った。

そのロボットには、魔法の仕掛けがあり、自分の自宅に行けるようになっていたのだ。

その後のテレビニュースで、レーターとジェイソン、マルコが亡くなったと知り、とても悲しんだ。


ケイテス、ビアン、オーリアンは、メンイーの所に行った。

「待ちなさい。」

ケイテスは、ローダンと民族男に向かって行った。

「女王陛下。」


「あなた達のこと、許さないわ。」

ケイテスは、杖から、強力な消去魔法を出した。

ローダンも、防衛魔法を出した。

民族男も、指の先から、何か出している。


「ああああ!!」

ローダンは、ケイテスとオーリアンを倒した。

ビアンは、消えた。魔法を除けるためだ。

ケイテスとオーリアンは、魔法力を奪われてしまった。

ビアンはまた戻り、2人を連れて帰った。


「ケイテス様。」

起きると、ビアンが覗き込んでいた。

オーリアンは、隣で寝ている。


ケイテスは、自分の手を見た。

「もう、ただの人間だわ‥。」

「申し訳ありません‥。」

ビアンは、膝をつき、うなだれた。



それでも、ケイテスとオーリアンは、ウイストンのジュジュアンリ村に引っ越し、愛し合い、子供を作った。

女王時代の富で、エフェンザの庭師を雇い、結界の庭を作った。



元マトリアシル女王の魔力を奪ったローダンは、洞穴で、苦しんだ。

30年の間に、民族男は死に、メンイーの女と、人体犬の子供までできてしまっていた。

普段は、人間として、ヒタイアシスのアテア町の工場で働き、隙を見て、人間を誘拐し、食った。



「そこに、おかけください。」

オイドレンとロドリアムは、マイケル・ドーワッツの家に来ていた。

マイケル・ドーワッツは、イギリスに住んでいる。

魔法の黒馬車で飛んできたのだ。


「息子さん達が、あのテロ事件の夢を見ると?」

「はい。息子達は、ドーミーアクタティスなんです。」

「そうでしたか。」

マイケル・ドーワッツは、お茶をいれた。


「お茶をどうぞ。」

「ありがとうございます。」


「私は人間です。ロボットには、知り合いの魔法使いに、自宅に通じる、魔法をかけてもらってありました。・・私はあの時、自分だけ逃げ、まわりを助けることが出来なかった。」


「あの事件以来、長い間、辛い日々を過ごしました。そんな私を救ってくれたのが、マギブの存在です。」

「マギブ?人間に、魔法力を与える能力の持ち主のことですか?」

「はい。」

「そんな。マギブはマトリアシルの建国時以来、存在していない。」


「いえ、存在していました。その方は、マプランダーとして、知られていた方です。」


「そんな、まさか!!」


「ええ。私を救ってくれたのは、ローダン・トーチン。」


オイドレンとロドリアムは、急いで立ち上がった。


「なーんて、冗談ですよ。」

マイケル・ドーワッツは、笑った。

オイドレンとロドリアムは、少し固まってしまった。


「3年もの間、毎日泣いていたので、目が見えなくなってしまったんです。それを、治してくれたのは、ローダン・トーチンでした。そして、ほんの少しの魔力をくれました。」


「彼はテロリストですが、マトリアシルの決められていた王です。彼が起こした、アムタールムのテロの悲しみにくれる私を、憐れんでいました。」

マイケル・ドーワッツは、立ってカップを持ち、窓の外を眺め、お茶を飲んだ。



「すごい‥。」

「ここが、ケイテス様とオーリアン様が住む家。」

エフェンザの庭で守られた邸宅に、ドロシーさんと双子、モアサは来ていた。


4人は、邸宅のまわりを歩き回った。

「ドロシーさんの知り合いの黒魔術士って、モアサのことだったんだね。」

「ああ。俺の無罪を信じてくれたのは、アスタさんだけだったんだ。‥ハンドミラーは、手の平で相手に触れれば、自分の想いを伝えることができる。俺はみんなに見せたけど、信じてくれたのは、アスタさんただ1人。」


