マドモアゼルピカソ『修正後』

April 11, 2018

マドモアゼルピカソ

ガブリエルが12才の時、両親が死ぬ。

ガブリエルと妹のアントワネットは、修道院に預けられることになった。

 

修道院を出たガブリエルと、ピカソは出会い、恋人になる。

 

ある日、2人はパブにいた。

歌手がいるパブだ。

 

帰り道、ピカソは酔って、歌ってみせた。

「ほら、歌ってごらん。」

コケコッコウの歌だ。

「ダメ、歌えない。」

ガブリエルは、細長い指を、口元に当てて笑った。

 

「ココ。」

休日の晴れた午後、木陰のベンチで編み物をしているココに、ニワトリの指人形をつけたピカソが、ちょっかいを出した。

ピカソは美術教師、ココはお針子をしている。

「何?」

「結婚しない?」

「しない。だって、夢を叶えていないもの。」

「夢?ココの夢は何?」

「分からない。分からないから、叶えられないの。」

 

 

学校で、数学のヒーマス先生が、ピカソに声をかけた。

「チュチュと言ったか?」

「はい?」

「君の彼女の名前だ。」

「ココのことですか?」

「ココ。」

ヒーマス先生は、うなずいた。

「結婚するのか?」

「いえ、断られていて。」

「ふふ、そうか。」

ヒーマス先生は嬉しそうにニヤニヤと笑って、行ってしまった。

美術の授業は最悪だった。

生徒達が静かにしないのだ。

授業の後、ピカソは、職員室の自分の机でうなだれた。

「お疲れ様。」

ヒーマス先生はニヤニヤと笑って、ピカソにお茶をいれてきてくれた。

 

ココは、男から人気だった。

ピカソが石の坂道を歩いていると、

「お前には似合わねえよ!」

下ってきた2人組の若い男性が、振り返って言った。

 

 

ココとアントワネットは、伯父の牧場で暮らしている。

伯父のバルサンは、大変な裕福だが、結婚をしていない。

少しだけ遊び人のようだ。

 

バルサンは、休日のたびに、仲間とお金の話をしている。

 

「どうした、ガブリエル。」

「退屈なんです。」

「あの男は、来ないのか?お前のことを、ココと呼んでる。」

「今日は来ません。」

 

「可哀想に。妹のアントワネットは、朝早くから将校と出かけて行ったぞ。2人は、もうすぐ結婚かもな。」

バルサンはにんまりした。

「もう結婚なんて、早すぎる。」

 

「午後は乗馬をやるが、お前もどうだ。」

 

ココは乗馬をすることにした。

そんなにうまくはないが、馬には乗れる。

 

バルサンは、ココを見て笑った。

ココは、黒と白の淑女ワンピースを着ている。

「その服で馬に乗るのか?」

「ええ。お気に入りなの。」

ココは、馬に飛び乗った。

 

夜、バルサンは、ココの部屋に来た。

「どうだ、ココ。自分が作った物を売ってみたら。」

ココは驚いて、バルサンを見た。

「お前には、人とは違う才能がある。」

ココはうつむいた。

 

1909年。

ココは、パリのマルゼルブ大通りに、帽子のアトリエを開業する。

「調子はどう?」

「順調よ。」

ピカソの方も、画家として売れ始めていた。

 

1人の男が店に入ってきた。

「こんにちは、ガブリエル。」

「あら、カペルさん。」

「どうだい、例の話は。」

「私、それほど自信家ではないの。」

 

「でも、ここは店じゃない。アトリエだ。君はもっと、大きな店を持つべきだ。」

 

1910年。

ココは、カペルの援助により、パリのカンボン通りに【シャネル・モード】をオープンする。

「いらっしゃいませ。」

ココの声は、女性にしては低い声だ。

 

ピカソは、店のカウンターで、色っぽく話すココと、カペルを見てしまい、胸を押さえて悲しんだ。

 

カランカラン

店に、ピカソが入ってきた。

「やあ。」

「パブロ。久しぶりね。」

「ルーブルからモナ・リザが盗まれてね。僕は疑われて、一週間も捕まっていたんだ。」

「あなたじゃないんでしょ?」

「もちろんさ。僕じゃない。」

「まぁ、かわいそうに。」

 

「多分、お前の知り合いの、カッペルだとかいう男が、俺がやったと、告げ口したに、違いないんだ。」

「カペルが、そんなことするわけないでしょう。あなたって、おかしいのね。」

ココは笑った。

 

売上は好調で、1913年には、ドーヴィルに二号店をオープンする。

しかし、翌年には第一次世界大戦が勃発する。

 

1915年春、ココは病魔に侵され始めていた。

 

ある日、ピカソとココは、森を散歩していた。

昨日の朝、ココは血を吐いたが、ピカソには言っていない。

「大丈夫かい、今日は顔色が悪いようだ。」

「ええ、心配いらないわ。」

「そう。」

ピカソは、ニッコリと笑った。

ピカソは、うっとりとした様子で、思い出話をし始めた。

 

