多久さんの事件簿 【霧ヶ峰に温泉旅行編⑧】10

February 18, 2018

多久さんの事件簿【霧ヶ峰に温泉旅行編⑧】10

ニーヤが逃げる途中、蹴った白い骨は、不思議な感じで飛び、夜空の中に、星になる感じで消えた。

それは、宮野神雅の姪、宮野メルの骨である。

宮野メルは、水原ウエルという芸名で、乃中46というグループでアイドルをしていた。

アラツとも、二度ほど共演した。

「ニーヤさんの大ファン。」

メルはニコニコと笑った。

共演しても、写真を撮ってはいけない決まりだった。

もちろん、本名でSNSをやってもいけない。

 

でもみんなやっていた。

 

メル達は、あまり仕事がない。

撮影は週に1回か2回だ。

でも、バイトはしてはいけない決まりなので、ダンスの練習に集中できた。

週4くらいでダンス練がある。

居残りになると、1時間5000円もレッスン料金がとられるが、センターの子はダンスが下手で、毎回居残りだった。

 

オカマ風の男性ダンサーとヤッテいると、センターのユリナは噂されていた。ちなみに、事務所のおばさんともヤッテいるらしい。

 

先生のDVDは、1万円もする。

でもみんな買った。

 

「貧乏性があると、やっていけないからね。」

いい女風のダンスの先生は言った。

メルから見れば、その人のダンスは下手だった。

ダンスの最中、手を叩くくせがある。

それはいけないことだった。

 

「サルみたい。うるせぇ。」

イケメンダンサーのエルを呼んだ時、エルは小声で言った。

 

「先生、それダメだよ。」

みんなに聞こえていたが、エルは小声で注意した。

「うん‥。」

 

乃中46のアイドル達は、いい女風の先生、小川先生が恥ずかしくなるのを心配そうに見たが、そのレッスンの後、エルと小川先生は、2人で食事に行った。

 

所詮、エルもクスリをやっているので、よく分からない男だった。

もちろん、業界人が全員やっているわけではない。本当に一部の奴らだ。

 

エルと小川先生は、ペアでレッスンをした。

エルは笑い、小川先生の頬をつねると、小川先生はマジでキレたりした。

 

「これ飲むとさ、よく動けるらしいよ。」

「え‥。」

マユサは、メル達にクスリを渡した。

 

「これ大丈夫?麻薬じゃない?」

「ちがう。神経を高めるもの。だって、佑樹ヤマ選手だって、飲んでるんだよ。」

「ふーん。」

「あ、10錠で3000円ね。」

「は?1錠300円?」

「大丈夫、安いって。」

「まずは1錠飲んでみ。お金はそれからでいいから。」

マユサとエリカは笑った。

 

2人は22才と嘘をついているが、もう28才だ。

佑樹ヤマがクスリを飲んでいるのは嘘だ。

ドーピング検査は厳しい。

クスリをやっていない強い人を見れば、ヤマは感動する。

『落としたい』と、思わなかったからこそ、世界大会に沢山呼ばれた。

でもスポーツの世界では、ドーピングはよくある。

マスコミを黙らせるために、何千万も必要になる。

 

 

「うえええ!!」

メルは家で吐いた。

メルだけでなく、みんな家で泣いたり、吐いたり、変な男と会ったりしていた。

 

メル達の家は、事務所の近くにあるアパートだ。

女しか住んでいないから退屈だ。

 

28才のマユサとエリカは、お洒落な男と鍋パをしたりしている。

 

大人だなと、23才のメルは思ったが、エリカが、不良もどきのマジで冴えない男を連れ込んでいるのを目撃してしまった。

マユサは、お洒落な男と付き合っていた。

 

もちろん事務所には内緒ではあるが、事務所の人達は、乃中46の稼ぎで、贅沢な暮らしができたから、何も言わなかった。

 