アスタはにっこりした。


1人の女性が、植物に水をあげている。


「あっ‥。」


「あら。あなた達は?」



ケイテスは、赤っぽいお茶を淹れながら、言った。

「遠いのに、よく。」

「いえ‥。」

「自分、ニグラムバードなので、瞬間移動が出来るんです。」

「そうでしたか。お父様とお兄様は、成長したあなたの姿を見ることが出来ず、さぞかし悲しんでいることでしょう‥。」


モアサはうつむいた。

「私の能力がもう少し高ければ、テロを未然に防ぐことが出来たかもしれないのに。」

「あの、ケイテス様のせいではありません。」

ケイテスは首をふった。


「お母様?」

1人の女の子が部屋をのぞいた。

「あら、どうしたの?」


「お父様達が戻ってきました。」


モアサ、双子、ドロシーさんが窓の外を見ると、黒い車が到着し、中から、オーリアンと息子達、ビアン夫妻が降りてきた。


「ちょうど今日、友人のビアン夫妻と家で食事をする約束になっていたの。よければ、あなた達もどうかしら?」



「アイズ、トラン。お客様が4人増えましたからね。」

「大丈夫、多めに作ってあるから。」

長男のアイズと次男のトランは、料理をしながら、答えた。

「こんにちは。ゆっくりしていってください。」

トランも言った。


「ビアン、久しぶりだわ。」

「ええ、ちょうど1年ぶりです。」

ケイテスとビアンは、ハグをした。


みんな、席についた。

「こちらは、ニグラムバードで、アムタールムのテロ事件の被害者のアスタ・モアサさんです。お父様とお兄様とお友達を亡くされました。」

「まあ、なんてこと‥。」


「それで、あなた達は?」

ケイテスは、双子を見た。もう気づいているような感じだ。


「あの‥僕たちは‥。」


「この子たちは、ドーミーアクタティスで、アムタールムのテロ事件の夢を見ているんです。それで、キアラン・ジュードさんから、彼の遺体を探すように頼まれたんですよ。」

ドロシーさんが言った。


「そんな!!」

ビアンは口を抑えた。


「キアランは、もうすでに亡くなっていると?」

オーリアンが聞いた。


「はい。30年前に亡くなっているそうです。」

「そうだったなんて‥。どこかで生きていると信じていた。」


ビアンは泣きだした。


「もう30年前の話よ。仕方ないわ。」

ケイテスが言った。


「それで、あなた達は、探しに行くのね?」

「はい。」


「では私も一緒に‥。」

ビアンが、涙をこらえながら言った。


「ダメよ!!」

ケイテスが大きな声を出したので、みんな、ケイテスを見た。


「あなたがいなくなったら、私の気がおかしくなってしまう。」

ケイテスは言い、みんなうなだれた。


「大丈夫です。僕達が、キアランさんの亡骸を必ず連れて帰ります。」

ドロシーさんが言い、みんな、ドロシーさんを見た。


「そう。では、何かあった時、これを使いなさい。」

ケイテスは、手鏡をくれた。

「ハンドミラー?僕も、実は、ハンドミラーなんです。」

「そう。でもこれはね、ヘイリエントを映す手鏡なの。」


「ヘイリエントを?」

ワイトが聞いた。

「ええ。ヘイリエントは、自分から姿を見せてくれないと、姿が見えないわ。ヘイリエントは、魂だけど、亡霊だから、人ほどは、感情を持っていないの。」


「そうなんですか?」


「たまに‥、この鏡で、見ていたの。キアランの亡霊をね。」



「この鏡が、ヘイリエントを映すのか?」

家で、オイドレンが聞いた。

「うん。」


「どれ。」

プーチが、手鏡を持つと、青白い光が現れた。


「わぁっ!」


まるで、プロジェクターのように、プーチの母親のヘイリエントが現れた。

「母さん!」

「プーチ、久しぶりね。」

「ヒヨンさん!」

「オイドレン。立派になって。私の孫たちも。」

ヒヨンは、双子を見た。


「まだ生まれ変わってないんですか?」

プーチが聞いた。

「ええ。私はまだ、ふらふらとしているの。」

「そうだったんですか。じゃあ、いつもここに?」

「たまによ。大体は、父さんの所に行っているから。」

「父さんが、この世にいると?」

「ええ。これ以上は言えないけどね。」

ヒヨンは、後ろを向いた。

「もう行ってしまうんですか?」

「ええ。私はヘイリエントよ。あまり、深く関わらない方がいいわ。」

ヒヨンは行ってしまった。


「今のおばあちゃん?!」

双子は、手を取り合って喜んだ。


「ロドリアム!!今、ヒヨンのヘイリエントが来たんだぞ!!」

オイドレンが、外で、釣り道具の手入れをする、ロドリアムに声をかけた。


ロドリアムは浮かない顔をしている。


「興味がないの?」

レリカが、覗き込んだ。


「はぁ‥。」

ロドリアムは立ち上がった。


「ほら。この魔法の手鏡を見てみろ。お前にも、何か見えるかもしれない。」

オイドレンが、ロドリアムに手鏡を渡すと、青白い光が現れた。


細身の女性だ。

その人とロドリアムは、見つめ合った。

「マリー。」

ロドリアムが言うと、その人は、悲しげに見てから、行ってしまった。


「今の、誰じゃ?」

プーチが聞いた。

「昔の知り合いだ。」

「知り合い?」


「ああ~!分かったぞ。今の人は、ロドリアムが昔、付き合っていたマリー・ターオンだな?5年前に、癌で死んだ。」

「そうだ。」

オイドレンが言うと、ロドリアムは悲しげに答えた。


「そうだったの?」

「恋人がいたの?」

「うん‥。」

双子が聞くと、ロドリアムは涙をぬぐった。


「もう、昔の話なんだろう?いいかげん、忘れろよ。」

プーチは言った。


「プーチ。そんな簡単な話じゃないんだ。ロドリアムは、マリーと付き合って、魔法力を失くした過去があるんだ。」

「オイドレン、僕が魔法力を失くしたことを、知っていたのか?」

「ああ。ロドがエフェンザだと知ってから、考えたんだ。エフェンザなのに、なぜ、魔法を使おうとしないのか。エフェンザだったら、レストランで働かなくても、能力を使えば、その10倍のメシが食える。‥ロドは、魔法が使えなかったんだな?」


