クレイジー・ジーザス『無修正』

April 10, 2018

クレイジー・ジーザスⅠ

中国に住むパエル・リーは、作曲家を目指す27才の男である。

(この人のモデルは私です。)

 

「パエル、一体何年、同じことを続けるの。いい加減、働きなさい。」

「母さんごめん。いいメロディーがうかんでるんだ。話かけないでくれないか。」

 

夕食の時、父が言った。

「お前一体今いくつだ?親の金を食い荒らして。」

「ごめん。明日はバイトだから。」

「バイトねぇ‥近所のチムちゃんは三つ子を妊娠ですって。なんて羨ましいんでしょう。」

「母さん、僕は男だ。子供は妊娠できない。」

「妊娠はさせられるでしょう。」

「そうだな!」

両親は小突き合い、仲がよさそうに笑っている。

 

「でもなパエル。そのうち客もつくから。」

「うん。」

パエルは、曲をYouTubeにのせている。

 

「最近じゃ、小説も書き始めてるんだ。」

 

ご飯を食べ終え、パエルは現在執筆中の作品に取り掛かった。

書く場所は、改装した物置だ。現在、物置で生活している状態である。

執筆するための音楽を、Apple musicで探す。

 

いい曲は見つかったが、今日はなかなか書けない。

パエルは、ベッドに横になり、寝てしまった。

 

 

「こんばんは。」

「うわぁっ!!」

起きると、デスクの後ろに置いてある、1人用ソファーに男が座っていた。

 

「ええ?どちらさまですか?」

「私はスティーブ・ジョブズ。アップル社のCEOだ。」

パエルは一瞬言葉を失った。

 

「ちょちょちょ、出て行ってくださいよ!!困りますから。」

パエルは、不気味な男を物置から出した。

 

「ああ、気持ち悪い。大体スティーブジョブズって何年前に亡くなってるんだよ。」

パエルは執筆に取り掛かった。

 

コンコン

『まだいる?』 

パエルは恐る恐るドアを開けると、先ほどの男がまだ外にいた。

 

「出て行くわけにはいかない。君に、僕の伝記を書きなおしてほしいのだから。私はスティーブジョブズの幽霊です。」

「え‥?」

「ほら。」

スティーブジョブズを名乗る不気味な男は、透明な腕を見せた。

 

「あなたは幽霊?」

パエルは英語で聞いた。

「ああ。だから早く部屋の中にいれてくれ。」

「分かりました。」

 

 

「さぁ~。何から話そうか。」

1人がけソファーに座ったスティーブさんはうきうきしている。

「僕があなたの伝記を?」

「ああ。君と僕は、同じメロディーを作っていたんだ。正確に言えば僕の方が先だけど、僕はもう死んでいる。その曲は、君にあげるよ。」

「えっ、そんな。それは何の曲ですか?」

パエルは申し訳なさそうに聞いた。

 

「My heart beats only for you.」

「ええ。そうだったなんて。お返しします。」

「だから、もういいってぇ。俺はもう死んでるんだからさ。」

スティーブさんは笑った。

 

スティーブさんは手のひらをこすりながら話始めた。

「本題に戻ろう。まずは俺の相棒。

俺の相棒の名は、ステファン・ゲーリー・ウォズアニック。面白いと思わないか?

スティーブとゲイツ。どちらの名前も入っている。

ゲイツとは同じ年だ。ただ学年は違う。俺は早生まれだからな。

俺は、シリア人とアメリカ人が大学の時、作り、捨てられた子供だ。

育ての父と母は、他人行儀だったが、良い人達だった。

ジョブズという名字も気にいっている。

育ての父と母は、大学を出ていない。

君の親もそうだろう?」

「はい。そうです。」

パエルの父親は漁師、母親は市場で働いている。

 

「だから君を気にいったんだ。大学で講演をする時はいつも気をつかったよ。大学生は高慢で気が荒い。たった一言で、何をしでかすか分からないからな。」

スティーブが言い、パエルはうなずいた。

 

