Tokyo young story

June 6, 2018

Tokyo young story

「お前達、SNSとかやってんの?」

27才の代田タケイが聞いた。

「はい、やってます。」

「ふーん、何やってんの?」

「えっとぉ‥、Twitterです。」

「へー。俺達の頃はね、mixiってヤツが流行っててさ。地元の友達とも、mixiで交流してたんだよ。」

「ああ‥そうなんですか。」

「つか、mixiってなんですか。」

タケイはガクッとした。

 

「俺、パスタとってくるわ。」

タケイは立ち上がった。東京池袋のスイパラに来ている。

 

「つか、タケイ先輩とメシって言えば、絶対スイパラだよな。」

「うん。しかもおごってくんないの、意味分かんない。」

「おごってくれないなら、もう来ませんよ、みたいな。」

20才と21才の、山本ナカイと植田コウタは、こそこそと話した。

 

「おーワリ。あと10分くらいだから、お前達もしっかり食べろよ。」

タケイは、皿に、パスタと小さなケーキ二種類とサラダをのせている。

 

ナカとコウタは、肉とサラダとケーキを追加した。

 

 

「じゃあな。お前達、道をそれんなよ!」

タケイは言った。

「はい。先輩も、体に気をつけてくださいね。」

「大丈夫。こう見えて、毎日鍛えてるから。」

「今日はありがとうございました。」

 

タケイと、ナカとコウタは別れた。

ここはデパートの中だ。

 

「つか、ここまで?普通、駅までじゃん。」

コウタは顔をしかめた。

「あの人、普通じゃないよ。」

「ついて行ってみる?」

コウタが言い、ナカはコウタの顔を見た。

 

トイレから出たタケイは、駅に歩いて行く。

ナカとコウタも後ろから、スパイをした。

 

タケイは、山手線に乗り込んだ。

「先輩なんか見てるっす‥。」

コウタは小声でつぶやいた。

 

タケイはスマホを見て笑っている。

 

「タケイ先輩、降りるぞ!」

タケイは渋谷で降りた。

ハチ公口へ向かう。

「俺達も行こうぜ。」

コウタは、携帯を改札にタッチさせた。

 

「ごめん、ちょっと待って。」

ナカのスイカは、足りなかった。

 

「うん。」

「ごめん。金欠。」

ナカが言うと、コウタは少し笑った。

「バイトは?」

「してるよ。そろそろ、バイト代、入る。」

ナカは、チェーンのカフェでバイトをしている。

コウタはガソリンスタンドだ。

 

「とにかく、タケイ先輩追おうぜ。」

コウタは言った。

ナカは、タケイ先輩をスパイするなんて、少しアホらしいと感じながら、コウタはかなり楽しんでいた。

 

「タケイ先輩、センター街に入ります。」

コウタはスマホ言った。スマホを口にかざす意味はない。

ナカは少し困り笑いで、コウタを追いかけた。

 

「ちょっと、待って。」

コウタはナカを止めた。

タケイ先輩は、自動販売機で缶コーヒーを買い、飲みながら電話を始めた。

タケイ先輩はかなり笑っている。

 

「女かな?」

ナカは聞いた。

「さぁ。」

「お、歩きだした。」

 

「先輩、右に曲がりまーす。どこ行く気だ?つか、こんな道あった?俺、この道初めて。」

コウタは言った。

 

タケイ先輩は、洋服屋さんのドアを開けた。

覗いてみると、バスケとか、ヒップホップとか、黒人テイストの服が売っている店のようだ。

タケイ先輩は、イケメンと美人店員に挨拶した。

 

タケイ先輩は、何やら、色紙にサインを書いている。

「えっ、タケイ先輩、何やってんの?」

 

どうやら、この路地の奥に、隠れ家クラブがあるようで、外国人風のお洒落な人達が通っていく。

「ちょっと見に行っていい?」

「うん。」

コウタは、隠れ家クラブを見に行ってしまった。

 

「えっ。」

クラブの入口にいた、渋谷ギャル2人がコウタを見た。

「あっ‥。あの、予約制ですか?」

「うん。でも、いいんじゃない?見たいの?」

「はい。」

「分かった、来て。」

コウタは長野出身で、大学を卒業したら、群馬で就職したいと考えていた。母親が群馬出身なのだ。

渋谷に恋して、渋谷色に染まってしまった彼女達の目は、コウタに癒された。

 