「そうだ。人間だったマリーと愛し合い、僕は魔法力を失ったんだ。」

ロドリアムは、過去を思い出した。



自然の中を、手をつないで走ったこと。

田舎のうどん屋で食事をしたこと。

ニューヨークの夜景が見えるバーで、お酒を飲み、横並びの机の下で、手をつないだこと。


ロドリアムは、手の平を見た。


「そう切なくなるな。こっちまで、悲しくなる。」

オイドレンが言った。


「それで、いつ行くつもりだ?」

「明後日だ。」

「わしは行かないぞ。本当は、お前達にも、行ってほしくない。」

「仕方ない、爺さん。マトリアシルに住んでいて、冒険をしない方が無理だ。」

「ああ、そうだな。でも、行く場所が違う。お前達が行く所は、ヒタイアシスだろう?」

「30年前の、アムタールムでのテロ事件の犯人を捜しにね。」

ロドリアムが言った。


「違うよ!僕たちは、キアランの亡骸を探しに行くんだ!」

「そうだよ!犯人を捕まえたいだなんて、思ってない!」


「そうか。でも、危険な冒険だからな。俺とロドリアムも行くから。」

オイドレンが言うと、双子はうなずいた。



「よーし。遠足の準備はいいかー?」

出発の朝。ボーイスカウトのような格好をした、ドロシーさんが聞いた。

「遠足?そんな甘い考えなら、俺は行かないよ。」

「あー、何言ってるの?モアサがいなければ、俺達は、どこにも行かれないんだから。」

ドロシーさんが、モアサに抱きついた。


「とにかく。ローダン・トーチンは、危険な男だ。エフェンザで、マプランダーで、マギブなんだ。」

「マギブ?」

「何、それ?」

双子が聞いた。


「言ってなかったな。マギブは、魔法力を人間に与えられる能力を持つ者のことだ。歴史上には、マトリアシル建国時に1人しかいなかった。」

オイドレンが言った。


「ね、この場所。いい?」

ドロシーさんが、モアサの額に手を当てた。

「うん。しかし、地名まで分からないと‥。」


「僕に見せてくれ。」

ロドリアムが言った。

「ああ‥、この場所は‥、シアラスタンだ。シアラスタンの郊外の森、リリモスに違いない。」

「詳しいの?」

ワイトが聞いた。

「マリーは、ヒタイアシス出身だったんだ。」

ロドリアムが言ったので、双子はうつむいた。


「とにかく行こう。」

オイドレンが言った。


「全員、この円の中に入ってくれ。」

モアサが念力で描いた黒い円の中に、みんな入った。


気づくと、霧の中に来ていた。

ロドリアムが、アイウォッチで確認した。

「ちゃんと、モモリスに来た。」

「俺の瞬間移動は正確だ。しかし、今回の瞬間移動は、規定違反になる。外国に行く時は、事前の届け出が必要だからな。」

「え‥そうだったの?モアサは、警察なのに、大丈夫?」

「まぁ‥捜査もかねているからな。多めに見てもらえるだろう。しかし、通常は、1時間1万ドルの罰金がかかる。」

「1万ドル?!そんなにかかるのか?」

「ああ。でも、大丈夫。ちゃんと、キアランさんの亡骸を持ち帰ればな。そして、ローダンを捕まえればな。」


みんな、歩きだした。


「なんだ、これ?」

ロドリアムが、赤い物を拾った。

「犬の首輪みたいですね。」

ドロシーさんが、言った。


みんな、不安げに、まわりを見渡した。


「こんにちは、みなさん。」

女が来た。人体犬を連れている。


「メリロス‥!!」

オイドレンが言った。

「あら、懐かしい。こんな所で、昔の恋人に会うなんてね。どうしてあなたがここに?」

「それは、こっちのセリフだぞ!!俺は、30年前のアムタールムのテロ事件の犯人を捕まえに来たんだ!」

「あら、ローダンを?ローダンは、私の旦那よ。ね、テイル。」


クゥン‥

人体犬が、メリロスを見て鳴いた。

「この子は、私の息子なの。」

「人体犬が子供なんて‥!!」

ドロシーさんが、金切り声を出した。


モアサは、呆然とメリロスを見ながら、手の中で、紫色の光を作りだしていた。


ワンワン!

