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  • Shino Nishikawa

Tokyo young story 脚本

Tokyo Young Story

登場人物

宮高鷹雄・・・主人公

高野一郎

鈴山秀

近藤君久

高井慧

森本優斗

坂本九さん

藤浦英樹・・・作曲家

下関光子・・・鷹雄のガールフレンド

神田もも子・・・慧のガールフレンド

宮高明代・・・一郎のガールフレンド

麻原昭介・・・鷹雄たちの友人

藤倉まこと・・・脚本家

足立すぐる・・・一郎の先輩

近藤ミサエ・・・君久の妻

アンティーク太郎

一九六三年

一、ショーウィンドウのテレビで坂本九が歌っている。

と光子がそれを見ている。

鷹雄「坂本九の歌はうまいよね。」

光子「そうね。九さんの歌を聴いていると疲れなんてすぐに吹き飛んじゃう。」

二、カフェ(午後)

鷹雄「ここが、光子ちゃんが来たかったカフェかぁ。なかなか良い内装だね。」

光子「ええ。先月オープンしたばかりなの。友達が、ここのケーキがおすすめですって。」

鷹雄「ケーキセット一つ。」

光子「私も同じ物をお願いします。」

光子「鷹ちゃん、お金は大丈夫?」

鷹雄「え、何を言っているんだい?僕が大学生だからってあまく見ないでくれ。カフェでケーキセットを食べるくらいのお金は持っているよ。」

光子「それならよかったわ。私、本当はびっくりしたの。鷹ちゃんが大学に行っちゃうんだなんて。」

鷹雄「僕だって大学くらい行くさ。」

ケーキセットが運ばれてくる。

光子「わあ、美味しそう!」

鷹雄「そうだね。想像していたよりもちょっと大きいな。」

2人はケーキを食べ笑う。

光子「それで、大学でどんな勉強をしているの?」

鷹雄「経済だよ。お金の事とか経営の事。」

光子「経営?」

鷹雄「もちろん、僕が本当に経営なんかするわけないさ。」

鷹雄「光子ちゃんは八百屋さんで働いているけど、将来もずっと続けるつもり?」

光子「ずっとじゃないわ。今は楽しいから八百屋で働いているだけ。野菜を見ていると楽しい気持ちになるの。今日も夕方から仕事よ。」

鷹雄「そうか。光子ちゃんには将来の夢があるのかな?」

光子「もちろん。私がいつか女優になりたいの。」

鷹雄「えっ、女優?」

光子「そう。あのね、実をいうと、私って人から好かれるみたいなの。特に男の人から。」

光子はコーヒーを飲む。

鷹雄「でも、光子ちゃん。男の人とばかり、仲良くしちゃだめだよ。戦争に行ってきた人もいるしさ、何をしてきたか、分からないからね。」

光子「分かった。男の人とばかり仲良くしないようにする。」

鷹雄「分かってくれるならいいよ・・・。」

三、八百屋(夜)

光子「いらっしゃいませー。」

笑顔で接客をする光子を影から眺める鷹雄の姿。

四、大学の廊下(朝)

廊下で女子数名と会話する君久の姿。教室に入ってくる鷹雄。

君久「鷹雄くん、おはよう。」

鷹雄「おはよう、君久くん。」

女子達「鷹雄くん、おはよーう。」

鷹雄「おはよう。」

女子達、笑う。

君久が女子達に話し始める。

君久「僕は、昨日見てしまったのさ。鷹雄くんが女性と2人きりで喫茶店にいるのをね。」

女子達「ええ?嘘ぉ!」

君久「本当だよ。」

女子「どこの銀行にお勤めの方かしら?」

君久「いや、鷹雄くんの彼女は年上じゃなくて、年下みたいだったよ。」

女子達「へええ、そうなんだぁ!」

五、大学の教室(朝)

優斗「鷹雄君、おはよう。」

鷹雄「おはよう、優斗。」

優斗が、ノートを見ている一郎に声をかける。

優斗「一郎、鷹雄君が来たぞ。」

鷹雄「おはよう。」

一郎「鷹ちゃん、おはよう。経済の勉強は難しくて全然頭に入らないよ。」

鷹雄「当然さ。分からない事だから学んでいるんだ。」

一郎はため息をつく。

一郎「勉強もしたいけど、昨日、坂本九のレコードを買ってしまったからね、放課後僕はアルバイトをしなければいけないんだ。」

優斗「九さんのレコードを?」

一郎「これ。」

優斗「ちょっと見せて。」

一郎「これでも僕と九さんは遠い親戚なんです。レコードは送ってくれないけど。」

鷹雄「へええ、どういう仲なんだい?」

一郎「ハトコです。」

鷹雄「結構近いじゃないか。」

一郎「うん、まあね。」

慧が来る。

鷹雄「おはよう、慧。」

慧「鷹ちゃん。さっき君久に聞いたぜ。昨日女といたんだってな。」

優斗「ええ?君に彼女がいたのかい?」

鷹雄「光子は彼女なんかじゃないよ。ただの幼馴染さ。それよりも、一郎は坂本九さんのハトコなんだってよ。」

慧「それならもう知っているよ?一郎、九さんのサインをもらってきてくれ。」

一郎「九さんがサインをタダでくれるならいいけど。」

慧「くれるに決まっているさ。」

六、大学の授業風景

七、大学の教室(午後の休み時間)

女子達が鷹雄に話しかける。

女子「鷹雄くん、今日一緒に、新しくできたカフェに行かない?」

鷹雄「ええ、どこのカフェだい?」

女子「先月、○○にオープンした所。」

鷹雄「ああ。」

*鷹雄は2人でケーキを食べた時の事を思い出す*

女子「ねぇ、いいでしょ?慧ちゃんも一緒よ。」

女子「慧ちゃん、来てぇ。」

照れ笑いの慧が来る。

女子「慧ちゃんも一緒にカフェに行くでしょ?」

慧「うん。鷹雄、今日の放課後、一緒にカフェ行こうぜ。」

鷹雄「いいよ、分かった。」

女子達「よかった、じゃあ、あとでね!」

女子が行くと、優斗がよってきた。

優斗「俺は誘わないないの?」

慧「そうしたらサンサンじゃん。俺、そういうのダメだから。」

優斗「ああ、女子の方が多くなきゃダメみたいな感じ?」

慧「うん、それにさ何か起きた時に、女子が多い方が安心だろ。」

優斗「何かってなんだよ。」

慧「何かは何かさ。その時は警察が来て、なぜ男が3人もいたんですか?とか聞かれるんだから。」

優斗「ああ、そうか。でも、そういう事ってあるのかな。」

慧「あるよ。お前は男をあまく見すぎているぞ。」

一郎が鷹雄に言う。

一郎「鷹ちゃん、僕ともまた遊んでください。今日はアルバイトだから無理ですけど。」

鷹雄「いいけど、僕のお金が続けばね。」

一郎「鷹ちゃんなら大丈夫ですよ。」

八、大学の門(放課後)

優斗「じゃあね、バイバーイ!」

慧「じゃあな!優斗!」

女子「あれ、優斗さん来ないの?」

慧「うん、あいつはいろいろと忙しいんだよ。様々な研究をしているんだ。空や風、または虫の事をね。」

女子「へぇ、そうだったんだぁ!」

女子達は慧と話して、鷹雄の前を歩いていく。

女子「優斗さんって素敵ね。」

女子「私、優斗さんのこと、好きになっちゃったかも!」

慧「それはどうかと思うぜ。あいつは結構気難しいからな。」

九、駅

五人は電車に乗り、移動をする。(昔風の切符)

十、八百屋

光子の八百屋の前を通るので、鷹雄は心配になってくる。

ちょうど光子の八百屋の前に来た時、女子が急に鷹雄を覗き込んだ。

鷹雄、息を飲む。

女子「鷹雄くんて、絵うまくない?」

鷹雄「あ。」

光子は唖然とした顔で鷹雄を見る。

女子「鷹雄君、絵上手だよねぇ、美術やってたの?」

鷹雄「いや、やってないよ。ただ、昔から好きで描いているんだ。」

鷹雄は下を向いた。

十一、カフェでの団欒

十二、雨の朝

大学に遅れそうになった鷹雄が走って行く。

十三、大学の教室(朝)

息切れした鷹雄が入ってくる。

優斗「鷹ちゃん、おはよう。」

鷹雄「おはよう。」

一郎「おはよう、昨日は楽しかった?」

鷹雄「うん、まぁ結構楽しかったよ。」

一郎「良かったですね。みんなと遊びたいけど、僕は今日の放課後、日体大に行くんです。」

優斗「なぜ日体大に行くんだい?」

一郎「体操競技をやらせてもらっているんですよ。僕の得意な事だから。」

鷹雄「嘘だ。そんな事、一言も言っていなかったじゃないか。」

優斗「僕もそれは初耳だな。」

いつのまにか慧が来る。

慧「その事なら知ってるぜ。」

慧「一郎は、体操選手として東京オリンピック目指しているんだよな。」

十四、日体大に向かう道

鷹雄「僕たちはもう3年生だぞ。一郎が体操をやっている事も、坂本九と親戚だという事も、なぜ今まで教えてくれなかったんだい?」

一郎「・・・。」

慧「まぁ、俺は一郎と同じ長野出身だからさ、いろいろ教えてもらってたんだよ。」

慧「きっとびっくりするぜ。一郎はオリンピックを目指すほどにうまいんだから。」

優斗「そうだったんだ。でも、毎日会っている友達なんだから、そういう大事な事は教えてね。」

一郎「わかった。でも、鷹ちゃんだって彼女がいる事を教えてくれなかったじゃないか。」

鷹雄「だから、光子は本当に彼女なんかじゃないんだよ。」

鷹雄「それより、本当に僕たちまでついてきちゃっていいのかな?」

一郎「大丈夫、キャプテンの足立さんはすごく良い人だから。」

優斗「足立さんって、あの足立すぐるの事?世界選手権を連覇したっていう。」

一郎「そうだよ。それがどうかした?」

慧「どうかしたって。俺たちにとってはそれはすごい事だぞ。」

十五、体育館

体操選手が練習をしている。

優斗「うわぁ。」

足立「一郎クーン!」

一郎「足立さん!」

一郎「今日は友達も一緒なんですけど、いいですか?」

足立「うん、構わない。あすこで座って見ていてもいいし。」

足立さんが指さした所にはお洒落な格好の男がいた。

優斗「こんにちは。」

秀「こんにちは。」

鷹雄「すごいな、それにしても。」

一郎も練習を始め、三人は練習風景を眺める。

慧「あの、体操選手の方ですか?」

秀「いや、足立さんと知り合いだから、特別に見学させてもらっているんですよ。」

慧「そうだったんですか。」

秀「はい。あなた達は大学生ですか?」

鷹雄「はい。あすこにいる一郎の友達で、みんな学習院に通っているんです。」

秀「へええ、僕は大学には行っていません。郵便配達の仕事をしています。夜には酒屋にも行くし。」

優斗「ええ、大学に行ってないの?!」

秀「はい、行っていません。体操には憧れているけど、俺が一番大切な事は絵を描く事だから。」

三人は顔を見合わせた。

十六、大学の教室(午後)

優斗「秀君、大学の場所分かるかなぁ?」

鷹雄「大丈夫さ、地図を書いて渡しておいた。」

十七、大学の教室の出口

急いで教室を出る鷹雄、優斗、慧。

一郎「そんなに急いでどうしたんだい?」

鷹雄「日体大で知り合った人を大学見学に誘ったんだよ。」

十八、大学の休憩スペース(午後)

