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  • Shino Nishikawa

落語【神様】

落語『神様』

「今日お話するのは、ある男の歌手が死んだ話でございます。この男は詩を書くのが大変うまく、バンドにも良いメンバーが集まりました。素晴らしい音楽を次々と残しましたが、この世に必要な物は音楽だけではなかったのです。

『それほどまでに詩を書く才能があるのなら、小説を書いてみなさい。』

神様は言いましたが、その男には、分からなかったのでございます。物語じみた曲をどんどん作っていきましたが、どこにアドベンチャーが仕込んであるかは、自分達にしか分からないものでした。

神様は男に告げました。

『お前はもうすぐ死ぬ。生きたければどうすればいいのか、この1カ月のうちに考えなさい。』

『どうせ俺が歌わなくなったらいいんだろ!!』

男はほざきました。しかし、神様が言ったのは、もう少し神への関心を持ち、願掛けをする事だったのです。神様は、男が生きるために願掛けを始めるのを期待しましたが、男には生きる事よりも、歌う事の方が大事でした。

男はもう一度、ステージで歌うために願掛けを始めたのでございます。

1カ月過ぎた時、男は生きるための願掛けを一度もしておりませんでした。

『結界、崩れよ。』

神様は言い、スターを囲んでいた黒い結界がバラバラと崩れ落ちていきました。

そして、ずんぐり太った男が、スターを殺しに来たのでございます。

神様は、ずんぐり太った男が前世で罪をそのままにしたために、今世でも、また殺人をする運命にあることを知っていましたが、悲しい目をしました。

スターは殺され、ずんぐり太った男の罪はまたそのままです。

スターの甥に、小説家を目指す男がいました。

しかし、小説を売れば、日本全国の人から自分を知られ、恨まれる事もあります。

だから、なかなか小説を出せず、仕方なく派遣社員をしておりました。

彼の派遣担当者はなんと、ずんぐり太った男だったのです。

ずんぐり太った男の邪気に、彼は苦しみました。

『なぜ、僕があんな男と関わるのでしょう?あいつが僕の伯父を殺したのは夢ではないのですか?』 

『夢ではありません。あなたがどう生きても、私はあの男に関わらせるつもりでしたよ。出版社にあなたが通っていたのなら、あの男を編集者として、あなたに会わせていました。』

神様は言いました。


ところで、神様の声が心に響かなければ、誰が伝えると思いますか?

それは、あなたの口なのでございます。」


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