「モアサ。」

レリカが振り向いた瞬間、モアサは、メリロスの後ろに移動し、手の平から、紫色の光を出して攻撃した。


「ふんっ!」

メリロスも振り返り、杖で応戦した。


オイドレンとドロシーさんも杖を出し、メリロスに向けた時、ロドリアムが言った。

「ダメだ。危険すぎる。」


気づくと、テイルは人体犬から人間に変身し、オイドレン達はメンイー達に囲まれてしまっていた。


「じゃ、どうする?」

「分からない。」


「シャアアア!!」

テイルは、人体犬にも関わらず、猫人間になって、牙を向いた。


「おい、お前達、ああいうこと出来ないのか?」

「無理。」

「あいつと一緒なんて、怖いよおおお!!!」

双子も猫耳が生えてきたが、この状況にかなりビビってしまっていた。


「何をごちゃごちゃ言っている。」

「メリロス。こっちは子供連れだ、手加減してくれ。」

「無理よ。ローダン様を守るのが、私の使命。」


「ローダン様って‥?」「旦那さんでしょ?」

双子がオイドレンを見た。

「あいつは頭がおかしいんだ。」


「ちょっと、待て。」

ロドリアムがドロシーさんを止めた。

ドロシーさんは、手の中で光を作っていたのだ。


「今は止めろ。」

「止めない‥。」


「どうした?かかってこないのか?」

メリロスがオイドレンに聞いた。

オイドレンは、うなだれている。


「ビビったらぁ‥。」

ドロシーさんは、光に包まれた。

「やめろと言っているだろ。」


「敵がビビったら、手加減してやれぇ!!!」

ドロシーは、宙に浮かび上がった。


「ドロシー・ビームッ!」

ドロシーさんは、閃光を放った。


「シャアアア!!」

テイルが宙に浮かび上がり、肘で光線を受けた。

「テイル、やっておしまい。」

2人の決闘が始まったかと思うと、みんな、決闘を始めた。


ちなみに、訓練を積めば、魔法族は15メートルくらいまでは、浮かび上がることが出来る。


「あ゛ああああああ!」

テイルが、空中から、双子に飛び掛かった時、ププーッ!!ジープが来た。

白い服を着た人達が乗っている。


白い服の人達が、白い球のような物を出して、メンイーを追い払ってくれた。


「大丈夫ですか?」

白い服の男が、フードを取った。黄土色の髪の、ハンサムな男だ。


「ええ‥。あなた達は?」

「ヒタイアシスに住む、魔法族グループ、セフィドウです。僕はリーダーのキダン・ナーリン。」

「そうでしたか。助けてくれて、ありがとうございます。」

日差しが強い。ロドリアムとドロシーさんは、目を細めて、キダンを見た。

6人は、セフィドウのジープに乗り、アテアに向かった。


キダンと6人は、暖炉がある部屋のソファーで向き合った。

「そうでしたか。ドーミーアクタティスである君達が、亡くなった捜査官から、亡骸を見つけるように頼まれたと。」

「はい。それと、ローダン・トーチンのことを倒したくて‥。」


「ローダンのことを?ヤツは危険な男です。」


黒髪の女性2名が来て、お茶を淹れてくれた。


「憎しみの心から、人を食べているのです。」

キダンは言った。


「ローダン・トーチンのことを、何か知っているのですか?なぜ、アムタールムでテロを起こし、メンイーを作ったのか。僕の家族は、アムタールムで、殺されたんです。」

「そうでしたか。ローダンには、昔、人間の恋人がいたと聞いています。その女性は、ヒタイアシス出身でしたが、ローダン以外の男の、子供を身ごもり、結局、子供を産んで死んだそうです。相手の男が、アムタールム出身だったそうで‥。」