夜は風が強く、小屋はガタガタなった。

スティーブが28才の頃には大金を稼いでいたが、仲間のために使ってはならないお金だった。

スティーブは、普通の小僧が住むよりかは広いが、風がピューピュー吹き込むようなアパートに住んでいた。

家を出たのは午後2時だった。

その時、木の下で、22才くらいの男が頭から血を流し、目を開けたまま座り、スティーブを見ていた。

それは10月のことだ。薄着のスティーブには、風は少しだけ冷たい。

 

『どうせ、大学生のいたずらだ。』

スティーブはチェックのシャツの襟をあごまで持ち上げ、足早に立ち去った。

使っていけないお金だが、スティーブは富豪番付にも出ている。

大学を中退しているスティーブのことを、悪く思っている大学生や大卒者もいたのだ。

 

会社につくと、ウォズが聞いた。

「スティーブ。顔色が悪いぞ。どうした?」

「どうもこうも。大学生のいたずらだよ。」

「何が?まさか、俺達の物が盗まれたとか?」

「違うよ。男が、こう。アパートの前でね。」

スティーブがさきほどの男のマネをすると、ウォズは顔をしかめた。

「それ、本当に死んでたんじゃないの?」

「いや、ないね。そんなの。ありえない。」

スティーブはアゴをさわった。

スティーブは、白い布をかけられた、お葬式の死体しか見たことはない。

 

その日の仕事は好調だった。

温かいビールのような酒で乾杯した後、2人は別れた。

 

夜10時。

アパートに戻ると、まだあの男が木の下にいた。

 

スティーブは眉間にしわをよせ部屋に入ったが、風が部屋をたたくように吹いた。

スティーブは部屋を出て、その男の下にかけより、脈を確認しながら、警察に連絡した。

『では、救急車は?』

「いや、その必要はない。もう亡くなっている。」

すぐにパトカーがきて、事情聴取をされた。

 

「発見したのは何時頃ですか?」

「午後二時です。」

「午後二時?それまで何をしていたんです?」

「仕事です。すみません。大学生のいたずらかと思ったものですから。」

スティーブは泣いた。

 

次の日は晴れて、春のような天気だった。

何人かの大学生が花束を持って訪れた。

殺されたのは22才の大学生だ。

 

大学生のお遊びだった。

スティーブが暮らす地域では、みんな仕事に打ち込んでいたので、実際のところ、大卒でも社会人達は、あまりスティーブに嫉妬していなかった。

 

銃で撃たれ、即死。

頭を撃つと、血が飛び散る場合もあるが、そんなに血が出なかったようだ。

 

「ホリィ。そこに行って、手をあげて。」

好きな女の子に言われたので、ホリィは言われた通りにした。

「練習の成果、見せてよ。」

大学生集団はクスクス笑った。

大学生集団の1人が撃つと、男は座り込むように死んだ。

みんな笑って逃げた。

死亡推定時刻は午前10時。

まだスティーブは熟睡していた。

 

アパートの人達もみんな、いたずらだと思ったようだ。

大学生達は、夜、スティーブのアパートの前で逮捕された。

女の子達もみんなだ。

それはとても恐ろしい光景だった。

 

パエルがスティーブが先ほど言ったことをパソコンに打ち込んでいる間、スティーブはそのことを思い出し、呆然としていた。

 

「スティーブさん。それで、あなたの奥さんの名前は?」

「え?」

「奥さんの名前ですよ。」

「妻はいない。」

パエルは疑いの目でニヤリと笑い、首をかしげた。

「そうですか。」

 

「神父ということにしたかったが、社会の中でそういうわけにはいかなかった‥。」

「そうだったんですか。」

 

『ケンの言う通り。ぜーんぶ。』

「え?」

「ケンは実にくだらない男だ。」

 

「アイザックか誰かが入れてしまった人だよ。でも雇っていたのは俺だからね。」

スティーブはケンのことを少し思い出した。

「金にとらわれ、自分の人生を失った愚かなヤツだ。みんなで言って聞かせて解雇したよ。」

 