一人で絵を描く秀を見つけた君久が声をかける。

君久「君は一体何をしているんだ。部外者が勝手に学習院に入ってはいけないじゃないか。」

秀「僕、鷹雄くんたちから大学見学に誘われてきたんです。」

君久「鷹雄くんたちから?君、あんな人達を信用しちゃダメだよ。いつも男同士でべったりだもん。」

鷹雄「秀っ。」

君久、秀が描いた絵を見て「なかなかうまいじゃないか。」

秀「鷹雄くん!」

優斗「秀君、場所よく分かったね。」

一郎と鷹雄は、秀が描いた絵を見て息を飲む。

秀「うん。鷹雄くん、地図ありがとね。」

秀は鷹雄が描いた地図を出した。

鷹雄は下を向く。

慧「秀って絵がうまいんだな。」

秀「やっぱり俺は勉強には興味ない。」

君久「じゃあ君は何に興味があるんだい?」

秀「美術。俺はアニメを作りたいんだ。」

君久「それって鉄腕アトムみたいな?」

秀「うん、そうさ。俺はみんなに希望を与える物を作りたいんだ。」

十九、帰り道(夕方)

二十、鷹雄の部屋(夜)

鷹雄、漫画を読みながら、「

*秀「みんなに希望を与える物を作りたいんだ。」*

*鷹雄の空想*

二十一、鷹雄の部屋(朝)

徹夜で絵を描き続けていた鷹雄

二十二、八百屋へと続く道(休日)

鷹雄はなんとなく光子に会いたくなり、八百屋への道を歩く。

ハイカラなワンピースの女の子が立っている。

鷹雄『あれ。』

光子「あれっ、鷹ちゃん?」

鷹雄「光子ちゃん、久しぶりだね。こんな所でどうしたの?」

光子「うん、実は私、八百屋の仕事を辞めたのよ。今度、映画に出る事になったの。」

鷹雄『えっ、何々、この急展開。』

光子「あのね、脚本家の藤倉さんという人が、芸能プロダクションを紹介してくれたの。それでなんと、新人女優として、いきなりの主演映画もらっちゃった。」

鷹雄『ははあ?意味が分かりません。』

光子「映画のタイトルは、恋スルアンブレラ。藤倉さんが脚本を書いてくれたの。でね、相手役は、今人気俳優の木平コースケさんよ。」

光子「私、すごいと思わない?撮影は、来月からなの。」

光子「うまくいくといいな。出来上がったら、見に来てくれるでしょう?映画館に。」

鷹雄「うん、まぁ。」

光子「でも、今日は映画関係の人じゃなくて、別の人と会う約束があるの。」

優斗が横断歩道の向こうで声をかける。

優斗「光子ちゃーん!!」

光子「優斗さん!」

鷹雄「光子ちゃん、優斗と知り合いなのかい?」

光子「知り合いってわけじゃないの。優斗さんが、私に、少し話しませんか?って。今日はカフェに行く事にしたの。」

鷹雄「そうなんだ。」

光子「じゃあね、鷹ちゃん。」

鷹雄「うん。」

横断歩道を渡ってきた優斗「あれ、鷹雄?」

鷹雄は無視して背を向けた。

二十三、鷹雄の部屋

レトルトカレーを食べる鷹雄。

カレーを食べ終わった鷹雄は寝そべって漫画を読む。

鷹雄「はああ。」

鷹雄は絵を描き、パラパラとめくって動かした。

**

鷹雄の空想‥描いたプリンセスと一緒に箒に乗り空を飛ぶ。

鷹雄「わあ、すごい!!」

プリンセス「鷹雄さん、私を描いてくれてありがとう。」

プリンセス「私がいるのはあなたのおかげよ。」

**

二十三、大学の教室(朝)

優斗「おはよう。」

一郎「優斗、おはよう。」

優斗は少しだけ離れた席に座る。

鷹雄は何も言わない。

一郎「一体どうしたんだい?鷹ちゃんが挨拶をしないなんて。」

優斗「鷹雄くん、昨日の事ごめんな。光子ちゃんと鷹雄くんが知り合いって知らなかったんだ。」

一郎「どういうことだい?」

優斗「俺が可愛いと思った人が、鷹雄君の幼馴染だったんだよ。」

一郎「へええ。優斗は鷹ちゃんの彼女と会ってしまったんだ。」

鷹雄「別に、光子は彼女じゃないから気にしてないよ。」

優斗「でも、光子ちゃん言ってたぜ?『好きな人がいるけど、鷹ちゃんには秘密ね。』って。それって、鷹雄君の事が好きだってことだろ?」

一郎「よかったじゃないか、鷹ちゃん。」

鷹雄「いや。」

優斗「いっその事、鷹雄君と光子ちゃんが一緒になってくれた方が、俺も気が楽なんだけどな。」

鷹雄「聞いたかもしれないけど、光子は女優になるんだ。だから男と付き合うどころじゃないよ。」

一郎「ええ?光子ちゃんって人、女優になるのかい?」

慧「一体何の話をしているんだい?」

一郎「鷹ちゃんと優斗の好きな女性が、今度女優になるらしいんです。」

慧「へええ。やっぱりモテる子はちがうな。けれど俺は普通の人と結婚したい。2人で協力して子供を育てていければそれでいいんだ。」

三人 アドリブ

一九六四年

二十五、日体大体育館

気合を入れるコーチ。もうすぐ本格的な選考が始まる。

一郎の練習を見守る鷹雄、優斗、慧、秀。

二十六、河原(夕方)

絵を描く、鷹雄、優斗、慧、秀。

慧「将来やりたい仕事、もう決まっているかい?」

優斗「僕は新聞社を受けるつもりだよ。日本のトップの行動をずっと追い続けたいんだ。」

慧「そうか。俺は仕事にはこだわっていない。ただ、奥さんと子供たちと仲良く暮らしていければそれでいいから。」

優斗「そうなんだ。慧はきっと良いお父さんになるよ。」

慧「鷹雄と秀は決まっているか?」

秀「俺は、アニメを作りたいたいから、いずれは○○に行けるように頑張ってる。」

慧「そうなんだ。」

優斗「鷹雄はどうなの?」

鷹雄「・・・実は、俺の夢も秀と同じなんだよ。」

秀「ええ、鷹ちゃんもアニメを作りたかったのかい?」

鷹雄「うん。」

慧「じゃあ2人で協力すればいいじゃないか。」

秀「そうだよ。鷹ちゃんの方が、学歴が高いからきっとうまくいく。これから俺たち協力して頑張ろうぜ。」

慧「オリンピックもあるし、これから楽しくなりそうだな。」

二十八、駅のホーム(休日)

実家に帰ろうとする鷹雄は、駅のホームのベンチで呆然とする鷹雄を見つける。

鷹雄「あれ、一郎?」

一郎「鷹ちゃん。奇遇だね。」

鷹雄「こんな所でどうしたんだい?今日は練習がないの?」

一郎「はい。もうすぐオリンピックの選考が始まるので、思いつめていて。」

鷹雄「大丈夫かい?突然、電車に飛び込んで自殺とかしないでくれよ。」

電車が来た。

一郎「鷹ちゃん、どこに行くつもりなんですか?」

鷹雄「ああ、実家に帰るんだよ。」

一郎「僕もついて行ってもいいかな?」

二十九、電車の中

一郎「いや~、楽しみだな。鷹ちゃんの実家に行けるだなんて。」

鷹雄「実家といっても、すごく古いんだ。君のような人が上がれる家じゃないんだよ。」

一郎「そんなことないですよ。僕の実家には、ボットン便所もありますから。」

鷹雄「ボットンなんて、普通じゃないか。」

三十、鷹雄の実家

鷹雄「ただいま。」

母「おかえり、鷹雄。早かったねぇ。」

鷹雄「うん。それで、大学の友達も一緒に来たんだけど、上がってもいいかな?」

一郎「こんにちは、僕、高野一郎といいます。」

母「一郎君、鷹雄と仲良くしてくれてありがとう。どうぞ、上がってちょうだい。

鷹雄、明代ちゃんが来ているから挨拶してね。」

鷹雄、明代がいる部屋をのぞいて「こんにちは、明代ちゃん。久しぶりだね。」

婦人誌を読んでいた明代「こんにちは、鷹雄君。今日はおばさんにメロンを持ってきたんです。」

鷹雄「そうなんだ、ありがとう。」

明代「あのそちらの方は・・・。」

鷹雄「この人は・・・。」

一郎「僕、高野一郎といいます。よろしくお願いします。」

明代、笑って会釈をする。

三十、鷹雄の部屋

鷹雄「僕の従妹の明代ちゃん、可愛いだろう?この部屋狭いんだけど、そこに座っていいよ。」

一郎「ありがとう。」

鷹雄「面白い漫画があるから、読んでみるかい?」

一郎「うん。僕、絵を描くのも好きなんだよ。」

鷹雄「はは、君もそうだったのかい。」

しばらく2人は漫画を読んだ。

コンコン

鷹雄「はい?」

明代「あの、メロンを切ったんですけど。」

鷹雄「わあ、ありがとう。」

明代「どうぞ。」

一郎「ありがとうございます。あの、明代さんは結婚していますか?」

明代「いいえ。私は恋はちょっと苦手で。」

一郎「そうなんですか、すみません。」

明代は笑い、部屋を出る。

鷹雄「おいおい、君は明代ちゃんに興味があるのかい?」

一郎「見た目が僕のタイプだったんだよ。」

鷹雄「たしかに、明代ちゃんは少し綺麗かもな。」

一郎「決めた。僕、必ず東京オリンピックに出場する。そして、金メダルをとって明代ちゃんに告白する。」

三十一、体育館

本気になった一朗の練習が始まる。

三十二、選考

厳しい選考の試合をくぐりぬけた一郎。

三十三、大学

新聞をめくりスポーツ欄を確認する鷹雄、慧、優斗。

スポーツ欄の下の方に代表選手の一郎と足立の名前が載っていた。

3人「おお~!」

三十四、大学(別の日)

