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  • Shino Nishikawa

落語【髪長姫】

落語【髪長姫】

前もって言っておきます。僕は、この話を、天照大御神様の指示を受けて考えました。

知り合いの女性に起こった実話を元にしております。その女は、昔からモテる女でございました。一度男たちの間で、その女をめぐって大きな喧嘩が起こったので、それ以来、男たちは絶対に抜け駆けをしないという血の掟を作ったのです。それなので、女は一向に幸せになれません。美しさを周りからねたまれ、仕事もうまくいかないので、女は神社に通うようになりました。天照大御神様は女に言いました。

『髪の毛を伸ばしなさい、髪の毛を大事な年2020のために寄付すれば、そなたを助けましょう。』

その言葉通り、女は髪の毛を伸ばしました。髪の毛を伸ばす事は大変な事でしたが、女はしっかりと生きるようになり、仕事もそこそこできるようになりました。

2019年の末、女の長い髪を見た天照大御神様は安心しました。髪を寄付出来る程に伸ばす事も、精神力の一つです。ここまで精神力を高めたなら、今後の人生を下手に生きる事はないだろう、天照大御神様はそう判断して、女が無事に寄付するまで、自分の家来に見守らせることにしました。

その家来というのは、ちょっと変わっていますが、ラップを歌う女神でございます。

『ヘイ、ヨー。そなたの母ちゃん綺麗だYO。髪の毛まだまだ伸ばしてYO。きっと良い事あるぞYeah。国想い生きる姿かっこいいぞ。』

「え?今の誰のラップ?」

自分の心に響くラップに、女はとまどいましたが、神様が見守ってくれているという事がすぐに分かりました。女は、新年の1月7日に髪の毛を寄付する事を予定しておりましたが、最後の数日間は勝負でした。髪の毛は腰まで達しており、あまりの重さに、日常生活にも支障が出ていたのです。でも、絶対にハサミを入れてはいけません。

『そなたハサミ持ったら危ないYO。できればさわるな、しまっとけ。』

女神のラップを聴き、女は長い髪のまま無事新年を迎え、元旦の朝、まるで関ヶ原の石田三成のような彼女の姿に、街の人々は息を飲みました。

ついに1月7日の朝、彼女は自分の街の産土神社に参拝に行き、いざ美容院に向かったのです。彼女の後ろには、小さな神々がぞろぞろと歩いていました。あの光景は、霊能力がある僕から見ても、異様なものでしたよ。

彼女は髪の毛を無事に寄付し、ラップの女神は歌いました。

『ありがと、髪の毛もらってく。きっと良い事あるぞYeah。伸びたらそなたに会いに来る。また奇跡を見せてくれ。』

そうして、ラップの女神は彼女から離れたのです。もう一度、髪の毛を伸ばす事を言い残して。‥彼女に良い事があったのかどうか‥。彼女を愛する男たちは、和解をしました。彼女が国を代表する巫女だと認め、全員で守る事にしたのです。

だから、彼女は誰とも幸せになる事はありませんでした。でも、彼女がもう一度、髪の毛を伸ばせば、ラップ女神が会いに来ることがあるかもしれません。

彼女は、髪の毛を通して、神様に通じる大巫女となったのでございます。



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