それでもケンは死ななかった。

スティーブより後に死んだのは驚きだった。

きっと2億円くらい持ち逃げしたせいだ。

 

「強い者にしがみつくのは、弱い者の悪い癖だ。」

パエルはうなずきながら、その言葉をパソコンに打ち込んだ。

 

「君は、恋をしたことがあるか。」

スティーブさんはうっとりしながら聞いた。

「一応‥。」

「そうか。」

 

スティーブとウォズさんは、まるで兄弟のように仲が良かった。

乾杯をする時も、お互いの腕をクロスさせて飲んだし、ウォズが素敵な発明をすると、頬にキスした後、口にキスをした。

「ちょっと、やめろよぉ。」

ウォズは口を拭き、2人は発明の作業を続けた。

 

「ウォズ、どうしてそんなに知っているんだ?」

「うーん。昔から知っていたような感じなんだ。もしかしたら、誰かが、見せてくれたのかもしれない。」

「そうか。君はきっと神の生まれ変わりだ。」

 

そのうちにウォズはギックリ腰になる。

「痛い。」

「どうした。」

「ダメだ‥。」

ウォズは動けなくなってしまう。気づいた時には、病院のベッドの上だった。

「先生、こいつは、悪い病気じゃないですか。」

「いや‥多分‥ギックリ腰です。」

 

「な訳ないでしょう!!しっかり調べてくださいよ!!」

スティーブはツバを飛ばしながら医者に怒鳴った。

 

「すみません‥。」

「先生いいから、俺のことなんて。もっと‥重病人を‥うっ‥。」

「ウォズ、大丈夫か。」

やはりウォズはギックリ腰だった。

すぐに退院できたが、ガレージでは休み休み仕事していた。

 

そのうちに2人はまともな顔で、本社に行くようになる。

ロンが可愛がっていた男ステファンが、会社の金20億を横領したのだ。

考えてみればステファンは金の指輪をつけたりしていたし、近頃様子がおかしかった。

銀行の女性から電話がきたのだ。

 

ステファンは警察に捕まった。

でもスティーブやウォズが言ったわけではない。

銀行の女性は会社まで来て言った。

「いい気味ですね。」

相当嫌なことがあったようだ。

 

「‥でも、返してくれれば、警察になんか行かなくてよかったよな。」

「これ、かもな。」

スティーブは小指を見せた。

「ああ。」

 

しばらくしてまた2人はガレージに戻った。

本社には今や大勢の社員がいたので、2人が何かすればみんな見に来る。

ガレージはずっと秘密の場所だった。

なんとiPhoneもそこで試作した。

 

アップルはもう、2人の会社ではなかった。

強めな口調で社員をクビにするスティーブは印象的であるが、実際にはそうではない。

スティーブとウォズは自分達で物を開発し、会社を立ち上げた。

会社員でいても、何もならないことがあるのだ。

「何かを開発したい。」

と言っても、それは自分達の会社でさせられることではなかった。

 

 

そしてウォズは、自分が会社を辞めることにする。

ウォズは下を向き、涙をふきながら、ガレージで打ち明けた。

そこにはロイもいた。

「俺さ、会社やめる。」

「どうして?クッキーが会社を辞めたのは当然なんだぞ。」

「そうだけどぉ‥。俺達は運がよかった。みんなは俺達みたいに出来ないから。」

 

「ウォズ、仕事を辞めたら、君は何をするんだい?」

ロイはしゃがんで、ウォズの手を握りながら聞いた。

「何もしない。」

 

「何もしない?それじゃ死人だぞ。」

 

「‥大学に行く。」

ウォズは本当に大学に行った。

仮名だったので、何も知らない若い学生と仲良くしたり、ピザ屋でアルバイトしたりして楽しかった。

ちなみにピザ屋の店長が使っていたコンピューターは、アップルの物ではない。

それをいじったりしていると、店長に自分がウォズアニックだということがバレてしまう。

店長は恐縮したが、勇気をもらい、食品組合のボスにまで登りつめた。

 