一郎は大学生たちに囲まれている。

君久「君が体操で東京オリンピックに出場すると聞いて驚いたよ。おめでとう。」

君久と一郎は握手をする。

大学生たちは歓声をあげた。

三十五、テレビ

昭和風のナレーション。

テレビは足立すぐるの紹介をする。

足立は大学生活の傍ら、早朝から工場で働いている。

昭和風のナレーションはそれを紹介し、お昼には特大握り飯を食べる足立を紹介した。

さらに、足立クンの実家も映した。

足立「ただいま!」

出てきたお父さんはカメラに気づいて、再び背を向ける。

次に足立は自信に満ちたインタビューをした。

一郎のインタビューは小さい声で少し弱弱しい。

テレビは二人の練習風景を映した。

完璧な演技をする足立クン。失敗ばかりの一郎。

三十六、体育館

ハトコである一郎のオリンピック出場を知った坂本九。

体育館に来た坂本九は付き人に何か言われ、少し小言を言った。

笑顔に戻った坂本九「いやいやいやいや。久しぶりだね、一郎ちゃん。」

一郎「・・・。」

坂本九「僕のこと覚えているかな?ハトコの久君だよ。」

一郎「はい、久君って、坂本九さんですよね。」

坂本九「うん。君が東京オリンピックに出場すると聞いて、かけつけたんだ。」

一郎「ありがとうございます。」

坂本九「頑張れよ!」

一郎は練習に励む中、坂本九は踊ったり歌ったりして応援した。

三十七、街中

東京オリンピック一色に染められた東京の街。

その中に光子の映画のポスターが貼ってある。

鷹雄は目をそらし、東京の雑踏を歩いた。

三十八、体育館

応援にきた鷹雄、慧、優斗、秀。

休憩時間に一郎が来た。

一郎「みんなありがとう!」

一郎「みんなの分のチケットがあるんだ。」

優斗「ええっ、本当?」

一郎「うん。」

秀「俺、チケット買えなかったんだよ。ありがとう。」

慧「世界の舞台を見られるなんて光栄だぜ。」

一郎「いいんだ。明代ちゃんもオリンピックを見に来てくれるかな?」

鷹雄「明代ちゃんのことは、僕の方から誘っておくよ。」

一郎「ありがとう!」

一郎はチームに戻った。

秀「明代ちゃんって誰だい?」

鷹雄「僕の従妹で一郎の好きな人なんだ。」

慧、優斗、秀、アドリブ

三十九、東京オリンピック当日

坂本九と付き人が話している。付き人は坂本九を目立たせないために、スターがスターを応援するのはおかしい事を言った。

坂本九「じゃあ今日は僕がファンになっちゃうのかい?それって少しおかしいよ。」

坂本九はスターがファンを応援する事を言ったが、付き人は苦言した。

坂本九は、坂本九がハトコを応援する事を言ったが、付き人は坂本九を隠すように言った。

結局、一番良い席に静かに座った。

鷹雄たちも席につき、君久も女子達や他の友人と共に席についた。

明代も席につき、試合が始まった。

鷹雄たちは歓声を上げた。

足立の演技は完璧だった。

足立は金メダルをとり、一郎は銀メダルである。

坂本九は席から乗り出し、一郎に声をかけた。

四十、カフェ

悔し泣きする一郎。

鷹雄「君はよくやったよ。世界二位なんて大したもんだ。」

秀「そんなに泣く事ないさ。足立さんに負けただけじゃん。」

慧「一郎もよかったよな。」

優斗「それなのになぜ泣くの?」

一郎「金メダルをとったら明代さんにプロポーズしようと思っていたんだ。」

秀「プロポーズ?」

一郎「うん。」

秀「好きになったばかりだぞ、プロポーズはまだ早いだろ。」

鷹雄「そうだよ。オリンピックは終わったけど、君の人生は始まったばかりなんだから、そんなに急ぐことない。」

四十一、別のカフェ

光子「鷹ちゃん、私の映画観てくれた?」

鷹雄「うん、すごく面白かったよ。」

光子「そうでしょ?藤倉さんの脚本がいいの。それに撮影現場もとても面白かったわ。」

鷹雄「へええ、そうだったんだ。」

光子「うん。私、びっくりしちゃった。木平さんったら、本当に顔を近づけてくるんだもの。」

鷹雄「光子ちゃんはずっと女優を続けるつもりなのかい?」

光子「今回は藤倉さんが私のために映画を用意してくれたの。だから・・・これから先はどうなるか分からないわ。」

鷹雄はテーブルの下で指輪を開けたり閉めたりした。

第一章終わり。

第二章

一九六八年

一、 映画会社

映画会社で働く鷹雄と秀。二人は走り回っている。

二、 役所

君久は国家公務員になっていた。

三、 デパート

慧はデパートのかっこいい店員になっていた。

四、 新聞社 

優斗は新聞記者になっていた。

五、 工場 

一郎はため息をつく。

上司「高野君、どうしたの?」

一郎「友達が映画会社で働いていて・・・。もともと、僕もそっちに行きたかったから。」

上司「そうなんだ。高野君がそうしたいなら、仕事を変えてもいいんだよ。」

一郎「はい。」

六、 映画会社の前

鷹雄と秀が談笑しながら歩いてくる。

秀「あれ?」

鷹雄「え?一郎じゃないか?」

一郎「うん。」

二人を待っていた一郎は下を向く。

秀「こんなところでどうしたの?」

一郎「あのさ。」

二人「ん?」

一郎「僕も映画会社に入れてくれないかな?」

二人「ええ?!」

七、 蕎麦屋

秀「一郎、ビール頼む?」

一郎「僕はいいや。」

鷹雄「いやいや、せっかくだから飲みましょうよ。僕がおごってあげるから。」

一郎「ありがとう。」

秀が注文をした。

秀「どうして、突然○○に入りたいと思ったの?」

一郎「突然じゃないよ。前から僕もアニメを作りたいと思っていたんだ。」

鷹雄「たしかに、一郎君は絵が好きだって言っていたもんな。」

一郎「君たちがどんな仕事をしているのか知りたいんだけど。」

秀「今はアニメじゃなくて、他の人が企画した映画作りを手伝っているんだよ。」

鷹雄「正直言って、僕たちも苦しい時期なのさ。」

一郎「ああ、そうなんだ。二十八歳で夢をまだ追っているなんて、相当でかい夢だと言えるだろうね。東京オリンピックの事なんて、遠い昔の出来事だよ。」

鷹雄「うん。僕はあのいかれトンチキ爺さんを超えるまでは、あきらめるできないんだ。」

秀「鷹ちゃん、あの方をいかれトンチキ爺さんと呼ぶなんて。」

一郎「誰だい?いかれトンチキ爺さんて。」

鷹雄「その人はウォルト・デズニーさ。」

一郎「ハハ!デズニーを超えるなんて無理だよ。相手は英語をしゃべれるんだし。」

鷹雄「僕だって、英語は少しは話せるよ。」

鷹雄「後咲きの人の方が長生きするだろうな。僕の歯だってもう5本も銀歯なんだぞ。体はどんどん衰えていくから、大事にしないとね。僕は長く生きたい。」

八、 帰り道(夜)

秀「じゃあ、一郎が○○に入れるように考えてみるね。」

鷹雄「というか、僕たちで新しい企画を出せば、チームの一員として、一郎も入れるんじゃないか?」

秀「でもさ、この前、俺たちの企画、通らなかったじゃん。」

鷹雄「大丈夫だよ。チームに体操銀メダリストの一郎が加われば、きっとうまくいく。」

十、一郎の帰り道

一郎は上機嫌になり、バスに乗って、駅に帰り、自転車を拾い、家に帰った。

十一、映画会社

スタジオからは、カツラをかぶって衣装を着た人達や、機材を持ったスタッフが出てくる。

秀「はぁ~、終わった。」

鷹雄「きっと、一郎はもう待っているよ。」

約束の7時まであと5分ほどである。

スタッフ「おーい、片付け手伝ってよ。」

鷹雄・秀「え?」立ち止まる。

鷹雄「ええと・・・。」

スタッフ「何か予定でもあるの?」

鷹雄「・・・。」

秀「じゃあ僕が手伝います。鷹雄君は予定があるので。」

スタッフ「ふーん。わかった。早く手伝え。」

秀「はい。」

鷹雄「ありがとう、秀。」

秀「いいよ。その代わり、明日、企画の内容教えて。」

十二、待ち合わせ場所(夜)

鷹雄「一郎!遅れてごめん。」

一郎「大丈夫。企画について考えていたから。」

鷹雄「そうか。秀は、来られなくなった。片付けを手伝うことになってしまったんだよ。」

一郎「○○は大変だな。」

鷹雄「うん。」

しばらく夜景を見ながら歩く。

一郎「明代さん、元気かな?」

鷹雄「多分、元気だと思うけど、僕も最近会っていないんだ。」

一郎「もっと手軽に連絡できる手段があればいいんだけど。電話をすれば、明代さんのご両親に僕のことがバレてしまうだろ?」

鷹雄「それは構わないさ。君はオリンピックで銀メダルをとったのだから、たいした男だよ。問題は明代ちゃんの気持ちだろうな。」

一郎「そうだね、それが一番大切だ。」

十三、蕎麦屋

鷹雄「こんばんは~。」

女将「いらっしゃいませ。」

鷹雄「天ぷらそばとビール二つ。」

女将「かしこまりました。」

白シャツの男があぐらをかき、漬物を食べている。

「おばちゃん、ザル追加お願い。」

女将「あいよ。」

一郎「なぜ天ぷらそばにしないんだろう?」

鷹雄「わからない。」

「お茶お願い。」

女将「はいはい、ちょっと待ってね。」

一郎「ビールを頼めばいいのにねぇ。お店の人に悪いじゃないか。」

鷹雄「まぁ、そうだよねぇ。」

運ばれてきたザルそばを食べながら、白シャツの男が鷹雄たちをちらりと見た。

ちらりと見た。

鷹雄「麻原昭介君じゃないか。」

昭介「ええっ。鷹雄くんと一郎くんかい?久しぶりだなぁ!」

昭介「おばちゃん、ちょっと席移動してもいいかな?」

女将「あいよ。」

鷹雄「昭介君に会うのは、学習院の卒業式以来だよね。」

一郎「うん、本当に久しぶりだ。昭介君は公安部に行きたかったんだろ?それはどうなったんだい?」

鷹雄が一郎を小突いた。

昭介「それは全然ダメだった。やっぱりさ、政治家になるには、自分の足元から固めていくべきだよね。」

鷹雄「君は政治家になりたかったのかい?」

昭介「そうだよ。僕が目指すのは内閣総理大臣さ。僕は日本のために生きたいんだ。」

一郎「そうだったんですか。昭介君は立派ですねぇ。」

昭介「君たちこそ、何をしているんだい?」

鷹雄「僕たちは新しいアニメを作るための企画の話をしようとしていたんだよ。」

昭介「そうだったのかい。では僕は席を移動した方がいいのかな?」

鷹雄「その必要ないさ。たかがアニメの話なんだから。」

鷹雄「一郎が考えた企画を教えてほしい。僕はしっかりとまとまっていないんだ。」

一郎「僕が考えたのは、アルプスの少女ハッピーのアニメ化です。子供から大人まで楽しめる物語なので。」

鷹雄「たしかに、あの物語は良い話だよな。よし。明日、秀に話してその企画を進めてみるよ。」

一郎と鷹雄、アドリブ

昭介「いいよねぇ。君たちはずっと青春なんだ。君たちが作る物はただのアニメじゃない。感動という名前の新しい日本の宝物さ。」

十四、映画会社

鷹雄と秀が話合う。プレゼンをし、一郎も入社することになった。

十五、カフェ(午後)

鷹雄と光子がCaféで話している。

鷹雄「絶対大丈夫だよ。」

光子「うん・・・。」

鷹雄「光子ちゃんなら、必ずいつかもらってくれる人が現れる。」

光子「・・・。」

鷹雄「藤倉さんのことはもう忘れろよ。」

光子「・・・。」

鷹雄「光子ちゃんは女優以外に目標を見つけられたのかい?」

光子「まだよ。全然自分のことがわからないの。」

鷹雄「光子ちゃんがやりたい事が見つかるまで、しばらくゆっくり過ごしてみたら?」

光子「うん・・・。一番やりたい事は女優だったけど、藤倉さんの映画に出られないのなら、やめるしかないわ。藤倉さんが、あと三カ月の命だなんて、信じられない。」

光子は泣いた。

十六、映画会社(朝礼)

秀「おはようございます。今日は北アルプスの少女ハッピーの音楽を担当してくれる作曲家の人が来ます。」

鷹雄「了解しました。」

十七、アニメ制作

お昼ご飯、タバコ・・・。

水道で手を洗う鷹雄。

ふと見ると、男が座っていた。

鷹雄「あの、何か御用でしょうか?」

英樹「こんにちは、僕、フジウラといいます。」

鷹雄「ええ、藤倉さん?!」

十八、アニメ制作

英樹「作曲家の藤浦英樹です。よろしくお願いします。」

スタッフ「よろしくお願いします。」

秀「早速なんだけど、いいですか。」

英樹「はい。」

音楽について話し合う。

鷹雄「この部分、ドラマチックに出来ますか?」

英樹「はい、それなら。」

英樹は電子ピアノでピアノを弾く。

スタッフ 歓声

英樹「すみません、ちょっとお便所借りてもいいですか?」

秀「はい、便所ならつきあたりにあります。」

英樹「ありがとうございます。」

一郎「それにしてもすごいよねぇ。」

秀「すぐこうだもん。」

一郎と秀はピアノを弾くふりをした。

アハハハ!