しかし、ココはピカソの話など、聞いていなかった。

本当に、具合が悪かったのだ。

「ごめんなさい。」

ココは、走って小川に向かい、血を吐いて倒れた。

 

ココが好きなので、ぼんやりとついてきていた、ジャンという青年がココを介抱した。

「ガブリエルさん、大丈夫?」

 

「ココ‥!!」

ピカソも走ってきた。

「血を吐いてる。」

「ああ!」

 

「先生、ココは何の病気ですか?」

「多分、風邪でしょう。10日ほどです。」

「10日ほどって何がですか!!」

「10日ほどで治ります。」

メガネの先生が、悲しげに言った。

 

本当は、ココは1年の命だった。

それでも、ジャンはココに、恋をしてしまう。

 

病に侵されながらも、1915年、ビアリッツに【メゾン・ド・クチュール】をオープンする。

もうココの命が、わずかだと気づいたピカソとジャンは、服作りの勉強を始めた。

「こうなれば、僕がココ・シャネルを守ります。」

ジャンが言った。

「いや‥ココは長年、僕の恋人だった。君がやることじゃない。」

 

翌年、コレクションを発表することになる。

「ココ、初めてのコレクションだ。他のブランドとは、違った物を出さなければいけない。ジャージー。いいだろう?」

「ええ、そうね。」

具合の悪いココは、机で針仕事をしながら言った。

 

「無理するな。ココ。」

「ありがとう‥。」

 

コレクションの日、ココは具合が悪かったが、モデルに服を着せ、ステージで一瞥した。

本当は、笑うつもりだったが、具合が悪かったためだ。

 

そしてココは亡くなった。

ココは、死ぬ前、お花畑を見た。

死ぬ人が誰もが見るという、幻の光景だ。

そこには、最愛の人が映る。それも相思相愛の人だ。

ココには、ピカソが見えた。

ピカソは笑って、ココに花冠をつけた。

 

ココは、亡くなった。

亡くなった時、そばにいたのはピカソだとは分かった。

 

 

 

「大変だ、カペルが死んだ。」

ジャンがピカソのアトリエに来て言った。

 

ピカソは眼鏡を下にずらし、聞いた。

「死んだって、なんで分かる?」

 

「今朝の新聞に載ってた。パブロさん、新聞をとっていないのか?」

ジャンは、アトリエのソファーに座りこんだ。

 

「とってない。アナキストなものでね。」

ピカソは、筆で少し絵にタッチしたが、立って窓際まで歩いた。

 

「あいつが死ぬとは。死ぬ必要なんてなかった。ココは、僕の恋人だったのだから。まさか‥。」

 

ジャンが言った。

「愛していたんですよ。ココは沢山の人から愛されていた。」

「ふん。」

 

空には軍隊の飛行機が来た。

 

「田舎に行きたい。」

ピカソが言った。

「こんな場所では、芸術が出来ない。」

 

「いいですよ、パブロさん。ココ・シャネルは僕が守ります。」

ジャンはまた、ソファーに座った。

「サイズダウンしたんです。ココになるために。ココが死んだということは、あまり知られていない。」

 

「君がココに?」

 

「ココを、歴史から消したくないんです。」

 

 

「いい香りね。」

ココになりきったジャンと、ピカソ、ココ・シャネルの経営者のピエールは、調香師エルネストの下に来ていた。

「美しいマドモアゼル。あなたを表現してみました。」

 

ピエールは、エルネストと、お金の話をし始めた。

 

『これで、本当にうまくいくのか?』

『これから、シャネルを大きくするためには、香水が必要なんだ。』

 

「マドモアゼル。」

 

「どの香りがいい?」

エルネストは聞いた。

「うーん‥。」

ジャンとピカソは、香りをかいだ。

 

『どうする?』

『No.5。ココが一番好きな数字だ。手紙では、Goの代わりに、5を使っていた。』

 

「OK。No.5にするわ。」

「ファイブ?クリアな選択です、マドモアゼル。」

No.5は、戦争中もよく売れた。

 

 

ジャンとピカソは、パーティーに来た。

「イーゴ・ストラヴァンスキー。私のために一曲弾いてちょうだいな。」

ココになりきったジャンが言った。

ピカソはジャンを見たが、イーゴは、

「じゃあ一曲だけ。」

と、笑顔で、ピアノを弾いてくれた。

 

ココジャンは、とても楽しそうにしながら、1人で立っているピカソの下に来た。

「今度、私の絵を描いてちょうだいよ。」

「どうしてそんなことを。」

「いいじゃない。」

「ダメだ。」

 

「よければ、私が、あなたの画をお描きするわ。」

1人の女性が、声をかけた。

「私の名前は、マリー・ローランサン。」

 

