クレイジー・ジーザス『修正後』

April 11, 2018

クレイジー・ジーザス

中国に住むパエル・リーは、小説家を目指す27才の男である。

 

「パエル、一体何年、同じことを続けるの。いい加減、働きなさい。」

 

夕食の時、父が言った。

「お前、今いくつだ?親の金を食い荒らして。」

「ごめん。明日はバイトだから。」

「バイトねぇ‥近所のチムちゃんは、三つ子を妊娠ですって。なんて羨ましいんでしょう。」

「母さん、僕は男だ。子供は妊娠できない。」

「妊娠はさせられるでしょう。」

「そうだな!」

両親はこづき合い、仲がよさそうに笑っている。

 

ご飯を食べ終え、パエルは、現在執筆中の作品に取り掛かった。

書く場所は、改装した物置だ。現在、物置で生活している状態である。

執筆をするための音楽を、Apple musicで探す。

 

いい曲は見つかったが、今日はなかなか書けない。

パエルは、ベッドに横になり、寝てしまった。

 

 

「こんばんは。」

「うわぁっ!!」

起きると、椅子に男が座っていた。

 

「どちらさまですか?」

「私の名前は、スティーブ・ジョブズ。アップル社のCEOだ。」

パエルは、一瞬言葉を失った。

 

「ちょちょ、出て行ってくださいよ!!困りますから。」

パエルは、不気味な男を物置から出した。

 

「ああ、気持ち悪い。大体、スティーブジョブズって、一体何年前に亡くなってるんだよ。」

パエルは、執筆に取り掛かった。

 

コンコン

『まだいる?』 

パエルが恐る恐るドアを開けると、先ほどの男がまだ外にいた。

 

「出て行くわけにはいかない。君に、僕の伝記を書きなおしてほしいのだから。私は、スティーブジョブズの幽霊です。」

「ええ?」

「ほら。」

スティーブジョブズを名乗る不気味な男は、透明な腕を見せた。

 

「あなたは幽霊?」

パエルは、英語で聞いた。

「ああ。だから早く、部屋の中にいれてくれ。」

「分かりました。」

 

 

「さぁ~。何から話そうか。」

スティーブさんは、うきうきしている。

 

「僕があなたの伝記を?」

 

「ああ。幽霊になると、いろいろな物が見える。パエル、君の小説を気に入っているんだ。」

 

「そうだったんですか‥。」

 

「パエル、私の伝記を書いてくれるか?」

「はい。やってみます。」

 

 

スティーブは、相棒のウォズと、まるで恋人のように仲が良かった。

乾杯をする時も、お互いの腕をクロスさせて飲んだ。

 

「ウォズ、どうしてそんなに知っているんだ?」

「昔から知っていたような感じなんだ。もしかしたら、誰かが見せてくれたのかもしれない。」

「そうか。きっと君は、神の生まれ変わりだ。」

 

そのうちに、2人は、アップルという会社を作った。

 

しばらくして、また2人は、ガレージに戻った。

会社は大きくなり、大勢の社員がいたので、2人が何かすれば、みんな見に来る。

ガレージは、秘密の場所だった。

 

アップルはもう、2人の会社ではなくなったのだ。

 

スティーブとウォズは、自分達で物を開発し、会社を立ち上げた。

会社員でいても、何もならないことがあるのだ。

「何かを開発したい。」

と言っても、それは、自分達の会社でさせられることではなかった。

 

 

そしてウォズは、自分が会社を辞めることにする。

ウォズは下を向き、涙をふきながら、ガレージで打ち明けた。

そこにはロイもいた。

「俺、会社やめる。」

「どうして?クッキーが会社を辞めたのは当然なんだぞ。」

「そうだけどぉ‥。俺達は運がよかった。みんなは、俺達みたいに出来ないから。」

 

「ウォズ、仕事を辞めたら、君は何をするんだい?」

ロイは聞いた。

「何もしない。」

 

「何もしない?それじゃ死人だぞ。」

 

「‥大学に行く。」

ウォズは、本当に大学に行った。

仮名だったので、何も知らない若い学生と仲良くしたり、アルバイトしたりして楽しかった。

 

会社を強くすること。経営者にとって、自分を強くすることと同じだ。

足を引っ張る、従業員たち‥。

人を雇うこと。それは経営者にとって、とても大事な約束である。

「そんなに頑張らなくても。」

経営者の一人は言った。

強くなることに疲れていたのだ。

 

『ふーん‥。』

スティーブはもともと、聖人みたいな存在になりたかった。

それが今では経営者だ。

 

とりあえず、いったん、会社から離れることにした。

離れるといっても、完全に辞めるわけではない。

 

スティーブは、もともと髪が豊かな方だったが、いろいろな苦しみを経験して、少し髪が薄くなった。

 

 

スティーブは、ルーカスフィルムのアニメーション部門を買収し、ピクサーを設立した。

 

「ビルからは、話はきているか?」

スティーブは、エドに聞いた。

「ブル?」

「ビルだ。」

「どのビルですか?」

 

「あぁ‥。」

スティーブは、頭をさわりながら少し笑った。

 

「そうか。では、俺が買収する。いいな?」

「はい。問題ありません。」

エドは言った。

 

ピクサーはディズニーと提携した。

ピクサーは、トイストーリーの制作をし、スティーブも関わった。

 

そして1995年。トイストーリーが公開される。

肩の荷が降りたスティーブは、アップルに戻ることになった。

 