鷹雄は暗い顔をしている。

秀「鷹ちゃんどうしたの?暗い顔して。」

鷹雄「いや、藤浦さんの名前がもうすぐ亡くなる人の名前に似ていたんだよ。」

一郎「一体、誰が亡くなるんだい?」

英樹も立っている。

鷹雄「光子の映画の脚本家の藤倉まことさんだよ。」

英樹「そんな。」

鷹雄「藤倉さんと知り合いですか?」

英樹「はい、藤倉さんは、僕に初めて映画音楽の仕事をくれた恩人です。」

十九、病院

秀「本当にこの病院で間違いないよね?」

鷹雄「うん、電話で光子に聞いたから、大丈夫だと思うよ。」

鷹雄、秀、一郎、英樹は藤倉さんのお見舞いに来た。

ガラガラ

英樹「すみません・・・。藤倉さん?」

藤倉「あ、英樹さん。こんにちは。」

英樹「ご病気だと聞いて、お見舞いに来ました。こちらは、今関わっている映画会社の方々です。」

鷹雄「こんにちは。僕は宮高鷹雄といいます。光子の知り合いです。」

藤倉「ああ、光子ちゃんの・・・。」

鷹雄「はい。光子も藤倉さんの映画に出られて幸せだと言っていました。」

藤倉「そうですか。(微笑)」

秀「僕は鈴山秀といいます。ずいぶん、藤倉さんの映画に励まされました。お会いできて、本当に光栄です。」

一郎「僕は高野一郎といいます。僕たちはアニメを作っているので、いつか藤倉さんに脚本を書いていただきたかったです。」

藤倉「そんなそんな・・・。」

鷹雄「いえいえ、本当ですよ!」

秀「藤倉さんがもうすぐ亡くなっちゃうなんて信じられません!」

英樹「藤倉さん。僕に映画音楽の仕事をくださり、ありがとうございました。藤倉さんは僕の命の恩人です。」

藤倉「すべて英樹君の実力じゃないか。」

英樹「そんなことないですよ!!」

鷹雄「藤倉さん、なんで死んじゃうの!!」

一同 泣く

二十、病院(夜)

夢の中で光子が来る。

藤倉「死ぬ前には一番大切な人に会える。」

光子「藤倉さん?」

藤倉「僕は最後に光子ちゃんに会いたかったんだよ。」

二人は抱き合う(CG)

光子「藤倉さん、死んでしまうの?」

藤倉「もう仕方ないことさ。」

光子「藤倉さん、今までありがとう。ずっとあなたのことを想い続けるわ。」

藤倉「愛しい光子ちゃん。いつかまた会えたら、今度こそ一緒になろう。」

二人はキスをする(CG)

ピー・・・。

藤倉さんは息を引き取る。

医師「藤倉さん、藤倉さん!!」

看護師「先生、藤倉さんは・・・。」

医師は藤倉さんを確認する。

医師「もうダメだ。」

二十一、お葬式

藤倉さんのお葬式で、鷹雄は光子の姿を確認する。

鷹雄「光子ちゃん、大丈夫かい?」

光子「うん・・・。」

鷹雄「元気がないな。それに少し痩せたみたいだぞ。」

光子「食欲がないの。」

鷹雄「今度また、何か食べに行こうよ。」

光子「ええ、ありがとう。」

二十二、映画会社

鷹雄、一郎、秀、英樹。やる気のないスタッフ達。

二十三、光子の家

鷹雄「すみません、光子ちゃんはいますか?」

光子の母「実はねぇ、光子はちょっと変なのよ。」

鷹雄「変とは?」

光子の母「光子、鷹雄君が来たわよ。」

子供に戻った光子が顔を出し、鷹雄は息を飲む。

光子の母「藤倉さんが亡くなってから、光子は子供に戻ってしまったの。役所になんといえばいいのかしら。」

二十四、帰り道

赤い顔の鷹雄は、誰にもかまわず怒ったように歩いていく。

二十五、鷹雄の部屋

鷹雄は一心不乱に絵を描いた。

二十六、映画会社

秀「どうしたの?鷹ちゃん。」

鷹雄「・・・。」

一郎「何か言ったら?秀が聞いているよ。」

鷹雄「藤倉さんが亡くなったせいで、光子は子供に戻ってしまったんだ。」

秀「ええ?それって見た目のこと?」

鷹雄「うん・・・。」

一郎「心だけならありそうですけどね。アダルトチルドレンという病気もあるし。」

英樹が一郎を小突いた。

秀「もう手遅れじゃないか?光子ちゃんのこと。鷹ちゃん、どうしてずっと知り合いだったのに、藤倉さんにハートを盗まれる前に、好きだと言わなかったんだよ。」

鷹雄は下を向いた。

英樹「光子さんとはいつから友達なんですか?」

鷹雄「光子とは、三歳の頃から。」

一郎「そりゃないよ!鷹ちゃん。君は二十五年間も光子ちゃんに気持ちを伝えなかったわけかい?」

鷹雄「・・・。」

二十七、映画会社(夜)

秀「鷹ちゃん、俺たち先に帰ります。」

鷹雄「はい。鍵はかけておいてくれよ。」

秀「はぁ?なんだよ、それ。俺たちが帰るんだから、鍵をかけるのは鷹ちゃんの仕事だろ。」

鷹雄「あ、そっか。」

一郎「大丈夫かい?思いつめて、自殺とかしないでくれよ。」

鷹雄「もちろん、大丈夫さ。帰るならさっさと帰ってくれないか?」

秀「はいはい、今帰ります。」

秀「鷹ちゃんってちょっと変わっているよなぁ。」

二十八、帰り道

英樹「僕、こっちなので。」

一郎「はい、お疲れさまでした。」

秀「おー、お疲れ。」

秀「光子ちゃんが子供に戻ったって本当なのかな?」

一郎「気になりますね。」

秀「見に行ってみよう。」

二十九、光子の家(夜)

ガラガラ

一郎と秀は息を飲む。

光子の母「先生、今日はありがとうございました。」

医師「いえ。光子ちゃんの病気は、現在の医学では解明できないものです。お役に立てず、申し訳ありません。」

子供の光子が先生をじっと見る。

医師「光子ちゃん、小学校に、行くのかな?」

光子「うん!」

三十、帰り道(夜)

一郎と秀は泣いている。

秀「光子ちゃんが子供に戻ったの本当だったんだね。俺、鷹ちゃんに酷い事を言っちゃったな。」

一郎「僕もです。光子ちゃんのこと、甘く考えていました。」

秀「今日は、これで帰るだろ?」

一郎「はい。鷹ちゃんがあんな調子なら、僕たちの仕事もこれからどうなるか分かりませんからね。」

秀「そうだね。自炊をした方がよさそうだ。」

秀「じゃあね。」

一郎「また明日。」

二人は、八百屋と肉屋と魚屋で買い物をして帰った。

第二章終わり

第三章

一九七〇年

一、 デパートの打ち上げ

慧のデパートの上半期の売り上げが好調だったため、休憩室でパーティーが開かれていた。上司が慧に何か話しかけ、慧も答えた。腕時計と壁掛け時計を見る慧。そこにデパートの帽子をかぶったおばちゃんが話しかける。慧が言葉を返すと、今度は上司が慧に話しかけた。

上司「何か予定があるのかい?さっきから時計を気にしているようだけど。」

慧「はい、ちょっと・・・。」

上司「先に帰ってもいいぞ。今日はありがとな。」

慧「いえ、こちらこそありがとうございました。では、お先に失礼します。」

上司「うん、お疲れ様。」

二、 帰り道

腕時計を気にしながら、東京の雑踏を走って帰る慧。

ドン

慧「すみません。」

太郎「いえ。」

慧がぶつかったのは下積み芸人のアンティーク太郎だった。

三、 慧のアパート

カンカンカン

慧は階段を駆け上がり、部屋に戻った。

慧はテレビをつけた。

お気に入りの番組がある。

テレビを見て一人喋りをした後は、インスタント食品を食べる。

腕時計で時間を計る慧。

慧「早く結婚してぇな。誰か良い人いないかな。全然見つからないぜ。」

四、 デパート

慧「いらっしゃいませー。いらっしゃいませー。」

お客が慧に話しかけ、慧も何か答えた。

デパート店員の山口さんが話しかける。

山口「慧ちゃん、橘様が来ているわよ。」

慧「へ?先週も来たばかりですよ。」

山口「うちの上得意様だから仕方ないの。橘様は今日もあなたをご指名です。」

慧「・・・。」

店員たちが慧に行けという合図をする。

慧は頭をかき、橘様の下に向かう。そこには美しいお嬢様が立っていた。

慧「いらっしゃいませ、橘様。」

橘「いいの。今日は美容室の帰りに寄っただけだから。」

慧「そういえば、髪切りました?」

橘「ええ。パーマもかけたのよ。」

慧「今日は何をお探しなんですか?」

橘「そうね・・・、秋に着るジャケットを買おうかしら。」

慧「まだ少し暑いですけど、新作を入荷しています。」

橘様は嬉しそうに、慧に着いて行った。

橘様の買い物に付き合う慧。両手は買い物袋でいっぱいになる。

慧は一人の女性を見つけてしまう。

慧は上司に紙袋を無理にあずけた。それに気づかず話し続ける橘様。

橘様が振り向くと、愛想笑いの上司が立っていた。

慧は見つけた女性に話しかける。

慧「あの、何かお探しですか?」

もも子「スカーフを探しているんです。」

慧「スカーフでしたら、こちらですよ。」

慧はもも子に接客をし、スカーフを当てたりした。

もも子は愛想笑いをし、気になったスカーフを買い、慧はそれを丁寧に包装した。

五、電車(昼)

慧は松本の実家に帰るために特急電車に乗った。

ぼんやりと景色を眺める慧。

車掌が甲府についた事を知らせると、一人の女性が乗り込んだ。

慧「あ・・・。」

驚く慧。その人はスカーフの女性だった。

上品に首にスカーフを巻いたその人はちらりと慧を見て、空いている席に座った。

電車は再び動き出し、その人もぼんやりと窓から見える景色を眺めていた。

慧は席を移動した。

慧「そのスカーフ、○○で買った物ですよね?」

女性「えっ?」

慧「それ、僕が包装したんです。覚えていませんか?」

女性「ああ、あの時の。」

女性は微笑んだ。

慧「スカーフ似合ってますね。僕は高井慧といいます。あなたは松本の人ですか?」

女性「ええ。私は神田もも子といいます。」

慧は微笑んだ。

六、 デパート

辞表を提出した慧。

七、 喫茶店

もも子は喫茶店で働いている。松本で暮らすことにした慧は、もも子の喫茶店でランチを食べ、コーヒーを飲んでいた。すると、妻と幼い息子を連れた君久が入ってきたので、思わず慧は読んでいた雑誌で顔を隠した。