数週間後、マリーから、ココの肖像画が送られてきた。

包み紙を開くと、2人は息を飲んだ。

「美しい。」

それは、本物のココだったので、2人は悲しくなった。

「ココとはもう会えないのに。」

「これは‥送り返そう。」

 

『この作品は美しすぎて、とてももらえません。あなたの生涯の財産として、後世に残してください。ココ・シャネル』

 

マリーは、手紙を読んで、ふっと笑った。

「私のガブリエル。」

マリーは、ココの大ファンだったのだ。

 

 

1937年。ピカソはゲルニカを制作する。

ピカソは、昼夜問わず、一心不乱に描き続けた。

「ココが、昔よく言ってた。戦争になったら、馬や牛も可哀想って。」

ピカソはうっとりとした様子で、絵を見つめ、ジャンは、ソファーに座りこんだ。

 

1939年、4千人を抱える大企業となったシャネルだったが、コレクション前の苛烈な労働条件にストライキが起きていた。

 

「どうせ戦争だ。いっそ終わりにしたら?」

ピエールが提案した。

「シャネルは21世紀、いや、そのもっと先まで残るブランドなんだ。」

ジャンは悔しそうに言った。

 

「だけど気に入らないよ。せっかく雇ってやっているのに。」

ピカソは、レースカーテンから、従業員達を見た。

 

シャネルは一部店舗を残し、全てのビジネスを閉鎖することを決めた。

 

「戦争が終わったら、また始めよう。」

ピエールは、2人に言った。

 

 

1940年、フランスはナチスに占領される。

バルサンが、ピカソのアトリエに来た。

「こんにちは。」

「エンティエンヌさん、お久しぶりです。」

「ココ・シャネルは、私の姪のブランドだから、気になってね。大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です。」

バルサンは一呼吸おいて、話し始めた。

「2人ともユダヤ人じゃないな?」

「はい。」

「では、ナチスの方につくんだ。」

「どうしてです?ユダヤ人を差し出せと?」

「そういうわけじゃない。ダビデの意味を知っているか?」

「知りません。」

「ナチスは、ユダヤ人が別の星から来たと言っている。もちろんそんなわけない。」

 

『あなた達を、元の星に送り返したい。』

ヒトラーが、ユダヤ人達に言う姿を、ピカソは想像した。

 

「とにかく、ナチスが来たら、ユダヤ人については曖昧に答えろ。味方につくんだ。」

 

「分かった。シャネルを守るためなら、なんだってする。」

ジャンが言った。

 

ジャンは、ナチス諜報組織に入った。

アプドゥーアという組織だ。

アプドゥーアの活動は大体、日差しが差し込む部屋で会議をした後、午後のお茶会をする感じだった。

 

そのため、フランス解放と同時に、ジャンは逮捕されてしまう。

しかし、ウィンストン・チャーチルのはからいで、ジャンは釈放された。

 

ジャンの精神は、非常に落ち込んでしまう。やせ細っていくジャンを心配したピカソは、スイスへの旅に誘った。

自分も、そこで繊細な絵が描きたかったのだ。

 

「どうだい、綺麗だろう。」

「バルサンが死んだらしい。」

ピカソが言うと、ジャンがピカソを見た。

「バルサンは、ココの父親代わりだった。ココをとても愛していた男だ。」

 

バルサンの葬式には、ピエールと、調香師のエルネストが行った。

バルサンの顔には、白い布がかけられ、女性達がまわりで泣いていた。

 

「エンティエンヌ‥。」

 

「バルサン、ありがとう‥!!」

エルネストが、バルサンにすがりついて、泣いた。

 

 

ピカソはジャンに、絵を描きながら聞いた。

 

「アメリカに行かないか?とても長く、大きな戦争に、決着をつけた国だ。」

 

ピカソの予想通り、シャネルはアメリカで、熱狂的に受け入れられた。

シャネルは、『アメリカで最も大きな影響力を与えたファッションデザイナー』として、モード・オスカー賞を受賞した。

 

1969年、コレクションは、だいぶ華やかになった。

「ジャン、準備はいいか?」

モデル達の控室の前で、ピカソとジャンは話した。

「いいわ、もちろんよ。」

ピカソはドアを開けた。

「ニャン子ちゃん達、出番よ、準備はいい?」

ジャンは、ココ・シャネルになりきって、言った。

 

しかし、1971年。

ジャンは、亡くなる。

ジャンは、ローザンヌの墓地に入ることとなった。

 

ピカソは頭を抱えた。

なんせ、自分ももう、89才である。

 

「神様、どうかもう一度、私に人生をください。」

 

ある朝、ピカソは、51才に戻った。

そして今でも、ココ・シャネルを守り続けている。

 

 

【She made the fashion】

By Shino Nishikawa

 

 

 

 

 

 

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