会社を強くすること。経営者にとって、自分を強くすることと同じだ。

足を引っ張るのは、従業員たち‥。

『人を雇う』それは経営者にとって、とても重要な約束である。

だから、足を引っ張る従業員も大切にいけない。

しかし、足を引っ張る従業員は、経営者達以外全員である。

 

「そんなに頑張らなくても。」

経営者の一人は言った。

従業員の面倒を見ながら、強くなることに疲れていたのだ。

 

『ふーん‥。』

スティーブはもともと、聖人みたいな存在になりたかった。

それが今では経営者だ。

 

とりあえず、いったん、会社から離れることにした。

離れるといっても、完全に辞めるわけではない。

変な経営者のエムはスティーブを悪者にしたが、自分は神として、子を見守るような感じだった。

 

スティーブはもともと髪が豊かな方だったが、いろいろな苦しみを経験して、少し髪が薄くなった。

というか、薄くした。脱毛剤を塗ったりして‥。

みんな、自分が作った会社に人生を捧げてくれている。

そして、禿げたり、白髪になったり‥。

脱毛したのは、そういうわけだ。

 

 

クレイジー・ジーザスⅡ

スティーブは、ルーカスフィルムのアニメーション部門を買収し、ピクサーを設立した。

なぜならルーカスフィルムが、自分達のような開発者が作ったもので、仕事をしていたからである。

才能が溢れているルーカスフィルムが、おかしなコンピューター会社に脅かされる前に、スティーブは自分が手をつけることにした。

 

「ビルからは話はきているか?」

スティーブは、エドに聞いた。

「ブル?」

「ビルだ。」

「どのビル‥ですか?」

 

「あぁ‥。」

スティーブは、頭をさわりながら少し笑った。

「マイクロソフだよ。」

「マイクロソフ?聞いたことありません。」

 

スティーブは、声を出して笑った。

「そうか。では俺が買収する、いいな?」

「はい。問題は、ないと思います。社員の雇用が守られれば。」

エドは言った。

ルーカスフィルムでは、本当に才能が溢れている人材を扱っていた。

悪い組織で、天才達が悪用されることを恐れていたのだ。

エドは映画を作っているので、現実離れして物事を考える癖があった。

 

エドは首をかしげながら、白い邸宅に戻った。

実際には白い邸宅ではなく、少しさびれたお家だ。

本当に現実離れしているので、エドにはその家が、白い邸宅に見えていた。

 

マイクロソフについて調べると、まずは白いソフトクリームの写真が出てきたが、すぐ下に、マイクロソフトとビルゲイツの写真が出てきた。

 

「なんと、ビルの方が格上ではないか。」

エドは、スティーブがいない、会社での紙コップパーティーの席でみんなに言うと、みんな笑った。

「まぁいい。スティーブはアップルを作った男だ。ヤツに船をたくそう。」

みんな乾杯した。

 

ピクサーはディズニーと提携した。

スティーブは、ウォルトディズニーほど、絵はうまくなかったが、なかなか絵のセンスもよかった。

スティーブが書いた男を、ディズニー社の幹部が気に入り、ポカホンタスのジョンスミスとして起用することとなる。

 

ピクサーはトイストーリーの制作をしていたが、スティーブはポカホンタスの制作に携わることとなった。

 

1995年、2つの映画が公開される。

肩の荷が降りたスティーブは、アップルに戻ることとなる。

 

中年社員は、アップルに感動してアップルのために働きたいと、入ってきてくれている人ばかりだったのでスティーブは安心したが、若い従業員はみんな、「革命を起こしたい。」と言った。

 

スティーブは、全従業員を集めて言った。

「いいか、俺の会社だ。革命を起こすのは、俺なんだ。」

中年従業員や、オバサン従業員は真剣な顔でうなずいたが、若い者達は怪訝な顔をした。

「その方針に従えないなら、辞めてもらう。」

それで、かなりの若い従業員達が辞めてくれた。

 

残ったハンサム青年達を少しいじめてみたが、辞めなかった。

何年かして辞めた人もいたが、政治機関の偉い人になった。

 