「そうだったんですか‥。」


「ええ。ローダンは愚かな男だ。優れた能力をいくつも持ち、世界一の国であるマトリアシルの王と、歴史上、決められた男だったのに。」


双子は、夢で見たことだったので、うつむいた。


ロドリアムは切ない顔で、ヘリエンツミラーを取り出した。

「それは‥、ヘイリエンツミラー。‥とても貴重な物だ。」

「30年前のマトリアシル女王、ケイテス様にもらいました。」

ロドリアムは、ヘイリエンツミラーを、キダンに渡した。

「そうか。」


青白い光が出て、なんと、そこには、ローダン・トーチンのヘイリエントが現れた。

「ローダンッ!!」


「ローダン。そこにいたのか?」

ローダンは、キダンを睨み、行ってしまった。


「今のは何だ?」


キダンはうつむいた。

「すみません。ローダンは、人間ではありません。僕の生霊です。」


「そんな!!じゃあ、あなたが、本物のローダン・トーチン?」

「ええ。恋人を盗られたことに恨みを募らせた結果、生霊を生んでしまいました。生霊がテロを起こしてから、名前と姿を変え、僕はずっと隠れていた。」


「ああ‥。」

モアサは、膝をついた。


「すみません。僕の生霊が、あなたの家族の命を奪いました。」

キダンが、モアサの肩に触れると、モアサは泣き崩れた。

「兄さんだったなんて‥!!」

ジェイソンが、女性の腰を持つ亡霊が現れた。


「あなたはハンドミラー?それも、かなり強い。」

「ええ。私は、マギブであり、マプランダー。そして、エフェンザであり、ハンドミラーなのです。」


「だけど、どうして若い?」

「僕は、エテルです。」

「エテル?」


「永遠の命‥!!」

ロドリアムは、目を見開いて、キダンを見た。

「そうだったんですか?!」

「ええ、でも、そうとはまだ、分かりませんよ。」


「明日、僕がローダンを倒しに行きます。」

キダンは言った。


「俺達も、行きますよ。」

オイドレンが言い、みんな力強くうなずいた。


「でも、危険だから。僕の生霊が、何をしでかすか分からないんです。」

「大丈夫。冒険に危険は、付き物ですから。」

オイドレンは、言った。


夜、オイドレンとモアサとロドリアム、双子とドロシーさんで寝た。

双子は、怖くて眠れなかった。

ロドリアムは、天井を見つめ、マリーのヘイリエントを浮かべていた。

モアサは、横になり、涙をぬぐっていた。



ガタンガタン。

「聞いていいですか?」

ドロシーさんが、口を開いた。

「ええ。どうぞ。」

「キダンという名前は、もしかして、キアランから?」

「はい、そうです。」

「やっぱり、そうだったんですね。」


モアサは、そっぽを向いて、景色を見た。

キダンと6人は、ジープでモモリスの森まで来た。


「準備はいいか?」

「はい。」

ドロシーさんは、相変わらずボーイスカウトの格好で、白い水筒を肩から下げている。


「行こう。」

キダンは、杖を持ち、歩きだした。

モアサは、紫の服を着ている。力のない目をしていた。


オイドレンが、ロドリアムに聞いた。

「ところで、ヒタイアシスに来て、何時間になる?」

「もうすぐ24時間だ。」

「おい、一体、いくらの罰金だ。そんな金、払えないぞ。」

オイドレンは、ぶつぶつと言いながら、指で計算を始めた。

双子とドロシーさんは、キダンと一緒に、少し先を歩いている。


ロドリアムは、モアサに聞いた。

「その紫色の服、さっきから着てた?」

ジープに乗っている時は、黒の服を着ていたからだ。

モアサは、黙っている。


「まさか、魔法で着替えたのか?」

モアサは答えない。

「取り寄せの魔法を?国境を超えても、それが使えるのなら、君の魔法力はかなりすごい。」


「ロドリアム、罰金は、140万ドルになる。」

オイドレンが話しかけた。

「オイドレン、モアサが国境を超えて、取り寄せの魔法を使ったんだ。」

「そうか。じゃ、それでバレたな。我々がここにいることは。あー、もうおしまいだ!」

「兄の服だ。」

「ああ?なんか、言ったか!」

「だからこれは、俺の兄さんの服だ。」

「バカタレ、そんなもの、どうだっていい。」


ロドリアムが、オイドレンを小突いた。

「仕方ない。彼の兄さんを殺した生霊を、退治しに行くんだから。」


茂みから、黄色の目がのぞいていた。


キダンが言った。

「みんな止まって。敵が来た。」

「敵が来ただと?キダンさん、エフェンザの力で止めてください。」

オイドレンは、機嫌が悪い。


「しー、ここでエフェンザの力が使えないんだ。僕の魔力が使えない。」

「えええ!」

「じゃあ、なんでついてきた!!」


オイドレンとキダンが言い争っている時、双子は、自分たちが野生に戻るのを感じていた。


キーン‥

「どうした?」

ドロシーさんが聞いた。

「なんでも。」


三日月が出ている。

双子は、自分の中で、目が赤色になるのを感じたが、ドロシーさんには見えなかった。


「敵は、まだか?」

モアサが、ようやく口を開いた。

「すまない。まだ、来ないようだ。」

キダンが答えた。

「モアサさん、お兄さんのことは、本当に悪いと思っている。殺したければ、この場で、僕を殺してくれ。」

「いや、あなたのせいじゃない。」

「僕のせいなんだ。僕の心が未熟だったせいだ。」

「もう気にしてない。」


「はぁ‥これこそが、感動だな。ところでロドリアム、何を祈ってる?」