「中はね、バーがあって、その奥に、音楽を聴きながら、踊る所があるの。」

「踊る?」

「そう。みんなでね。芸能人が来るとすごく楽しい。」

「へぇ~芸能人が?」

「うん。たまに来る。」

「ふーん。」

 

「おー、ミリちゃん。さっちゃんも。」

ロン毛の男が、ギャル達に話しかけた。

「こんにちは。」

 

 

コウタは、ナカの下へ戻った。

タケイ先輩はまだ中にいて、ナカは入口でスマホニュースをチェックしていた。

 

「タケイ先輩は?」

「まだ中にいるよ。」

「おっせぇ。」

コウタは少しブスっとした。

 

はああ。

2人はそろって、スマホニュースをチェックし始めた。

「うぜー、ナニコレ。」

コウタは呟いた。

「消してー。」

 

「消せないよな。」

「うん、消せない。」

ナカが言い、コウタがうなずいた。

 

「お前ら、何やってんの?」

タケイ先輩が店から出てきた。

「あ、先輩。」

 

 

「いいか。お前達がしたことは、ストーキング行動だ。立派な犯罪だぞ。」

渋谷の街を歩きながら、タケイ先輩が言った。

「すいません。」

コウタが言った。

「ナカは?何か言えないの?」

タケイ先輩が言った。

「ごめんなさい。」

 

ふん

タケイ先輩は歩き続けた。原宿の方に向かっている。

「どこ行くんすか?」

「俺は、仕事の関係で、挨拶しなきゃいけない所があるの。」

 

タケイ先輩は、中年男性を見て、突然挨拶をした。

「専務、お疲れ様です。」

「ああ‥代田君、奇遇だね、こんな所で会うとは。」

「はい、今日は、後輩を連れて、東京観光をしています。」

「そうか。また月曜日ね。」

「はい、お疲れ様です。」

 

「マジすか?」

コウタはタケイ先輩に言った。

「何?」

「今の人、専務すか?」

「そうだよ。」

「うわぁ‥。」

ナカもタケイ先輩を見た。

 

「何?俺は社会人なんだから、上司に会ったら、挨拶するのは当たり前だよ。」

タケイ先輩は、小さなデザイン会社に勤めている。

「先輩、仕事できるんすか?」

「まぁ‥一応ね。」

 

土曜日の午後4時だ。

とても暑い午後だったが、少しだけ、涼しい風が吹き始めている。

ナカが聞いた。

「さっき、なんで、サインしていたんですか?」

「ああ。俺、芸大出身だから、有名人のサイン、真似できるんだ。」

「え‥。」

「あの店に、マイケルジャクソンのサインがあったんだけど、盗まれたから、俺が書いてあげた。」

「それ、犯罪っすよ。」

コウタが言った。

「でも、あの人達、売らないって言ってたよ。」

「あの人達のこと、信じるんですか?」

「信じるよ。仲間だもん。」

 

「賭けますか?じゃあ、それ。」

コウタが言うと、タケイ先輩は困ったようにコウタを見た。

「大丈夫だって。‥あ、俺、このカフェの店長に挨拶するから。」

タケイ先輩はピンクのカフェに入った。

 

5分ほどで、先輩は出てきた。

「待ってたんだ、ごめんね。」

「いえ。」

「仕事関係ですか?」

ナカが聞いた。

「うん。俺がこのカフェのWeb作ったんだよ。」

「すごい。」

「まあな。」

 

「俺さ、マジでこれから予定あるから、もう帰れよ。」

「もう少し一緒にいたいっす。」

コウタが言った。

 

「まぁいいわ。好きにしろ。」

はぁぁ。タケイ先輩はため息をつき、表参道に向かい始めた。

コウタとナカは、表参道にあまり来たことがない。

空や店をうっとりと眺めた。

 

「ここではな、モデルが一番偉いんだよ。」

「え‥。」

「撮影とか、行っちゃダメだぞ。」

「はい。」

ナカはなんとなく、訳が分かった。

 

「撮影に行ったことあるんですか?」

コウタが聞いた。

「あるよ。」

タケイ先輩は答えた。

 

タケイ先輩は、昔のことを思い出した。

Mixiでは、イベントの誘いはほとんどなかった。

想像以上に、多くの人が集まってしまうので、二十歳の若者には対処出来ない。

 

プルルル

「はい。」

―もしもし。タケイ、今日暇?