 

パエルは寝てしまっていた。

暗い部屋で、青白い手がパエルに布団をかけた。

 

パエルはスティーブの夢を見た。

 

スティーブは夕焼けの草原に立ち、音楽を聞いている。

 

「スティーブさん?」

振り向いたスティーブは、少し泣いているようだ。

 

スティーブは、ズボンとシャツの間に挟んでいた黒いCDプレイヤーを手に持った。

 

「どうしたら1000曲持ち歩ける?」

沈む太陽をバックに、スティーブはパエルの方に歩いてきた。

 

風が吹き、夢でスティーブの世界にきているパエルの体は、下からかすれて消えてゆく。

 

「スティーブさん、これを。」

パエルは持っていたiPodを手渡し、黒髪が豊かな美しいスティーブの顔を見て消えた。

 

実際スティーブは、iPodによく似たプラスチックのおもちゃを拾い、それを元にiPodを開発した。スティーブひとりでは開発できない。ウォズやロンの力も借りた。

 

スティーブは元々、3Ⅾのものが浮かび上がるアイウォッチを開発したかったが、ウォズが止めた。

「ん~‥まずは、タブレットだろ。」

「そうか。」

ロンもうなずいていたので、スティーブは了承した。

 

「大体‥そんなものが存在したら、ちょっと怖い。世の中はSFの世界になるのか?」

ウォズが言い、スティーブは下を向いた。

「スティーブどうした?」

ロンも聞いた。

 

「311は怖い。」

「は?!なんだ、それ。311なんてないだろう?911しか知らないよ、俺は!!」

なんとスティーブは311を予知し、少しおかしくなってしまっていた。

でも、3Ⅾが浮かび上がるアイウォッチを死ぬまで夢見ていた。

 

iPhoneは売り出した途端、当初の目標金額を達成する。

 

「よかったな。」

最近のウォズとスティーブのお気に入りの酒は、冷たくて、甘くて苦い炭酸の酒だ。

「あ、久しぶりに、あれやろうよ。」

ウォズが言い、スティーブとウォズは肘をクロスさせて乾杯した。

 

「なんか、元気なくないか?」

ウォズは聞いた。スティーブは311のことを気にしていた。

 

 

「ウォズ、俺は数年のうちに死ぬだろう。」

スティーブは言った。スティーブとウォズは温泉に入っている。

「どうして?」

「もう、戻れないんだよ。俺は年をとった。」

「誰だって年をとる。ほら、俺のひげだって、白髪交じりだ。」

 

それは夢の中の出来事だったが、夜、早くにベッドに入っているウォズの下に、スティーブから電話がきた。2010年のことだ。

 

リンリンリーン

「はい?」

「ウォズか。」

「そうだよ。アドレス帳からかけているんだろう!!」

「そんなにキーキー言わないでくれ。」

 

ウォズはため息をついた。

「どうした?」

「俺はもうすぐ死ぬ。」

「そんなこと言うなよ。縁起でもない。」

「いや多分もうすぐなんだ。」

「え‥。そうなの?」

「ごめん。」

「いや、スティーブが謝ることじゃないよ。」

 

「俺は思うが、ウォズ、君は愛されている。」

「あ‥うん‥。」

「しかし、君の命を狙う奴もいる。だから気をつけた方がいい。」

「わかった。」

 

スティーブは日本を行き来した。

銀座のアップル店では、少しパニックになってしまった。

311の夢のせいだ。

 

「社長、iPhoneは世界一の商品です。」

若い日本の従業員が言った。

スティーブは上の空で棚を見ていた。

 

「Great.」

「はい!iPhoneは本当にすごいです。」

 

「しかし、グレイシャスじゃない。」

「はい‥?」

「もっと、人の命を救えるものが必要なんだ。例えば、数年先の未来を予知できるような。」

「え‥。」

日本の従業員達はスティーブを尊敬していたので、うっとりとした感じで、赤い顔のスティーブを見た。

 