「まさか、エフェンザの力を呼び戻すために、マリーに祈っているのか?無理だ。ここじゃ、ローダンの力が強すぎて、魔力が使えない。‥魔法は使えるがな。杖があるから。」


「止まって。」

キダンが6人を止めた。

ガルルル


「ああ、ついに敵が現れた。」

ドロシーさんが言った。


「あ、そうだ。セフィドウを呼んでくださいよ。」

モアサが、キダンに言った。


「でも‥。」

キダンはうつむいた。

「どうした、呼ばないのか?」

「彼らに危険を及ぼしたくない。」

「ふん、結局、自分の仲間が一番ってわけだな。」


「よし、警察を呼ぼう。」

ロドリアムがスマホを出した。

「ああ、その案は、俺も最初は考えた。しかし、俺は冒険家だし、モアサは恋人のために、闘っている。」

オイドレンが言うと、ロドリアムは固まった。

ロドリアムは、ナロウのことを、好きになりそうだったのだ。


「それに、ここ、スマホは使えないぞ。俺のは、壊れてしまった。」


三日月は、満月になった。

「月が満月になってる。」

ドロシーさんが言った。


キダンは、人体犬が隠れる茂みに、杖を向け、かすかなに使えるエフェンザの力で止めていた。


キダンは、バックから、水の球が入った大きめの試験瓶のようなものをとりだした。


キダンが揺らすと、それは、ヒーリングのようなボーンという音と共に、水の泡も動き出した。

「それは何ですか?」

「敵の変身を解くためのヒーリングベースです。僕達の魔法でも解けるけど、これの方が安全だから。」


クゥゥン‥

人体犬は、ぐったりとしている。


キダンは続けるが、大きな人体犬が、首を横にふり、うなった。


「ダメか。」

キダンは言い、モアサはマントをひるがえし、黒い杖を向けた。


「危険です、モアサさん。」

「これでも、俺は、ニグラムバードなんです。」

人体犬は、向かってきた。

モアサは、黒い翼で飛んだ。


そして、大きな人体犬と、空中で位置交換した。

人体犬達は、びっくりして、吠えた。


「モアサ!」


大きな人体犬は、落ちていく。

しかし、途中で、ゆっくりになった。


メリロスが、不敵な笑みをうかべて、雲に乗っていた。

「魔女だ!!」


「ニグラムバード?珍しい生き物だわ。」


「そうか?もう、4匹も見たことがあるが‥。」

オイドレンは、首をひねった。


「ニグラムバードの能力が、この地で使えるのなら、用心するよう、ローダンに伝えるわ。」


キダンは、オカリナによく似た魔法の笛を取り出し、吹こうとした。


すると、法螺貝の音がなった。


「あら、ローダンが呼んでいるわ。」


「洞窟の前で、また会いましょう。」


人体犬の一匹が、槍を持った黒魔術師に変身し、瞬間移動した。


「行ってくれた‥。」

ドロシーさんは、胸をなでおろした。


「引き返そうよ!」

「ドロシー。ここまで来たんだ、行こうじゃないか。考えてみれば、俺は、こんなに危険な冒険をしたのは、初めてだ。」

オイドレンが言った。


「その笛は何ですか?」

「セフィドウを呼ぶ笛だよ。でも、セフィドウは、ヒタイアシスの守護隊のような物だ。彼らにもしものことがあったら、ヒタイアシスを守れなくなる。」


ザッ

後ろに、まだ残っていた、メンイーの黒人が現れた。


「シャアアア!!」

目を真っ赤にした双子が、その男に牙を向いた。


「え?」


男は槍を向け、双子と向き合った。


「え?戦う?君たちが?」

「おい、お前達、目を覚ませ。」

「ダメだ!」


「相手にするな。」

モアサが、強い魔法で黒円を描き、キダンと6人で、洞窟の近くまで瞬間移動をした。




「ローダン様。戦いが始まります、楽しみですね。」

メリロスが言った。メンイー達は、洞窟の前で、整列している。


「あいつが‥来たのか?」

「ええ、来ています。さっさと殺しましょう。」

「他にも‥魔法族がいるな?」

「ええ、でも、弱そうな者ばかりですわ。ただ、一匹だけ、黒いニグラムバードがいます。用心ください。」


「そうか‥。」

巨大な人体犬が、洞窟から出てきた。



「あれが、ローダン。」

ドロシーさんは、茂みから覗き、息を飲んだ。

オイドレンは、双子の頬を叩き、言った。

「目を覚ませ!!お前達はまだ5才だ。いいか?ここで、ドロシーと隠れていろ。」

「ええ?僕も一緒に戦いたいよ。」

ドロシーが言うと、オイドレンが言った。

「ダメだ。この子達は、戦い方を知らない。ここで一緒にいてくれ。」

「うう~‥まあ、この子達の命のためなら。」


双子は呆然としている。


「ありがとう。」


モアサとキダンは、岩の隙間から、メンイーを観察した。


「戦い方?オイドレン、君は知ってるの?」

ロドリアムが聞いた。

「ああ、知っているとも。巨大なウミヘビを倒したこともある。」

「そう。」

「20年前だがな。今よりも、仲間が15人ほど多かった。」

オイドレンは言い、ロドリアムは黙った。


追ってきた先ほどのメンイーの黒人が、7人に気づいて、声をあげた。


「ウイイイイイイ!!!」


「バレた。」

キダンとモアサは、飛び出した。


「じゃ、頼むな。」

オイドレンとロドリアムも飛び出し、決闘が始まった。


「おのれ!!ローダン。勝負だ。」

キダンは、丈夫そうな大きな杖を取り出した。

「弱輩‥。すぐに殺してやる。」


「分からないか?僕が死ねば、お前も死ぬ。」

「俺は、死なぬ。」

ローダンは手をかざし、ロドリアムから、ヘイリエンツミラーを盗った。