「誰?」

―私、ミチコ。

「ああ、ミッチー?ごめん、番号が消えちゃってたみたいで。」

―ううん。私、携帯変えたんだよ。

「そうなんだ。それで、用は何?」

―読モやってるユリから、撮影見に来ないかって誘われてぇ。私だけじゃ、ちょっと心細いから、タケイを誘おうかなって。

「いいけど、2人きり?」

―ううん。カナも来る。タケイも、男友達1人連れてきてもいいから。

「分かった、誘ってみる。」

―あとで、場所、メールするね。

「OK。はーい。」

 

タケイは電話を切った。

メールが来て、待ち合わせ場所は、表参道ヒルズの前に4時だ。

タケイは、ハナ(花川敏夫)を誘うことにした。

「タケイ!」

2人は3時半に、原宿駅で待ち合わせをした。

打ち合わせをするためだ。

「ハナ。」

「何、急に。モデルの撮影って何?」

 

「俺?脱ぐ準備はあるよ。」

ハナはニッコリした。

「え‥もしかして、撮られたいの?」

「冗談だって。俺、成長止まってから、モデルの夢とか諦めたから。」

 

歩きながら、ハナはしゃべりだした。

ハナはおしゃべりなので、タケイは一緒にいて楽だった。

こっちから話題をふる必要がないからだ。

「昔さ、原宿で、俺、スナップ撮られたんだよ。」

「マジ?」

「ない?そういうの。」

「ない。」

「ホントにぃ?タケイカッコイイのにね。」

「雑誌に載ったの?」

「載ったよぉ。」

「すごいじゃん、今度見せてよ。」

「別に、フツーだよ。」

ハナは余裕な感じで、目を落とした。

 

ハナは経済大学に通っている。

意外にも、芸能界とか、華やかな世界には、憧れていないようだ。

 

「どう、絵の方は?」

「いや、俺は絵じゃなくて、Webの方だよ。」

「あ、そっか。」

「絵じゃ、食っていけないだろう。相当、才能があれば別だけどさ。」

「うーん。でも才能があれば、絵の方が稼げるよな。」

「俺は才能がないから。」

 

「タケイ!!」

「あ‥。」

道路を挟んだ向こう側から、ミチコが呼びかけた。

「ハナぁ?」

カナもジュースを持ちながら、ニコニコ笑っている。

 

 

「ここが、スタジオみたい。」

ミチコがドアを開けた。

受付には、若そうな男のスタッフと、女のスタッフがいる。

「あの‥。」

「はい?」

「モデルのユリさんから、見学に誘われて。」

「あ、そうですか。どうぞ。ご案内します。」

 

奥の部屋では、白い壁をバックに、撮影が行われていた。

「あれ、ユリ?」

「すげー。」

ユリはピンク色のワンピースを着て、カメラの前でポーズを決めている。

ガチャ

ドアから、お洒落な男子達が入ってきた。

見るからにお洒落で端正な顔立ちをしているが、体が少しだけ貧弱だ。

 

「おー。やってる。」

「すげ、やっぱ可愛い。」

 

「あれ?新人さんですかぁ?」

「いえ‥ユリさんの友達です。」

ハナが答えた。

ミチコは母親のような目でユリを見つめるが、カナは少しだけ不機嫌そうだ。

カナはモデルになってみたかった。

 

「はい、OK。じゃあ次いこうか。」

カメラマンが言い、少しだけセクシーな黒い服の女の子2人が壁の前に立った。

 

「キャ~。」

ユリはこっちに着た。

「すごいじゃん、ユリ。」

ミチコはユリの頭をなでた。

「うん。」

 

「アレぇ?カナ?」

「ユリ、お疲れ。」

カナは無理して、余裕の笑みを浮かべた。

「ハナとぉ、大吉君?」

「大吉じゃないでしょ。タケイ。」

「あ、そっか。タケイ。」

 

「お~ユリ、お疲れぃ。」

後から入ってきた、少しだけ年増のモデルが話しかけた。

背は高いが、体は少したるんでいる。

「トミさん。」

「おおぅ。」

後から来た年増のモデル達は、完全に日本人だが、外国人のような声を出した。

 

「お友達?」

「そう、お友達。」

「ユリちゃん、友達いたんだ。」

 

その様子を、タケイとハナとミチコはニヤニヤしながら見守った。

カナは浮かない顔をしている。

 