2011年3月8日。

スティーブは日本に降り立った。

日本のアップル社に顔を出し、渋谷の街をふらふらと歩いた。

 

「どこだ!!どこ起こる!!」

一人の男の肩をゆらした。

その人はEXILEのタカヒロだった。隣にいた、嵐の相葉君が聞いた。

「ちょ、ちょっと待ってください。何がですか?」

「311だよ!!」                           

 

「え‥。」

「311‥?」

 

「すみません。僕達、何も知らなくて。」

「いや、こちらこそすまなかった。」

スティーブは背中を向けた。

 

3月11日の地震の時、スティーブは表参道のカフェにいた。

「あああ‥。」

スティーブはガタガタと震えるテーブルを手でおさえた。

『ついに。』

 

カラス達が大きな声で鳴いている。

 

夕方5時。

若者達がアップルのパソコンで津波の映像を見ていた。

そして、アップル社からスティーブの安否確認の電話が来た。

 

スティーブは津波に飲まれる夢を見た。

 

アメリカに戻り、小学校での講演の際、その時のことを思い出して、スティーブは教壇をガタガタと鳴らしてしまった。

小学生達は不思議にそうに、スティーブを見た。

 

リンリンリーン

「スティーブ。」

「やぁ、ウォズか。」

「どうした?」

「何度か言ったと思うが、俺はもうすぐ死ぬ。」

「うん。」

 

「地球が、ずっと青いままか心配だが、人を養うことがどれほど大変か分かった人生だった。」

「確かに。俺達は、世界のために仕事をしたけど、地球のための仕事はあまりしなかったからな。」

「そうだ。地球の逆襲は恐ろしい。」

 

「‥スティーブ、聞いていいか。」

「うん。」

 

2人は電話していたが、オーロラを見ながら並んで会話をしている感覚になった。

 

「311の日、日本にいたって本当?」

「うん。」

「まさか、東北に?」

「いや違う。東京だよ。」

「そうなんだ。大変だったんだな。」

「うん。」

 

その後もウォズとスティーブは会い、アップルの製品の試作をした。

 

スティーブは死ぬ数週間前から、またウォズに、死の予告電話をかけるようになる。

 

リンリンリーン

「はい?」

「やあ、俺だ。」

「電話がなると安心するよ。」

「うん。でも、もう死ぬ。」

「わかった。また電話してくれ。」

 

それから一週間、スティーブからの電話がなかった。

心配したウォズは、ロンを誘い、スティーブの家に行く。

スティーブの家は二階建てだが、ほとんど平屋のような感じで、とても革新的でお洒落な家だった。

 

ロンはスティーブの家の合鍵を持っていた。

孤独死の時のために、渡されていたのだ。

 

「スティーブ?」

2人は部屋に入った。

すると、豊かな黒髪で、若く戻ったスティーブが雑誌を読んでいた。

 

「誰?」

「俺だよ。スティーブ・ジョブズ。」

「え?だって、前と、全く見た目が違うから。」

「前と同じだよ。」

スティーブは手の傷を見せ、3人しか知らない製品の名前と、改善点を言った。

「本当にスティーブなの?」

「うん。」

 

3人は、スティーブ・ジョブズは亡くなったことにした。

役所の男は、物分かりの良い者だった。

スティーブはケインと名を変え、ガソリンスタンドでの仕事に励んでいる。

 

 

「じゃあ、あなたは、幽霊じゃなくて本物?」

夢から目覚めたパエルは部屋を見渡したが、もうそこに、スティーブさんの姿はなかった。

 

パエルは肉まん屋でのバイトの後、執筆にするために家に急いだ。

スーツケースを持った黒髪の男がいる。

 

「嘘。」

 

「もしかしてスティーブさん?」

男は少し迷惑そうに振り向いた。

 

「ノー。」

「そうですか‥。すみません。」

パエルは男を見上げて言ったが、背を向けて走り出し、ニヤリと笑った。

 

物置の部屋でパソコンに向かう。

「タイトル‥クレイジー・ジーザス。」

 

パエルは打ち始めた。

書いた内容は、この物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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