慧『ヤバい、君久もこっちに住んでいたんだ。』

八、 カフェ

鷹雄「びっくりしたよ。まさか、君久が結婚するなんて。」

君久「僕たちはもう三十路だぞ。結婚くらい当然さ。」

一郎「奥さんのことを愛しているんですか?」

君久「愛しているという言葉では片付けられない。」

鷹雄、一郎、秀「へ、へえ~。」

君久「妻のミサエのことは別に好きじゃない。」

秀「へ?じゃあなんで結婚したんだよ?」

君久「ミサエは、僕と結婚するための条件がそろっていたんだ。周りから遅れたくないしさ。」

鷹雄「だけど君は結婚のために、国家公務員の職まで捨てたんだろう?それでも、ミサエさんの事を愛していないのかい?」

君久「結婚なんてね、気持ちがなくても、子供さえできればちゃんと家族になっていくんだ。まぁ、僕の息子の武は、ミサエの連れ子なんだけどさ。」

鷹雄、秀、一郎は顔を見合わせる。

秀「でも、その結婚にはお互いの同意があったんだろ?」

君久「もちろん。婚姻届を出すために市役所に二人で行ったんだよ。」

三人は再び顔を見合わせた。

九、 松本城(夜)

慧「もも子さん、俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」

もも子「えっ、慧さんと私が結婚?」

慧「よくないのかい?」

もも子「いいえ。でも、親が、三年付き合ってからでないと、結婚してはダメだって。」

慧「時間の事は過ぎるのを待つしかないよな。」

慧ともも子は喜ぶ。(アドリブ)

十、夜の道

慧ともも子が並んで歩いていると、一人で歩く君久に出くわしてしまう。

君久は顔をそらし、慧を無視して行ってしまった。

十一、慧の新しい会社(帰り際)

慧「今日はありがとうございました。」

上司「いやいや、高井君は仕事の覚え早いよ。明日からもよろしくね。」

慧「こちらこそ、よろしくお願いします。」

会社の人達は微笑む。

慧「では、お先に失礼します。」

会社の人達「お疲れさまでした~。」

十二、慧の実家

電話をかける慧。

もも子の母『もしもし。』

慧「こんばんは、僕、高井慧といいます。もも子さん、いますか?」

もも子の母「ちょっとお待ちください。・・・もも子~!」

もも子「どうしたの?」

もも子の母「慧って人から電話よ。」

もも子は微笑み、電話に出る。

十三、君久の家

電話をしている君久。

君久「はい、すみませんでした。今後、こういう事が起こらないように妻と話し合います。(アドリブ)」

ガチャ

君久は妻と息子の武を見て言う。

君久「武、今日の遠足ごめんな。ミサエ、今後二度と、武の弁当を作り忘れるなよ。」

ミサエ「分かった、ごめんなさい。」

十四、君久の家(夜)

ミサエ「武はもう寝たわよ。」

そう言って、枝豆を持ってくる。

君久「もう別れよう。僕と一緒じゃ、君も良い母親になれないだろう。」

ミサエ「嫌よ。今さら別れるなんて言わないでちょうだい。」

十五、夜道

仕事の帰りに慧ともも子を見かけた君久は影に隠れる。

慧「また今度な!」

もも子「ええ、今日はありがとう。」

君久は一人になった慧に向かって聞く。

君久「慧!」

慧「ああ、君久。松本に住んでいたんだな。」

君久「そうだよ。僕も松本出身だからね。慧さ、あの喫茶店の女の子と付き合っているのかい?」

慧「あ、うん。」

君久「結婚するのかい?」

慧「いずれはしたいと思ってる。」

君久「へええ、そうか。幸せそうだな。」

慧「君久も結婚しているようじゃないか。」

君久「僕はまちがった結婚をしてしまったんだ。」

慧「そんなことないと思うぜ。お互いに不幸な物を埋め合うのが結婚だと思うし。」

君久「・・・。」

慧「でも、君久が別れたいのなら、俺は応援する。若い頃の仲間に幸せになってほしいんだ。」

十六、レストラン(東京)

鷹雄「幸せになりたいのは生きたいからさ。」

一郎「へえ、じゃあ生きるっていうのはなんなんだい。」

鷹雄「まずは呼吸をすることだよ。」

秀、優斗、アドリブ

鷹雄、一郎、秀、優斗は仕事について話す。

優斗「そろそろ慧が来る頃なんだけど。」

鷹雄「ちょっと遅れているんじゃないか。」

一郎、秀、アドリブ

ガチャ

ウエイトレス「いらっしゃいませ。(接客をする)」

四人アドリブ

慧「遅れてごめん!久しぶりだな。」

四人アドリブで会話。

注文する。

一郎「デパートでの仕事はどうなんですか?」

慧「実はさ、俺、松本に戻ったんだよ。」

四人「ええ?!」

鷹雄「じゃあ、今日は松本から来たのかい?」

慧「うん。彼女も一緒なんだけど、今は一人でぶらぶらしてる。」

秀「え、彼女って?結婚するの?」

慧「うん、そうなんだけど、彼女の親がさ、三年付き合わないと結婚を認めてくれないから、まだ無理なんだよ。」

優斗「へえ、そっかあ。やっぱり両親の同意なしの結婚は良くないよね。」

一郎「実は僕もさ、明代さんと結婚するつもりなんだよ。」

鷹雄「へ?もう式の日取りは決まっているのかい?」

一郎「まだです。明代さんの親は結婚を認めてくれているんだけど、明代さん自身が僕との結婚に消極的なんです。」

秀「それじゃあ、まだ結婚は無理だな。」

五人 アドリブ

十七、レストランの外

四人、もも子を見て。

「彼女かわいい~!」

十八、君久の会社

君久が仕事でミスをしてしまう。

上司「今から行って謝ってくる。」

君久「僕も一緒に行きます。」

上司「君は来なくていい。」

君久は落ち込む。

十九、居酒屋の前

君久は五千円を見る。

君久『今月貯金する分・・・。』

君久は居酒屋に入る。

二十、もも子の喫茶店(休日)

君久は注文する。もも子は微笑んで接客をする。

喫茶店の本だなに政治の本が置いてあり、君久は目を通す。

君久『俺、政治家になろうかな。』

君久『なれるか分からないけど、やってみたい。』

二十一、君久の家(夜)

君久は布団に寝転び、小さな灯りで政治の本を読んでいる。

隣では武が寝ている。ミサエが覗いたので、君久は武を指さした。

ミサエ「良く寝ているから、そのままでいいでしょ。」

君久「ダメだ。俺は今、勉強しているんだから。」

ミサエ「はーあ。」

ミサエは武を運ぶ。

二十二、君久の家(朝)

君久「今日、仕事半休とったから、俺が武を迎えに行ってくるよ。」

ミサエ「そう、丁度良かった。私も人と会う約束があるのよ。」

二十三、武の保育園

武を迎えにきた君久は挨拶をし、武は先生に手を振る。

先生「武君、さようなら、また明日ね。」

武「先生、さようなら。」

二十四、君久の家(午後)

君久「ただいま~。」

武「僕、手を洗うよ。」

武は洗面台に駆け出した。

武、手を洗いながら「お母さんは?」

君久「まだ帰ってきていないね。」

机の上にメモが置いてある。

『食べてね。』

チョコレートとプレーンのマドレーヌだ。

君久「どっちにする?」

ミステリアスな音楽が流れる。

君久はマドレーヌをじっと眺める。

武「僕、黄色い方がいい。」

君久「ええ?でも武はチョコレートが好きだろ?」

武「うん・・・。でも、今日は、黄色がいい。」

君久「ダメ。黄色はパパのだから。」

君久は武にチョコレートマドレーヌを食べさせ、プレーンは自分の部屋に隠した。

二十五、君久の家(夜)

君久は武と二人で食事をし、武を寝かしつけた。

ミサエ「ただいま~。」

君久「おかえり。」

ミサエ「遅くなってごめんね。(アドリブ 友達との出来事)」

君久「へえ、そうなんだ。(アドリブ)」

ミサエ「武、大丈夫だった?」

君久「うん、大丈夫だったけどさ、このマドレーヌなんだよ?こういう事しちゃダメだろ?」

ミサエ「何言ってんの?こんなのただのお菓子じゃない。」

君久「いらないから、ミサエにあげるよ。」

ミサエ「・・君ちゃんって、政治家になりたいんでしょ?今から政治家を目指すなんて、絶対に無理だからね。」

君久「なんだよ、それ。俺は家族を養うために一生懸命考えているんだぞ。」

ミサエ「ふーん。私たち、これからも一緒にやっていけるかしら?君ちゃんは今でも私を愛してる?」

君久「まぁ、愛してるよ。」

ミサエ「分かった。お菓子はそこに置いておいて。後で私が食べるわ。」

二十六、君久の家(朝)

洗面所でぐったりとしているミサエを、君久が発見する。

君久「ミサエ?どうしたんだ?!」

武が目をこすりながら来る。

君久「武、来るな!!」

君久は武を子供部屋に戻し、一一九番をする。子供部屋で泣く武。

二十七、お葬式

ミサエのお葬式に、大学時代の旧友、鷹雄、一郎、慧、優斗、秀が訪れた。

二十八、鷹雄の部屋

鷹雄の部屋には、君久をモデルにした漫画の原稿が置いてあった。

鷹雄はその原稿を破いてしまう。

鷹雄「こんな事になる前にさ、もっと奥さんと話し合って、別れればよかったじゃないか!!」

二十九、ミサエの実家の前

ミサエの両親に最後の挨拶をすました君久は武に言う。

君久「武、これからお父さんと二人で暮らそうな。」

三十、喫茶店(昼)