「ああ‥。」

ついにカナは泣きだした。

「大丈夫?」

あとから来た年増モデル集団の1人が話しかけた。

 

「カナ、大丈夫ー?」

ミチコ、ハナ、タケイもカナを囲んだ。

 

「ん?モデルに憧れてたんだ。」

カナを心配した年増モデルの裕亮(ひろき)が言った。

「うん。」

 

「じゃあ、写真撮ってみる?もうすぐあくから。」

「カナ、そうしなよ。私、メイク道具持ってるよ。」

ミチコが言ったが、奥から、メイクの女性が出てきた。

 

「どーせなら、プロにやってもらえば。」

年増モデルのリーダー的存在である浅雪イロウ♂28才が言った。

 

「こっち。」

メイクの女性は、カナをにこやかに呼びかけた。

ユリは、年増モデルの1人とスタジオから出て行ってしまった。

 

「カナ頑張れ!」

「うん。」

 

「ミッチーはいいの?」

ハナが聞いた。

「うん。私はモデルとかはやりたくないから。」

「ふーん‥。」

「私、大学を卒業したら、母の田舎に帰って、茶道教室を開きたいの。」

「そうなんだ。素敵な夢だね。」

ミチコは笑顔でうなずいた。

 

ミチコは素敵な女である。

タケイはミチコがスキだった。

 

 

「カナちゃん、笑ってー。」

裕亮がカメラを覗いている。

「カナ、こう。」

ミチコが軽くポーズの手本を見せた。

 

「俺の代わりに、誰か撮ってくれ。」

裕亮が言った。

「え‥。」

「タケイ、やれよ。」

裕亮はカナの横に立ち、タケイがシャッターを切ることになってしまった。

 

「ミッチー、マジ、いいの?モデルやんなくて。」

「いいって言ってんじゃん!」

ミチコはハナを小突いた。

他のモデル達は、入口付近で、何やら打ち合わせをしている。

 

裕亮の表情は優しい。

「ちょっと待って。」

裕亮はぶれた写真を消した。

 

「ほら、かわいい。」

「ありがとう。」

裕亮はカナに写真を見せた。

 

「ちょっと、どいてどいて。」

若手モデルが、タケイとハナをどかせた。

「今から、キャットウォークの練習するから。」

 

「キャットウォークって何?」

「知らない。」

「キャットウォークは、ファッションショーでモデルが歩く道のこと。今度、ショーがあるんだ。」

裕亮が教えてくれた。

 

若手モデル達は、一列で歩き始めた。

みんな無表情である。

年増モデルリーダーのイロウも歩いている。

こう見ると、イロウはかなり、オーラがある。

 

ふぅぅ。

スタジオの影では、電子タバコを吸いながら、1人の男がその光景を見ていた。

 

「はーい、オッケーでーすっ。」

小柄の男が言った。

 

「はああ。」

若手モデル達は、緊張がほどけたようだ。

「な、本番は、こんなもんじゃないんだからなぁ!!」

イロウが大きな声で言った。

「オオス!!」

モデル達も、仕事に本気である。

 

「イロちゃーん。」

「ん?」

 

「約束の時間、すぎてるよ。」

電子タバコを吸っていた男は、国内トップクラスのバンドマン、伊流琉千家である。

「あ‥忘れてた。この後、レコーディングでしたよね?」

「うん。終わったなら、いい?」

琉千家が聞き、イロウは若手モデル達を見た。

 

「いいですよぉ、行ってください。」

「先輩、どうぞどうぞ。」

「うん。」「な?」

 

「あの人、琉千家(るちけ)さんじゃん。」

ハナがタケイにささやいた。

「すごいね。」

 

ミチコはうっとりした感じで、スタジオから出て行く琉千家とイロウを見た。

 

「よしっ、行ってくれましたぁ!!」

若手モデルの1人が叫んだ。

 

カナや他の女子モデルは、私服に着替え終わっていた。

 

「しゃあ、やりますかぁ。」

若手モデル達は、上半身を脱ぎ始めた。

 

「え‥。」

「はだかの写真撮るの。」

裕亮が困ったように言った。

 

「ちょっと撮ってあげてくれる?」

「俺がですか?」

「うん。タケイ君、写真上手いよ。」

「タケイ、芸大なんですよ。」

「芸大?すごいじゃん。」

 

「イエー!!」

若手モデル達は、上半身裸のまま、いろいろなポーズを決めた。

ミチコは、カナや他のモデル達と、ニヤニヤと笑って話していた。

 