ローダンは、爪が長く伸びた手の上に、ミラーを置いた。


「え?」

なんと、ローダンのヘイリエントは、キダンにかぶさっていた。


「どういうことだ?」

「確かに俺は、お前から作られた。しかし今は、別の体を与えられ、別の魂を持っている。」

ローダンは、民族男の体に乗り移っていたのだ。

「ありがたいことに、魔力はお前のままだ。いや、もっと強い。」

ローダンは、エフェンザの力で、大地を揺らした。


「ゴホゴホ‥。なぜ、ローダンは、マプランダーの力を使わないんだ?」

「マギブや、マプランダーの力を使うと、体力が消耗するんだ。」

オイドレンは黙り、ロドリアムはオイドレンを見た。


「考えてみた。ローダンに、キダンの力を、奪わせれば‥。」

「何を言っている?」

「ローダンを倒すには、そうするしかない。」


メンイーが、また2人に襲いかかった。

戦いながら、オイドレンが言った。

「俺は反対だぞ。」


オイドレンとロドリアムは、大きな杖を振り回して、メンイーと戦った。


双子は我に戻り、ドロシーさんと一緒に、黒人の黒魔術師と戦っていた。

双子は逃げ、ドロシーさんが、小さな爆発を起こしたので、黒魔術師は気絶した。

黒魔術師の髪の毛は、少し、ちりちりになっている。

「よかった。」

安心したのもつかのま、黒人は、また起き上がった。


「ロドリアム、止めろ。」

オイドレンは言った。

モアサも、メンイーと戦いながら、ロドリアムを見た。


しかし、ロドリアムは、15メートル移動をした。

訓練を積んだ魔法族は、15メートルくらいなら、宙に浮ける。

その力を使って、ふわりと移動するのだ。


「いつの間に、そんな魔法力を?」

『MAGIVE』

ロドリアムは、文字浮かせ魔法を使った。


「まさか、マギブの場所だから、魔法力が戻ったのか?」


「アシスト!」

ロドリアムは、ローダンに、アシスト魔法をかけた。

「アシスト!マプランダー、キダン!」


ローダンは、キダンに言った。

「お前の魔法力を奪う。」


モアサは、位置交換を使い、キダンの場所に行ったが、失敗した。

キダンが、かすかに使えるエフェンザの力を出していたので、位置交換が出来なかったのだ。


「あああ!」

モアサとキダンは、魔法力を奪われてしまった。


大地は揺れた。


ロドリアムは、また言った。

「アシスト!マプランダー、メンイー!」


「うう‥。」

メンイー達は、力を奪われた。


ローダンは、弱くなっている。

全て、ロドリアムの言う通りだ。


「アシスト!マギブ!キダン、モアサ!」


キダンとモアサに、力が戻った。


「そこまでだ、ロドリアム!!」

オイドレンが言った。

オイドレンが、まさか、ロドリアムが自分自身に、マギブの魔法をかけるのかと思ったのだ。

ロドリアムは、首を振った。


「アシスト!マプランダー!ローダン・トーチン。」

「ああああああああ!」


ローダン・トーチンは、自分自身に、マプランダーの魔法をかけ、倒れた。


「ブロック。メンイー。」

ロドリアムは、杖を、体の前で持ち、言った。

メンイー達は、金縛り状態となった。



「ジ・エンド。」

ロドリアムは、言った。

「本当にそうか?怪しいぞ、これ。」

「大丈夫。僕の魔法は完璧だ。」

「完璧すぎて、怖い。今までのロドリアムは、どこに行ったんだ?」

オイドレンとロドリアムは、ぶつぶつと話している。

「ほら、これを見ろ。」

オイドレンは、ヘイリエンツミラーを拾い、かざすと、マリーのヘイリエントが現れた。

「マリー!」

ロドリアムは、マリーを追いかけた。



キダンとモアサは立ち上がり、キダンは、オカリナのような笛を吹いた。

ピュゥー。

ピュゥー‥。


「セフィドウが、じきに来ます。」

キダンがモアサに言った瞬間、セフィドウのメンバー達が、黒魔術師の瞬間移動で、来た。

双子とドロシーさんも、洞窟の前に出てきた。


「無事に、一件落着だ。ロドリアムさんが、ローダンを倒してくれた。」

キダンは言い、ロドリアムはマリーを追いかけるのを止めた。


「ロドリアムさん‥。ありがとうございました。」

セフィドウの1人が挨拶をした。

「いえ‥。」

「ローダンが倒れたので、ヒタイアシスはこれから、もっと良い国になるでしょう。」


セフィドウは、ローダンとメンイーを回収している。


「メリロス‥。君は美しかった。」

金縛りになったメリロスに、オイドレンが言った。

ミシッ‥という音とともに、メリロスは、瞳だけを動かし、オイドレンを見た。


「人を食べたのだからな、仕方ない。‥テイルも。可哀想に。」



「ブラック‥。君は強かった。もしも、君が良い人ならば、友達になっただろうに。」

ドロシーさんは、さっきまで戦っていた黒人メンイーに言い、双子も同情的な目で、黒人メンイーを見た。


キダンは、杖で、セフィドウの仕事を手伝った。


パン。

モアサが手を叩いた。

「よし、最後の仕事に行こう。」

「キアランの亡骸を?」

「ああ。」


キダンが、双子の前で手をかざし、場所を見た。

「キアランの場所は、こちらだ!」


「行こう、ロドリアム。罰金はきっと200万ドルになるぞ。」

「でも、キアランさんの亡骸を連れて帰れば、免除されるんじゃない?メンイーも倒したことだし。」

「ああ~、そうだ。信じよう。」

オイドレンとロドリアムは、話した。



「もうすぐだ。‥多分、この茂みの向こう。」