もも子が働く喫茶店でアイスドリンクを飲みながら、ぼんやりともも子を眺める君久。

そこに慧が現れる。

慧「君久。」

君久「慧。」

慧「奥さんのお葬式以来だな。あれから大丈夫か?」

君久「うん。息子の事は引き取ることになったんだ。でも、これからは好きな事をして生きる事にした。」

慧「へええ。君久の好きな事はなんだい?」

君久「政治さ。政治塾に入って、政治家を目指すつもりだよ。」

慧「君久の人生だ、やりたい事をやってくれ。でも、絶対に幸せになれよ。」

君久「もちろん。慧はあの人との結婚がうまくいくといいな。」

慧「うん、でもあと二年残っているんだよ。」

一九七四年

三十一、映画会社の面談室

鷹雄「慧は奥さんがいるから今日は来られないけど、こうしてみんなで集まるのは久しぶりだねぇ。」

優斗「うん。今日、君久も来るの?俺、ミサエさんのお葬式以来、君久に会ってないんだけど。」

鷹雄「僕たちだってそうさ。でも向こうから連絡がきて、どうしても会いたいって言うもんだから、このプチ同窓会に誘ったんだよ。」

秀「・・・ミサエさんのことさぁ、きっと君久が殺したんだろうね。」

一郎「正直、僕もそう思います。」

秀「多分、強く押したんだよ。」

優斗「それか毒だろうね。」

鷹雄「だけど、仮に君久が犯人だったとしたら、なぜ警察は動かないんだろう?」

秀「そりゃ君久なら、なんとか言ってごまかすさ。」

四人、アドリブで。

ピンポーン

鷹雄「君久かな?」

鷹雄「はい。」

君久「鷹雄くん。」

他三人も顔を出す。

君久「みんなも。久しぶりだな。今日は麻原君も一緒なんだけど、いい?」

鷹雄「麻原昭介君かい?」

昭介「久しぶり。ごめんね、突然来ちゃって。」

アドリブ

三十二、面談室

君久「みんな元気だったかい?」

アドリブ

鷹雄「ミサエさんが亡くなってから大変だっただろう?」

君久「そんな事ないよ。それにさ、俺、政治塾に入ったんだよ。ミサエが生きている頃から、政治家に興味があったんだよね。」

アドリブ

昭介「何だよ、その怒った感じはさ。(アドリブ)」

鷹雄「いや、君久がミサエさんを殺したんじゃないの?」

君久「まさか。俺がミサエを殺すはずないじゃないか。」

秀「じゃあ、なぜ死んだんだよ?」

君久「朝起きたら、ミサエが洗面所でぐったりしていたんだ。」

四人「ええ?」アドリブ

昭介「こんな取り調べみたいな事はやめろよ。」

君久「あ、そうだ。これお土産だよ。」

鷹雄「これ、東京駅で買えるお菓子じゃないか。」

君久「うん、でもこれ美味しいよ。それに、この部屋、可愛い絵が貼ってあって素敵だね。」

アドリブ

昭介「実は僕たち、今度選挙に出ることにしたんだよ。」

鷹雄「ええ?選挙に?」

秀「それ本当?」

君久「うん。衆議院選挙に立候補する。」

一郎「こんな時にかい?麻原君はともかく、君久はミサエさんを亡くしたばかりだぞ。」

君久「それは関係ないさ。」

鷹雄「関係なくねぇだろ。」

アドリブ

昭介「うん、それで、昔のよしみとして、僕たちの事を応援してくれないかな?よければ、後援会に・・・。」

昭介はパンフレットを出す。

一郎「それはいいけど、選挙に出るのはお金だってかかるんだろう?」

昭介「まぁ、お金のことは・・・。」

君久「うん、よければお金を貸してくれないか?議員になれたら、必ず返すから。」

鷹雄たち「ええ?!」

アドリブ

鷹雄「一体いくらなんだい?」

君久「一人四百万ずつ。」

一郎「そんなにかかるんだねぇ、選挙って。」

君久「うん、そうだよ。」

優斗「でも、今難しいよ。俺は新聞記者だから知っているけど、戦争に負けても残っている名家の人だってたくさんいるからね。」

君久「まぁ、それは・・・。」

昭介「僕たちだって、学習院出身だから大丈夫さ。」

アドリブ

三十三、選挙活動

二人は見事に当選する。

第三章終わり

第四章

「見上げてごらん夜の星を」が流れている。

鷹雄たちも苦労しながら、日本に新しいアニメという風をもたらしていた。

一九八五年

一、 映画会社

鷹雄、秀、一郎、英樹は、坂本九の話をする。

二、 カフェ

鷹雄、一郎、秀、優斗、君久が集まっている。

カラン

君久はアイスレモンティーの氷をストローで動かした。

鷹雄「君久が政治家になるなんてすごいよな。」

君久「うん、みんなのおかげだよ。ありがとう。」

鷹雄「いやいや、僕たちは何もしてないよ。お金もきちんと返してくれたから、ありがたかったし。」

君久「当然のことさ。」

秀「だけど、国を動かすなんて怖くないか?」

君久「うん、そう思う時もある。でも俺は、国会が学生の生徒会を百倍でかくしたものだと思っているから大丈夫さ。」

優斗「へええ。そうなんだ。」

君久「生徒会にはルールを守っている生徒しか入れないだろ?」

鷹雄「まぁ、そうだよな。」

君久「俺はミサエを亡くしたけど、その他のルールはきちんと守ってきたんだ。」

アドリブ

君久「なぜ君たちは結婚しないのかい?」

一郎「僕は明代さんと結婚しました。」

君久「ああ、それはおめでとう。写真で見たけど、明代さん、可愛いじゃないか。」

一郎「ありがとう。」

君久「だけどなぜ三人は結婚しないんだよ?愛する人とかいないのかい?」

秀「まぁ、鷹ちゃんには光子ちゃんがいるよ。」

君久「ああ、知ってる。ずっと子供のままでいる女の子だろう?」

君久「それって不思議だよな。そうだ、今度光子ちゃんをモデルにしたアニメを制作すればどうだい?【絶対に死なない女の子】っていうタイトルでさ。」

アドリブ

アニメの制作費の話。

君久「優斗や秀には愛する人がいるのかい?」

優斗「僕の愛する人も光子ちゃんさ。」

アドリブ

優斗「光子ちゃんを一目見た時から、僕はずっと光子ちゃん一筋だったんだよ。」

アドリブ

君久「じゃあ、秀の好きな人は誰なんだよ?」

秀「俺の好きな人は鷹ちゃんだよ。」

アドリブ

三、 東京の街

坂本九のポスター

一郎は目を伏せる。

一郎『もう何年も会えてないや。』

四、 映画会社

一郎は、鷹雄、秀、英樹に、坂本九に歌を歌ってもらう提案をする。

アドリブ

五、 東京の街

BGM『レッツキス』

軽快な足取りの君久。

*国会での出来事。今年の勲章授章者は坂本九という噂を耳にしていた。*

再びレッツキス。君久は帰って行く。

坂本九のディナーショーのチケットを手にして喜ぶ優斗の姿。

六、 映画会社

会社に坂本九が来て、鷹雄たちと仕事の打ち合わせをする。

アドリブ

七、 光子の実家

お仏壇に手を合わせる光子と伯母。

お父さんとお母さんの遺影。

伯母「光子ちゃん、あなたは一人じゃないわ。大阪の私の家で一緒に暮らそうね。」

光子「うん、伯母ちゃん、ありがとう。」

伯母は飛行機で大阪に向かう事を告げ、光子は喜ぶ。

八、 羽田空港

JA8119機はこれまでに二度の事故を起こしていた。一九七八年の日本航空115便しりもち事故と、一九八二年の滑走路逸脱事故だ。

一九八五年八月一二日。

JA8119機、羽田千歳線往復、羽田福岡線往復。

その日は五回目のフライトで、累計18800回目のフライトだった。

九、 昇格訓練

その日は副操縦士の昇格訓練が行われていた。

その場面。

一〇、 空港

123便のアナウンス。

一一、 地上

お客たちは地上に降りて並んでタラップを登り始めた。

伯母「光子ちゃん、ついに飛行機に乗れるわね。」

光子「うん!」

伯母「あら?」

伯母は坂本九がいるのを見つける。

一二、 飛行機の中

伯母「私たちの席はどこかしら?」

光子「ここかなぁ?」

伯母「でも、番号はちょっとちがうんじゃない?」

光子「じゃあ、どこだろう?」

伯母「光子ちゃん、見つけたわよ!」

伯母「私たち、一番後ろの席みたい。」

光子「ええ~、うれしい。」

伯母「よかったね。」

光子「うん!」

二人は座席に座る。

伯母「景色は見えないけど、仕方ないわ。窓際の人に頼めば、少し見せてもらえるかもしれない。」

光子「うん。そうだね!」

一三、 乗客

123便には著名人がたくさん乗りこんでいた。

阪神タイガース球団社長 中楚肇

阪神電鉄取締役 石田一雄

ハウス食品工業社長 浦上郁夫

神栄石野証券社長 石野喜一

ミサワホーム取締役 山本幸男

女優 北原遥子

医学博士 塚原仲晃

コピーライター 藤島克彦

漫画家 緋本こりん

元自転車競技選手 辻昌憲

元広島カープ捕手 竹下元章

美容研究家 和田浩太郎

中に、アンティーク太郎の姿もある。

歌手 坂本九

十四、飛行機の中

伯母「光子ちゃん、さっき見たんだけど、この飛行機に坂本九さんが乗っているみたいなの。」

光子「ええ、どこに乗っているの!」

伯母「多分、前の方の良い席だと思うわ。」

光子「私、見に行ってくる!」

伯母「うん、気をつけてね。」

光子は飛行機の中を走って、飛行機の階段を上る。

光子「ああっ!九ちゃん!」

坂本九はにっこりと笑った。

スチュワーデスが光子に優しく言い、席に戻す。

坂本九『可愛い子供も乗っているけど、もしも、この飛行機が墜落すれば、みんな死ぬかな?そうすれば、きっと、もう二度と歌は歌えないだろう。』

坂本九「あ~♪」

遥子「お上手。」

坂本九が少し歌うと、遥子が小さく拍手をした。

昌憲「坂本さん、やっぱり歌がうまいんだな。」

坂本九「そんなことないさ。でも、飛行機が墜落して死ねば、きっと二度と歌手はできない。君はそういう事を考えないか?」

昌憲「ええ?そんな事思わないよ。でも、この飛行機は危ないのかな?」

坂本九「さぁ、わからない。だけど、五百人もの人間が一度に空を飛ぶんだから、墜落の危険を考えるのは当然だろ。僕は飛行機が好きだから、つい予約してしまったけど。」

アドリブ

十五、コックピット

機長昇格訓練と離陸のやり取り。

十六、飛行機の中

光子「おばちゃん、わくわくするね。」

伯母「うん、そうだね、光子ちゃん。」

十七、離陸

十八、飛行機の中

光子「うっ。」

光子は耳をふさいだ。

飛行機は安定した。コピーライターの藤島克彦は緋本こりんに手を振った。

緋本も手を振り返し、通りかかったスチュワーデスにたずねた。

緋本「あの、紙をもらえませんか?」

CA「はい、こちらをお使いください。」

緋本「ありがとう。」

離陸から十分。

光子「おばちゃん、私トイレ行ってくる。」

伯母「気をつけてね。」

光子がトイレから戻る。

伯母「私も行ってくるね。」

十九、衝撃音

突然衝撃音が鳴り、酸素マスクが落下した。

緋本「ええ?なにこれ?」

絵を描いていた緋本は顔を上げた。

坂本九や昌憲、遥子も慌てる。

他の乗客も慌てている。

ドーン

爆発音がなった。

オートパイロットが解除され、機体(エンジン、ランディング、ギア等の表示)の点検が行われ、四つのエンジン、ランディング、ギア等に異常はなかった。

航空機関士「ハイドロプレッシャーを見ませんか?」

18時24分47秒、123便が緊急救難信号【スコーク7】の無線信号を発信し、信号は所沢の東京ACCに受信された。

二十、飛行機内

光子「ええ、何が起こったんだろう?こわいよぉ。」

伯母「大丈夫よ、光子ちゃん。今ならまだ、羽田に戻れると思う。」

昌憲「やばい、何か起きたな。」

坂本九「うん、でもきっとすぐに戻るよ。やっぱり、死ぬのは怖い。」

*坂本九は、鷹雄たちとの出来事を思い出す。*

二十一、コックピット

25分21秒、機長がトラブルの発生の連絡とともに、羽田への帰還と二万二千フィートの降下を要求し、東京ACCがこれを了承する。

123便は、伊豆半島へのレーダー誘導を要求した。管制部は、左右どちらへの旋回をするかをたずねると、機長は右旋回を希望した。

羽田は、緊急着陸を迎え入れる準備に入った。

機長「バンクそんなにとるな。マニュアルだから。バンク戻せ。」

副操縦士「戻らない。」

航空機関士「油圧が異常に低下しています。」

26分

機長「ディセント。」

機長「なんで、下降しないんだ。」

27分2秒、東京ACCが123便に、緊急事態を宣言するか確認し、123便から宣言が出された。続いて、123便に対して、どのような緊急事態かたずねたが、応答はなかった。このため、東京ACCは、JAL本社に123便が緊急信号を発信していることを知らせる。

航空機関士「ハイドロプレッシャーオールロス。」

同じ頃、客室の気圧が減少していることを示す警報音が鳴ったため、とにかく低空へ降下しようとした。しかし、ほとんどコントロールがきかない機体には、フゴイド運動やダッチロールが生じ、ピッチングとヨーイング、ローリングを繰り返した。

機長「頭上げろ!」

機長「頭下げろ!」

二十二、嶺岡山レーダーサイト

28分頃、千葉県愛宕山の航空自衛隊中部航空警戒管制団、第44警戒群でも、123便のスコーク7を受信していた。ただちに、直属部隊である中部航空方面隊に報告され、航空救難で中心的な役割を果たすRCCが活動を開始。