その頃、イロウはレコーディングスタジオでヘッドホンをつけていた。

琉千家の音楽に参加するためだ。

「音程とかリズムとか、ちゃんと覚えてるよね?」

琉千家が聞いた。

 

イロウはかなり赤くなってしまっている。

「あの‥やっぱり無理です。」

「無理って何。出来るって言ってたじゃん。」

「ちょっとやっぱ‥恥ずかしいっすよ。」

イロウは、ヘッドホンを外した。

 

「嘘でしょぉ‥。」

琉千家はパイプ椅子に座った。

電子タバコを吸い始めた。

イロウは困った感じで、電子タバコを吸っている琉千家を見た。

 

レコーディングスタジオでは、不純異性交遊が起きやすい。

このパイプ椅子は、不純異性交遊で使われた物だということは、琉千家も分かっていた。

「こっちからしてみれば、カメラの前でポーズを撮る方が、恥ずかしいんだよ。」

「じゃ、手本見せてもらえますか。」

イロウが言った。

「いいよ。」

琉千家は立ち上がり、マイクの前に立った。

 

「Hey,Baby.OK!! Hey,Girl.OK!!」

 

琉千家はマイクの前に立つと、まるで別人である。

イロウは見とれてしまった。

 

 

 

7年後のタケイは、手元にあるライブのチケットを見た。

このライブは招待客しか入れない。

超ウザイバンドから、国内トップクラスのバンドまで、ピンキリのアーティストが登場する。

そこには、琉千家とイロウの名前もあった。

どうやら7年前の曲を演奏するらしい。

 

「いいんですか?俺達まで入っちゃって。」

コウタが聞いた。

「多分ね。招待客しか入れないから、そんなにいっぱいにならないと思うよ。」

このライブは5時開演だ。

 

「俺、琉千家さん見たら、すぐ出るからね。俺は、この後ずっと、予定があるの。」

タケイは言った。

「いいっすよ、俺達、ついてくっす。」

「いや、くんなって!!」

タケイは言った。

すると、前にいた男が振り向いた。

モデルの裕亮だ。

「あ‥タケイじゃん。」

「あっ、ども。俺の後輩も入っちゃってます。」

「ああ~、いいんじゃない?‥ところで、カナちゃん元気?」

「知らないです。ミチコとは、連絡とっているんですけど。」

 

「もう‥カナちゃん、モデルの仕事やってないよね?」

「辞めたと思いますよ、さすがに。」

タケイは答えた。

 

あの後、カナはモデルの仕事を続けた。

何かツテを見つけたようだった。

でもほころびが出始める。

実家が放火にあったのだ。

 

 

初っ端は、エムフローが登場した。

その後は、琉千家とイロウだ。

今聞いても、斬新な音楽だ。

 

タケイ達は乗りまくった。

 

「イエエエエエエエ!!!」

琉千家はシャウトした。

 

「はー。先輩、さすがだぜ。」

タケイは言った。

「先輩さ、なんで招待されたんですか?」

ナカが聞いた。

「ああ。琉千家さんのホームページ作ったの、俺だから。」

「すごい‥。」

「そんなに、すごくないって。‥俺、もう行くからさ。お前達、好きなだけいなよ。」

タケイは人をかき分け外に出た。その姿を、コウタとナカは見つめた。

 

 

 

「はああ。よし、行くか。」

タケイは青山一丁目駅に向かった。

 

切符を買う。

タケイはスイカを使っているが、今はあまりチャージしていなかった。

交通費をクレジットから落としていて、破産した人を知っているからだ。

 

改札に向かうと、コウタとナカが立っていた。

「なんでいるんだよ。」

「ついて行きたくて。」

 

「どこまでですか?」

2人も切符を買うようだ。

「押上。」

タケイは答えた。

 

コウタが電車の中で聞いた。

「スカイツリーですか?」

「そう。」

 

「夜景をテーマに、無料の個展を開こうと思ってるんだ。」

「へー、そうなんですか。」

「そうなんです‥。」

タケイは何も見えない窓の外を眺めた。

 

 

東京タワーに初めて1人で登ったのは、21才の頃だ。

スカイツリーのお披露目は、来年に迫っていた。

 

今まで、家族や修学旅行で訪れていた場所だ。

1人でチケットを買い、そわそわしながら、エレベーターに乗り込んだ。

 