乃中46には、オーディションがあった。

「そんなに来ないよな。」

プロデューサーの小畠(こばたけ)と飽本康は話したが、本当に多くの女の子達が来てしまった。

最初からメンバーは決まっていた。

山賊をやっている家の親戚の女の子達だ。

 

小畠と飽本康は、山賊が人を燃やすのを見るのがすきだった。

 

お洒落な仕事をしている自分達の御褒美と呼んだ。

 

その日の祭り(人を燃やす会)には、メルや、他の乃中46のメンバーが参加した。

悪い事をしているとは思わなかった。

お葬式だと聞いていたからだ。

「不思議だね。」

 

みんなが歌を歌いだした。

小畠が作った歌だ。

「ふーん。」

メル達は、なんとなく口ずさんだ。

 

「ねえ、メルは、この会、初めて?」

「うん‥。」

星はきらきら光っている。

メルは、芸能人になったはずなのに、星だと思える人は沢山いた。

 

「あっ、燃やされるよ。」

 

きゃー

山賊の女性達は叫んだ。

ああー

男達は雄たけびをあげている。

 

直前の儀式で、伯父の宮野神雅が水をかけたが、それは灯油だったので、亡くなった男は見る見るうちに炎につつまれた。

ちなみに、伯父はすごい人すぎて近づけないと、親に言われていた。

「ホントにもう、雲の上の存在。」

母親は言った。

 

「ああ‥。」

メルは声をもらした。

真っ赤な炎で見えないはずだったが、人体模型のような姿になった男が目をこちらに見えているのが、メルには、はっきりと見えた。

 

隣の子は泣いている。

 

そのうちに消火した。

中の男は、真っ黒になって横たわっている。

 

ああ~

山賊達は悲しみ混じりの歓声をあげた。

 

みんな歌を歌った。

メルは小畠とキスをした。

 

「おえ。」

隣の子が言った。

 

「いいよ。」

メルは星空を見上げた。

 

「あの、私、ちょっと行ってくる。」

「うん。洗え。」

「あはは、いいよ。」

 

メルは、星になりたいと思った。

小畠は、スゴイ人達とつるんでいると言ったが、

この人は違うと思った。

 

メルは、行ってはいけない場所を降りて行った。

気づいた時には、熊に喰われていた。

 

メルは、骨の髄まで、熊に喰われた。

 

「帰るよ。」

山賊の中年女が、メルと一緒に来ていた、ヒマに言った。

 

「うん。今何時?」

「2時。夜のね。って、見れば分かるか。スマホ持ってないの?」

「えっ、だって持ってきちゃいけなかったから。」

「そっか。‥メルちゃんは?」

「いないよ。田舎に先に帰ったから。」

「田舎?ここも田舎だと思うけど。」

中年女は首をかしげた。

 

ヒマは、眠気でぼーっとしていた。

 

次のレッスンで、メルはいなかったが、ヒマは気にしなかった。

家に帰り、自分達がしたことが間違いだったと気づいたのだ。

罪を誰かと共有したくなかった。

 

メルが消えたことを、山賊の男が、神雅に伝えたが、神雅は遠い目をした。

どこかに男と逃げたと思ったのだ。

「うぃ。」

神雅は言った。

「うぃ?」

山賊の男は首をかしげた。

 

「サンちゃん、神雅さん、なんだって?」

中年女のみつきは聞いた。

「うぃ、だって。」

「何それ。どうしちゃったの。」

みつきは笑った。

 

ニーヤは深夜、蒔田さんの家の玄関先で、靴をパンパン払った。

「あっ、すみません。」

「いや、ここらへん、誰も住んでないから、いいよ。」

 

靴からは、メルの骨の粉が落ちたが、きらりと消えた。

 

「警察、夜中から、ヘリで捜索するって。」

「そうですか。」

ニーヤは険しい表情になった。

 

かぐちゃんとオーヤン君は、冬の星空を見ていたが、たき火の近くにいるので、あまり寒くなかった。

 

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