一部の従業員達は、「革命を起こしたい。」と言った。

 

スティーブは、全従業員を集めて言った。

「いいか、俺の会社だ。革命を起こすのは、俺なんだ。」

中堅従業員や、オバサン従業員達は、真剣な顔でうなずいたが、それ以外の従業員達は怪訝な顔をした。

「その方針に従えないなら、辞めてもらう。」

それで、かなりの従業員達が辞めてくれた。

 

 

パエルは寝てしまっていた。

暗い部屋で、青白い手が、パエルに布団をかけた。

 

パエルは、スティーブの夢を見た。

 

スティーブは、夕焼けの草原に立ち、音楽を聞いている。

 

「スティーブさん?」

振り向いたスティーブは、少し泣いているようだ。

 

スティーブは、ズボンとシャツの間に挟んでいた、黒いCDプレイヤーを手に持った。

 

「どうしたら1000曲持ち歩ける?」

沈む太陽をバックに、スティーブはパエルの方に歩いてきた。

 

風が吹き、夢でスティーブの世界にきているパエルの体は、下からかすれて消えてゆく。

 

「スティーブさん、これを。」

パエルは持っていたiPodを手渡し、黒髪が豊かな美しいスティーブの顔を見て消えた。

 

スティーブは、iPodを開発し、発売した。

 

「次は、iPhone。」

「そうだな。」

 

iPhoneは売り出した途端、当初の目標金額を達成する。

 

「よかったな。」

最近の、ウォズとスティーブのお気に入りの酒は、甘くて苦い酒だ。

「久しぶりに、あれやろうぜ。」

2人は、腕をクロスして飲んだ。

 

 

夜、早くにベッドに入っているウォズの下に、スティーブから電話がきた。2011年のことだ。

 

リンリンリーン

「はい?」

「ウォズか。」

「そうだよ。アドレス帳からかけているんだろう!!」

「そんなにキーキー言わないでくれ。」

 

ウォズはため息をついた。

「どうした?」

「俺はもうすぐ死ぬ。」

「そうなの?」

「ごめん。」

「いや、スティーブが謝ることじゃないよ。」

 

「俺は思うが、ウォズ、君は愛されている。」

「うん‥。」

「しかし、君の命を狙う奴もいる。だから、気をつけた方がいい。」

「わかった。」

 

スティーブとウォズは、その後も仕事場で会ったが、スティーブはそっけなくしていた。

「どうした?スティーブ。」

「311のせいだ。」

 

ウォズは、スティーブを見つめた。

「君が気にすることじゃないよ。」

 

スティーブは黙って、窓から外を見つめた。

「iPhoneでは、未来は予測できない。」

 

「そうだよな。でも、天気予報なら見られるぞ。」

ウォズが言っても、スティーブはうつむいている。

 

「スティーブ。未来なんて、誰も予測できない。」

 

 

リンリンリーン

「スティーブ。」

「やぁ、ウォズか。」

「どうした?」

「何度も言ったと思うが、俺はもうすぐ死ぬ。」

「うん。」

 

「地球が、これから先も、青いままか心配だが、社員を雇うことが、どれほど大変か分かった人生だった。」

「確かに。俺達は、世界のために仕事をしたけど、地球のための仕事は、あまりしなかったからな。」

「そうだ。地球の逆襲は恐ろしい。」

 

2人は電話していたが、オーロラを見ながら、並んで会話をしている感覚になった。

 

その後も、ウォズとスティーブは会い、アップルの製品の試作をした。

 

スティーブは、死ぬ数週間前から、またウォズに、死の予告電話をかけるようになる。

 

リンリンリーン

「はい?」

「やあ、俺だ。」

「電話がなると安心するよ。」

「これが最後の電話になるだろう。」

「わかった。また電話してくれ。」

 

それから一週間、スティーブからの電話はなかった。

心配したウォズは、ロンを誘い、スティーブの家に行く。

スティーブの家は、ほとんど平屋のような感じで、とても革新的でお洒落な家だった。

 

ロンは、スティーブの家の合鍵を持っていた。

孤独死の時のために、渡されていたのだ。

 

「スティーブ?」

 

2人は部屋に入ると、豊かな黒髪の男が、デスクでパソコンを打っていた。

 

「誰?」

「俺は、スティーブ・ジョブズ。」

「だって前と、見た目が違うから。」

 

スティーブは、3人しか知らない製品の名前と、改善点を言った。

「本当にスティーブなの?」

「うん。」

 

3人は、スティーブ・ジョブズが亡くなったことにした。

 

「じゃあ、あなたは、幽霊じゃなくて本物?」

夢から目覚めたパエルは、部屋を見渡したが、もうそこに、スティーブさんの姿はなかった。

 

パエルは、肉まん屋でのアルバイトの後、執筆をするために家に急いだ。

スーツケースを持った黒髪の男がいる。

 

「嘘。」

 

「もしかしてスティーブさん?」

男は少し迷惑そうに振り向いた。

 

「ノー。」

「そうですか‥。すみません。」

パエルは、男を見上げて言ったが、背を向けて走り出し、ニヤリと笑った。

 

物置の部屋で、パソコンに向かう。

「タイトル‥クレイジー・ジーザス。」

 

パエルは、打ち始めた。

書いた内容は、この物語である。

 

 

【The Best Man】

by Shino Nishikawa

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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