二十三、コックピット

28分31秒、東京ACCは123便に真東に向かうよう指示する。

機長「But Now Uncontrol」

東京ACCはこの時はじめて、123便が操縦不能に陥っている事を知る。

管制室のスピーカーがONにされ、123便とのやり取りが管制室全体に共有される。

二十四、飛行機内

乗客「きゃあ!!」

光子の近くの収納スペースが落下する。

怯えている乗客達。

坂本九の隣の遥子も口を抑えてぐったりしている。

坂本九が昌憲に行った。

坂本九「これは非常事態だね。僕さ、下に降りて、他の人達の様子を見てくる。」

昌憲「そうか。お前が行けば、きっと喜ぶよ。」

坂本九が立ち上がると、スチュワーデスが来た。

CA「お客様、危険ですので、席にお戻りください。」

坂本九「でも、僕は坂本九だから、みんなを励ましたいんだよ。」

CA「ええ?坂本九さんっ?」

坂本九「うん、そうだよ。僕、下に行ってもいいよね?」

坂本九は他の乗客を励ました。

二十五、コックピット

31分2秒、東京ACCからの降下が可能かの問いに対し、123便は降下中と回答する。

東京ACCは、羽田より近く、旋回も最低限で済む名古屋空港への緊急着陸を提案するが、123便は羽田への飛行を希望する。

航空機と地上との無線交信は、英語で行われているが、管制部は123便の機長の負担を考え、日本語の使用を許可する。

ゴンゴン

航空機関士「はい。」

CA「客室の収納スペースが破損しました。どうしますか?」

CAは取り乱す。(アドリブ)

なだめる航空機関士(アドリブ)

CA「落ち着いていられませんよ!!こっちはあの日なんだから。」

航空機関士「やれやれ。(アドリブ)」

二十六、飛行機内

航空機関士に坂本九が質問をするが、無視をされる。(アドリブ)

他の乗客も、航空機関士に声をかけたが、さっさと歩いて行ってしまう。(アドリブ)

光子と伯母は、航空機関士をじろりと見る。

漫画家の緋本とコピーライターの藤島は紙に×をした。

医師の仲晃は、悪いウイルスの番号を書いた。

航空機関士を罵倒する会社員たち。(アドリブ)

阪神タイガース社長の中埜は、タイガースのキャップをかぶり、航空機関士を睨んで、大きな声で何かを言った。(アドリブ)

航空機関士はこの時だけ立ち止まり、中埜を見て、口元をゆるませて去った。

中埜と石田は大きな声で議論した。

石野証券の社長喜一と、ミサワホーム取締役の山本は、自分の存在が知られないように小さくなっていたが、航空機関士は見抜いているかのように、ほくそ笑んだ。

二十七、コックピット

航空機関士「R5の付近の酸素が落っこちてます、ディセントした方がいいと思います。」

機長「え、どこだ?」

航空機関士「荷物の収納スペースの所が落っこちてる。」

3人は言葉を交わす。(アドリブ)

航空機関士「緊急降下と同時に、酸素マスク着用させます?」

33分、JALはカンパニーラジオで、123便に交信を求める。

航空機関士「R5noドアがブロークンしました。」

35分30秒、123便からR5noドアが破損したとの連絡があった後、その時点で、緊急降下しているので、後ほど呼び出すまで、無線を聴取するように求められ、JALは了承した。

機長「おい、JALにどう伝えた?」

航空機関士「無線聞いてろって言った。あいつら、何も知らねぇんだから。俺が○○について聞いた時、てんでダメだった。」

機長は言い返したかったが、何も言えなかった。

副操縦士が航空機関士をちらりと見る。

航空機関士「お前は空だけを見ていなさい。」

副操縦士は何も言えず、目線を空に戻す。

37分、機長がディセントを指示するが、機首は千メートル余りの上昇や降下を繰り返すなど、不安定な飛行を続けた。

38分、これを回避するために、ランディング・ギアを降ろそうとするが、油圧喪失のため、降ろせなかった。

JALのラジオ「○○〇!」

航空機関士「うるせぇ!聞いてろ!(アドリブ)」

副操縦士がなだめる。(アドリブ)

二十八、飛行機内

坂本九を含む乗客のほとんどが、不安定な飛行で体力を消耗し、自分の席で静かになっていた。

二十九、123便全体

40分、パイロットはランディング・ギアの自重を利用して、ギアを出すバックアップシステムを用いて、これを降ろした。この操作によって、機体は右に大半径で旋回しながら降下し、同時に、ロール軸の振幅が縮小して、多少安定した。

そして、富士山東麓を北上し、山梨県大月市上空で、急な右旋回をしながら、高度22000ftから6000ftへと一気に降下し、横田基地まで24キロの至近距離にいたる。

その後、機体は羽田方面に向かうものの、埼玉県上空で左旋回し、群馬県南西部の山岳地帯へと向かい始める。

三十、坂本九

*坂本九は夢を見る。東京オリンピックの出来事、初ステージ、レコーディング、鷹雄たちとの仕事の話。*

それは長く寝たかなと思うほど、良い昼寝だった。目を覚ますと、山の上に来ていた。

坂本九「山の上に来ちゃったよ。」

辻、目を覚まし、「え?あ、本当だ。もうやばいかな?」

坂本九「アドリブ」

辻はうなだれる。

三十一、乗客

喜一も山本もみんな、立ち上がってコックピットのドアを叩こうとしたが、重い腰が上がらなかった。

そんな中、中埜が立ち上がる。

コックピットのドアを叩き、航空機関士と話した。

ブンッ

中埜は航空機関士を殴り、アゴをさすって自分の席につく。

(しかし、これは理想で、中埜は、本当は殴れなかった。切なそうな目をする。)

中埜はタイガースのキャップをみじめに思い、キャップを外した。

航空機関士はもう一度、CAから呼び出された。乗客は航空機関士を罵倒した。

航空機関士「○○ちゃん、さっきあの日って言っていたけど、大丈夫?」

CA「はい、ええと、大丈夫です。(アドリブ)」

アドリブ

航空機関士は、もう一度光子の席の方に来た。

アンティーク太郎が声をかける。

アンティーク太郎「おい、このままでは墜落するんじゃないか?」

笑顔で太郎に近づく航空機関士。

アンティーク太郎「20分くらい前に、後ろの方で爆発音がしたんだけど、どうしたんだい?」

航空機関士「君は良い子だね。これは、僕が仕掛ける日本で初めてのハイジャックだから、邪魔しないでくれるかな?」

アンティーク太郎「貴様、爆弾を仕掛けたのか?」

航空機関士「黙ってろ。」

航空機関士は太郎の腹を強く殴る。

航空機関士は光子の席の方まで来たので、光子と伯母は緊張しながら、見ないようにした。

辻「おい、何か歌ってくれよ。」

坂本九「僕、マイクがないとダメなの。」

三十二、管制部

40分44秒、東京ACCが123便と他機との交信を分けるため、123便専用の無線交信周波数を割り当てし、123便にその周波数を変えるよう求めたが、応答はなかった。

41分54秒、逆に、123便をのぞく全機に対して、その周波数に変更するよう求め、交信は指示があるまで避けるように求めたが、一部の航空機は通常周波数で交信を続けたため、管制部は、交信する機に個別で指示し続けた。

三十三、坂本九

坂本九は『上を向いて歩こう』の口笛を吹く。

辻「最後に歌を残しておけば?」

坂本九「どうせ、全て燃えて消えてしまうよ。」

*鷹雄たちとの事を思い出す*

三十四、コックピット

45分36秒、航空無線のやり取りを傍受していた在日米軍基地が、123便の支援に乗り出し、英語で、123便にアメリカ軍が用意した周波数に変更するよう求めた。

機長「Japan Air 123, Uncontrolltable!!」

東京ACC「東京アプローチと交信するか?」

機長「このままでお願いします。」

機長「これはダメかも分からんね。」

三十五、飛行機内

緋本は藤島を見つめ、CAからもらった紙を投げた。

『愛してます、ロメオ。』

美少年の絵の隣に言葉が添えてある。

藤島「ありがとう。」

光子は泣いていた。

三十六、映画会社

鷹雄たちは熱心にアニメ制作に取り組んでいた。

水を飲む鷹雄。

鷹雄は光子との出来事を思い出し、夜空を仰いだ。

どこかで飛行機の音がする。

三十七、コックピット

47分10秒、123便は千葉県木更津市のレーダーサイトに誘導するように求め、東京ACCは真東へ進むように指示した。

東京ACC「操縦可能か?」

機長「アンコントローラブル。」

副操縦士「ああっ!」

東京ACCは、東京アプローチの無線周波数に変更するよう求め、123便は了承した。

右、左との方向転換が繰り返し指示される中で、副操縦士に機長は叫んだ。

機長「山にぶつかるぞ!!」

機体は六千ftをさまよっていた。

機長「がんばれー、がんばれー。」

この頃から、エンジン出力の強弱で、高度を変化させる操縦を行い始めていた。

機長の機首下げの指示に対して、

副操縦士「今舵いっぱい。」

48分54秒、無言で123便機長の荒い呼吸音が記録されている。

機長「あー、ダメだ。終わった。ストールする。」

機首が39度に上がり、速度は108ktまで落ち、失速警報装置が作動した。

機長「マックパワー、マックパワー、マックパワー。」

機体の安定感が崩れ、何度も機首の上げ下げを繰り返した。

49分54秒、JALがカンパニーラジオで、三分間、呼び出しを行ったが、返答はなかった。

副操縦士「スピードが出てます、スピードが。」

機長「どーんと行こうや。」

速度が頻繁に変化し、不安定な飛行が続いたために、副操縦士は、速度に関して、頻繁に報告をした。

51分、依然続くフゴイド運動を抑えるために、電動でフラップが出され、53分頃から、機体が安定し始めた。

53分30秒、東京ACCが123便を呼び出した。123便から、「アンコントロール。」と無線が入ってくる。東京ACCとRAPCONが返答、RAPCONは横田基地が緊急着陸の受け入れ準備に入っていると返答した。

東京ACCも、東京アプローチへの無線周波数へ変更するよう求め、123便が了承する。

JA8119に搭載されていたラジオ磁気指示計のvor受信アンテナは、垂直尾翼の頂上付近に埋め込まれており、垂直尾翼が破壊された際に、回線が切断されていた。

クルーは現在地を見失った。

54分25秒、JALも呼び出しを行ったが、返答はなかった。

東京ACCは、123便から現在地をたずねられ、東京ACCは、羽田から55マイル北西で、熊谷市から25マイル西と告げる。

その後、しばらく安定していた機体の機首が再び上がり、速度が180ktまで落ちた。出力と操縦桿の操作で、機首下げを試みたが、機首は下がらなかった。

55分01秒、機長は副操縦士に、フラップを下げられるかたずね、

副操縦士「はい、フラップマイナス10。」

フラップを出し、機体を水平に戻そうとした。

55分5秒、横田飛行場の管制官が、「日本語にて申し上げます。」と前置きして、東京アプローチから、「羽田と横田が緊急着陸準備を行っており、いつでも最優先で着陸できる。」と知らせ、航空機関士が、「はい、了解しました。」と返答、これが123便からの最後の交信となった。

その直後に、東京アプローチが、123便に対し、今後の意向をたずねたが、返答はなかった。その後も、56分前まで、東京アプローチとRAPCONが123便に対して、呼び出しを行ったが、応答はないままだった。