キダンが、草をかき分けると、植物が生えていない場所があった。


「これは‥。」

モアサが、砂を触った。

髪の毛が出て来ていたのだ。


「お父さんっ。」

モアサは、手で、土を掘った。


「待って。」

キダンが、ブラックホールを手に作り、土を吸った。

「ブラックホール?」

ドロシーさんが聞いた。

「ああ。言ってなかったか?」

「はい、聞いてないです。」

「でも、ブラックホールを手に作りだせるのは、ハンドミラーの特徴だ。君ももう少し、訓練をつめば、作りだすことが出来る。うまく使えば、他人の精神病も治せるんだ。」

「そうなんですか‥。」

ドロシーさんは、手の平を見た。


「キアランさん!!」

白骨化したキアランが出てきたので、双子は叫び、すがりついた。


「泣く必要はない。」

白骨化したキアランから起き上がった、ヘイリエントのキアランが双子に言った。

「ありがとう、俺を見つけてくれて。」

「本当に死んでいたなんて‥。」

「平気だ。人は誰だって死ぬ。」


「例外もいるのか?エテルなんて生き物、この世に本当に存在したんだな。」

「いえ、でも、まだ分からなくて。それより、あなたを殺したのは、僕の生霊です。償いをさせてください。」

「償う必要なんてない。言っただろう?人は誰だって死ぬ。‥君以外はな。」


「キアランさん‥。」

「アスタ。立派になったな。」

「ここに生きているのは、あなたのおかげです。」

「そんなことない。君が強かったからだ。」


「僕の亡骸を、愛する妻と娘の下へ、連れて行ってくれるな?」

「もちろんです。」

「よかった。」

キアランのヘイリエントは、亡骸と同化して、眠った。


ジュインとナロウは、マトリアシルのピピアムという街に住んでいる。

ピピアムの郊外まで、モアサの瞬間移動で来た。


「こんな所にカボチャがある。」

オイドレンは、カボチャを拾い、馬車にした。

「最後は、カボチャの馬車だ。行くぞ、キアランの最愛の人の下へ。」

みんな、カボチャの馬車に乗り込んだ。


家の前では、すでに、ナロウとお母さんのジュインが待っていた。

「連れて来てくれたのね。」


モアサとナロウは抱き合い、ロドリアムはうつむいた。


黒い魔法の棺を開けると、キアランは、美しい姿に戻っていた。

「キアラン‥!!」

お母さんは、キアランの頬に触れた。


夕日はとても美しく、ロドリアムの瞳は、ゆらゆらと輝いた。


「罰金が免除?ああ、よかった。」

オイドレンは、マトリアシルに戻り、直ったスマホで警察と話した。


夏休みは終わり、明日からまた、学校が始まる。

「宿題は終わったか?」

プーチは聞き、双子はうなずいた。



「先輩っ。お久しぶりですっ。」

「ボッティ。」

「夏休み、あんまり、会えませんでしたね。」

「うん‥。僕達、バイトしてたから。」

「そうですか。僕も、バスケしてて。やっぱり、高校卒業後は、NBAを目指すつもりです。」

「そうなんだ。」

「はい。先輩達は、どうするつもりですか?」

「働くと思う‥。」

双子は、『警察官募集』のチラシを、クシャッと隠した。


3月。もうお別れの時だ。

プーミンとは、1年ほど距離を置いていた。

時々、悲しくなったが、12月には、プーミンは前と同じように、双子に接してくれた。

双子は、最初は少し泣きそうになったが、すぐに慣れて、放課後、プーミンの相談室でお茶を飲んだりした。

ブースター先生は、あの時のことを完全に忘れたかのように、ずっと同じ感じだった。

双子は、これからも、ブースター先生に手紙を書くつもりだ。


スティーダはワイルドだったが、ワンパンの授業はもっとワイルドで、生徒から人気だった。

ロナセン・ルイジュウスは、美術の教師だが、フランスの展覧会で、最優秀賞を取った。


ボッティは体育館で、一人練習をしていた。

「ボッティ。」

「先輩。」


「1人?」

「はい。よければ、バスケやりませんか?」

双子も、バスケをした。


「好きな事が仕事になるって、ちょっと‥怖いです。」

ボッティは、体育館の床に座り、ボールを触りながら言った。

「そうなんだ‥。」

「はい。先輩達の好きなことって、何ですか?」

双子は、顔を見合わせた。

「分からない。」

「分からない?」

「うん。」

『僕達、まだ5才だから』

そう言おうとしたが、双子は口をつぐんだ。


「でも、そのうち見つかりますよ。続き、やりましょう。」

「うん!」

双子はニヤリと笑った。


卒業式。

オイドレンとプーチ、ロドリアムが来た。

プーチは、涙をぬぐっている。

キダンも来ているし、モアサとナロウも来ている。

ナロウは、結婚指輪をしている。

モアサと結婚することにしたのだ。


最後は、ブースター先生の指揮で、歌を歌った。

主要メンバーと、少しだけ出演したメンバー達だ。

プーミンも、泣いていた。

プーミンには、何か、秘密がある。


それは、何だろう?

双子は、少し気づいていたが、あまりにもはっきり分かると、きっと泣いてしまうような内容だったので、考えないようにしていた。


さようなら、プーミン。

でもきっと、またすぐに、会うよね?



【Matriacil】

【MICILUMA】

【今日で、お別れの日】

【マトルキャットの切ないI love you】



#マトルキャット


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