55分12秒、フラップを下げた途端、南西風にあおられて、機体は右にそれながら、急降下し始める。

55分15秒から、機長は機首上げを指示した。

55分43秒。

機長「フラップ止めな!!」

機長が叫ぶまで、フラップは最終的に25度まで下がり続けた。

機長「ああーー!!」

機長「フラップ、みんなでくっついてちゃダメだ。」

副操縦士「フラップ!フラップ!フラップ!」

副操縦士はすぐさまフラップを引き下げたが、さらに降下率が上がった。

この頃、高度は、一万ftを切っていた。

56分00秒、機長がパワーとフラップをあげるよう指示する。

航空機関士「上げてます。」

56分07秒には、機首が36度も下がり、ロール角も最大80度を超えた。

機長「頭上げろー。パワー。」

機長は最後まで指示し続けた。

クルーの必死の努力虚しく、JA8119機は降下し続け、56分14秒にGPWSが作動した。

56分17秒ごろには、わずかに機首を上げて、上昇し始めた。

『PULL UP』警告音とともに、

機長「あー、ダメだ!!」

ドーン

56分23秒に、右主翼と機体後部が樹木と接触し、衝撃で第四エンジンが脱落した。

この時、機首を上げるために、エンジン出力を上げたことと、急降下したことで、速度は345ktに達していた。

接触後、水切りのように一旦上昇したものの、機体は、大きく機首を下げ、右に70度傾いた。

56分26秒に、右主翼の先端が、稜線に激突し、衝撃で、右主翼の先端と水平尾翼、第一、第二、第三エンジンが脱落した。

56分28秒に、機体後部が分離した。

機体は、機首を下げながら、前のめりに反転してゆき、

18時56分30秒に、高天原山の斜面に、ほぼ裏返しの状態で衝突、墜落した。

57分、RAPCONが123便に対し、

「貴機は横田の35マイル地点におり、横田基地に最優先で着陸できる。」

そう呼びかけ、東京アプローチも123便に対して、横田基地に周波数を変更するよう求めたが、すでに123便は御巣鷹の尾根に墜落していた。

★乗客の様子、テロ(?)の様子などは構成お願いします。

三十八、緊急事態

東京航空局東京空港事務局は、123便の緊急事態発生を受けて、TokyoRCCを開設し、緊急着陸体制を整えた。

59分、東京管制部のレーダーから消失という事態となった。

嶺岡山レーダーサイト司令は、123便が墜落したと判断して、中部航空方隊司令部に、スクランブル待機中のF4EJファントムによる緊急発進を提案した。

19時01分、提案を了承した基地司令官の指示で、百里飛行場より、F4戦闘機が離陸した。

百里救難隊による、最初の救難捜索機や救難ヘリの出動は、航空自衛隊への東京空港事務所長からの、災害派遣要請が出される前に行われた。

03分、東京救難調整本部は、防衛庁、警察庁、消防庁、海上保安庁などの関係機関に通報し、123便の捜索にあたった。

一方、レーダー消失直後は、まだ同機が低空飛行を続けている可能性も残されていたため、管制や社内無線からの呼びかけも続けられた。

「ん・・・。」

後部座席にいた生存者が目を覚ました。

19時13分、時事通信が「東京発大阪行きの日航123便がレーダーから消えた」とのニュース速報を配信する。

墜落から20分後の19時15分。

米空軍のC130輸送機が、群馬・長野県境付近の山中に大きな火災を発見し、上空位置で、横田TACAN方位305度、距離34マイルを航空自衛隊中央救難調整所に通報した。

C130輸送機に搭乗していた元在日米軍中尉が、事故直後に、厚木基地のアメリカ海兵隊救難ヘリを、現場に誘導したが、救助開始寸前に中止を命じられた。

21分、百里基地を緊急発進したF4戦闘機の二機も、墜落現場の火災を発見し、上空位置での、横田タカン方位300度、距離32マイルを通報した。

陸上からは、群馬県警、埼玉県警、長野県警が墜落現場の捜索にあたった。

21分には、長野臼田署のパトカーが、「埼玉県と群馬県境あたりに、黒煙が見える」と通報した。

19時30分、陸上自衛隊の群馬、長野部隊が、出動態勢を整え、派遣要請を待っていた。

19時30分、各テレビ局が第一報を報じる。

鷹雄・秀・一郎は映画会社、慧ともも子は自宅、優斗は新聞会社で、墜落の事を知る。

三十九、残された乗客

光子は目を覚まし、伯母にふれるが、伯母は眠ったままだった。

光子も伯母によりかかり、眠ることにした。

生存者のスチュワーデスは前の席が後ろまで倒れており、足がはさまっていたが、なんとか這い出て、乗客の見回りをした。

生存者の親子は、涙ながらに生きている事を喜んだ。

そして、もう一名の生存者が、アンティーク太郎である、

太郎は立ち上がり、乗客たちの見回りをし、光子の下に来る。

太郎「お嬢ちゃん、生きていたんだね。よかったね。」

太郎は光子の手を取り言う。

光子「でも、おばちゃんが死んでしまったんです。」

太郎(アドリブ)

太郎、他の乗客を見て、「おい、もうダメか?(アドリブ)」

墜落から約一時間後の19時54分に、救難救助のため、見切り発進した百里基地救難隊KV107ヘリコプターは、20時42分に、現場上空に到着した。

しかし、KV107救難ヘリは、両側面のバブルウインドウ横に、救難用ライト四灯を装備して、夜間の救難作業は可能だったが、赤外線暗視装置などの、本格的な夜間救難装備がないことなどを理由に、事故当夜の救助活動が行われなかった。

「おーい、おーい!」

「こっち見てくれ!」

アンティーク太郎は大きな声でヘリコプターを呼んだ。

20時33分になって、救難調整本部、東京空港事務所長から、すでに現場に到着していた航空自衛隊へ、航空救難の要請が行われた。

在日米軍、航空自衛隊が把握した墜落現場の位置情報は正しい情報であったにもかかわらず、その情報が活かされる事は結局なかった。

事故機の遭難から約一時間四十分と、遅れて出された航空自衛隊への災害派遣要請の背景には、運輸省航空局東京空港事務所の、

「位置が確認できないことには、正式な出動要請はできん。」という幹部判断や、

運輸省から、

「レーダーが消えた地点を特定せよ。」と、何度も東京ACCに電話が入るなど、所管行政当局である運輸省、航空局隷下組織の地上での位置、地点特定に固執した混乱や、錯綜が窺われる。

21時30分、ついに、陸上自衛隊への、災害派遣要請が出される。

当時の東京消防庁航空隊には、サーチライトを搭載したアエロスパシアル製救助ヘリコプターが、二機配備されていた。

事故当夜は、関係省庁からの要請に備えて、いつでも出動できるように待機していたが、東京消防庁への出動要請はなかった。

のちに、運輸省、防衛庁、警察庁ともに、このヘリの存在を知らなかったことが明らかになる。

四十、救助

21時39分には、埼玉、長野両県警のパトカーが、三国峠の西北西に赤い煙を発見した。

十二日深夜までに、長野県警は、墜落現場は、群馬県側の山中であると発表した。

間違った情報のせいで、消防、警察、航空自衛隊の地上捜索部隊、陸上自衛隊は、十三日の朝までに、現場に到達することはできなかった。

海上では、乗客が機外に吸い出された可能性があることから、東京救難調整本部の通報を受けた海上保安庁の巡視艇三隻が、駿河湾周辺の捜索を行った。

太郎は朝日を見た。

乗客の遺体や、機体の残骸が散らばっている。

八月十三日午前四時三十分すぎ、航空自衛隊救難隊による墜落機体の発見。

午前五時十分、陸上自衛隊ヘリによる機体発見。

午前五時三十七分、長野県警ヘリによる墜落現場の確認。

群馬県上野村の黒沢丈夫村長は、テレビ報道の映像を見て、現場が村内の「スゲノ沢」であると判断し、土地鑑のある消防団員に、捜索隊の道案内をするよう要請した。

現場までは、熊笹の生い茂る、傾斜角30度の急斜面で、約二キロの道のりに、一時間三十分もかかる難路だった。

最初に現場へ到着したカメラマンは、『FLASH』(光文社)が、専属契約した大学生アルバイトだった。

八月十三日の朝の新聞一面は、この事故がトップとなったが、墜落地点の情報が、御座山など錯綜したまま、朝刊締切時間となり印刷され、「長野で墜落」や「長野・群馬県境付近で墜落」などの見出しになった。

墜落からおよそ十四時間後の八月十三日午前八時半、長野県警機動隊員二名が、ヘリコプターから、現場付近にラぺリング降下し、その後、陸上自衛隊第一空挺団が、現場に降下して、救難活動を開始した。

墜落時の猛烈な衝撃と火災によって、尾根およびその周辺で、発見された犠牲者の遺体の大半は、激しく損傷しており、また盛夏だったこともあり、遺体の腐敗の進行も早かった。

一方、奇跡的に尾根への激突を免れ、高天原山斜面を滑落していった機体後部は、衝撃も少なく、火災にも巻き込まれなかったため、谷間で発見された犠牲者は、骨折や出血こそあったものの、そのほとんどは生存しているのか、死亡しているのか、見た目では区別できないほどの完全な状態で発見された。

四十、発見

(光子救出の部分は構成お願いします。)

11時30分、『FNNニュースレポート11:30』で、墜落現場に到着した中継スタッフから、生存者発見の一報を受け、生存者救出映像を御巣鷹の尾根現場から唯一生放送し、独占スクープとなった。

光子救出の映像を見て、愕然とする鷹雄たち。もも子と慧夫妻。

(太郎発見の部分も構成お願いします。)

四十一、さまよう優斗

事故現場に新聞記者である優斗が急いでかけつけた。

呆然とする優斗のかたわらでは、テレビ局の人達と話すアンティーク太郎がいる。

優斗は事故現場を歩き回り、坂本九を探す。

優斗「九さん!!」

優斗はポケットからチケットを取り出す。

『上を向いて歩こう』

四十二、デパート

鷹雄は、児童保護施設に入った光子と久しぶりに歩いていた。

今ではもう恋心はない。

慧ともも子は、昔、慧が働いていたデパートに来ていた。

慧ともも子、鷹雄と光子は再会する。

あの事故以来、光子はもも子にとって、憧れの子供だった。

慧と鷹雄は変わっていく東京の街をデパートの窓から見ながら、いろいろな話をする。

光子は気になったおもちゃを手に取り、じっと見ている。

もも子が話しかける。

もも子「光子ちゃん、何しているの?」

光子「えっ。」

光子は息を飲み、おもちゃを棚に戻す。

光子「おばさんこそ、何してるの?」

光子は伏し目がちに勇気を出して言う。

光子が顔を上げた時、もうそこにもも子はいなかった。

光子はまた目を落とす。

もも子「光子ちゃん!」

光子「えっ。」

もも子「これ、光子ちゃんへのプレゼントよ。大変な事故だったけど、よく頑張ったわね。」

光子「ありがとう、おばさん。」

もも子「いいのよ。これからは・・・。」

「一緒に暮らしましょう。」

光子は、慧ともも子の娘になることになった。

四十三、終わり

2010年。ついに首相に就任した君久。

優斗はいろいろとあったが、今でも記事を書いている。

慧ともも子と光子と妹の写真を見て、微笑む鷹雄。

鷹雄と一郎と秀、英樹は、アメリカのアカデミー賞の舞台に呼ばれたので、記者会見を行っていた。

*坂本九「伝説なんて、死ななければ分からないよ?」*

鷹雄『そうかな?』

映画製作会社に入って行く鷹雄。

鷹雄「おはよう。」

スタッフたちが鷹雄に挨拶をする。

最後に秀と一郎が挨拶をする。

鷹雄「伝説は生きているから作れるのさ。」

鷹雄はまた映画を作り始めた。

終わり。

エンディングソング

『明日があるさ』


#Tokyo young story


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