「あ、タケちゃん?」

「あ‥アミちゃん。」

「1人?」

「うん。アミちゃんは?」

「1人。でも無視してくれる?1人で来たんだから。」

「分かった‥。」

タケイにとってアミちゃんは、可愛いと思っている女の子の1人だった。

 

「別にさ‥スカイツリー、出来なくてもいいよね。」

アミちゃんは、言った。

「うーん、そう?」

「東京タワーだけの東京がスキだったから。」

「ふーん、そうなんだ。」

 

エレベーターが開いた。

「じゃ、今からは、これね。」

アミちゃんはマスクをかけ、人差し指を口に当てた。

 

3時半。

まだ明るい東京の景色を、アミちゃんは、冷めた目で見つめている。

『見て、アミ。あそこらへんが、国会議事堂だよ。』

幼い頃、アミにお母さんとお父さんが言った言葉を思い出した。

『この子は、国会に行ける。』

アミは、冷めた目のままだ。

国会議員とは程遠い、人生を歩んでいる。

両親はまだあきらめていないが、選挙に出るのは、無理そうである。

 

タケイは、ぼんやりとした感じで、アミを見つめた。

アミが議員になれる子だったなんて、タケイは気づいていない。

 

「さよなら。」

アミは小さな声でつぶやいた。

我慢できずに、タケイはアミに言った。

「アミちゃん、間違っても、自殺とかしないでね。」

「分かってる。大丈夫。しないから。」

「ふーん‥。将来のこと、決まってるの?」

「決まってない。」

「ヤバいじゃん。」

アミは歩き出した。

「自殺すんなよ。」

しない。アミはタケイに背を向けたまま、つぶやいた。

 

 

6年後のタケイは、スマホを開いた。

アミは、世界的にすごいアーティストになっている。

 

「押上。つきましたね。」

コウタが言った。ナカは寝てしまっている。

「降りるよ。」

タケイはナカを起こした。

 

 

「先輩、ご飯食べませんか?」

コウタが言った。

「そうだね。ソラマチで食べる?」

3人は、ソラマチをふらふらと歩いた。

 

スーツの男が蕎麦屋を覗いている。

「あれ、ハナ?」

「あ‥。」

 

「仕事帰り?」

ハナも加わり、4人でソラマチの中をふらふらと歩いた。

「うん。デートの下見。」

「彼女できたの?」

「うん。三個上のCA。」

ハナが言うと、少し後ろを歩いていたナカとコウタが顔を見合わせた。

CAとかは苦手なタイプだ。

 

「うまく、いくといいね。」

タケイは言った。この恋に、見込みはない。

 

「ラーメン食べる?」

ハナが聞いた。

「俺、クーポンあるから。」

 

4人はラーメンを食べた。

「あ、いいよ。俺がおごってあげるから。」

 

「いいっていいって。」

なんとハナは、スカイツリーのチケットまでおごってくれた。

ハナはスカイツリーの取引企業に勤めており、かなり給料がいいらしい。

「ごめん、ありがとね。」

タケイは言った。

「いいよ。当然。」

ハナは笑った。

ハナも職場で汚職をたくさん目撃し、笑い方が大人びた感じになっていた。

 

上にエレベーターでのぼると、中年以上の大人が主な客だった。

「綺麗。」

タケイは言い、デジカメで夜景の写真を撮った。

 

「それ、新しいヤツ?」

「うん、そう。」

タケイとハナは、夜景を見ながら、カメラについて話している。

 

「すっげぇ。」

コウタは言った。

「コウタ、スカイツリー、来るの初めて?」

「いや、2回目。でも、1回目は、昼間に来たから。」

「家族と?」

ナカが聞くと、コウタは面倒くさそうに頭をふった。

 

「違う。ダンズのメンバーと一緒に来たんだ。」

ダンズは、コウタが地元の友達と組んでいるダンスチームの名前だ。

「結構うざかった。」

コウタは顔をしかめた。

コウタは眼鏡をかけている。

 

スカイツリーに来たのは、高3の夏休みだ。

受験勉強があったが、コウタは推薦で私立に入ることにしていたので、そんなに急がなくてもよかった。もちろん、奨学金である。

 

朝7時の電車で東京に行くことにした。

女子はポッキーやプリッツをくれたりして、男子は大きな声で話したりしたので、乗客のおばさんはため息をついた。

コウタはポッキーを食べながら、うつむいた。

コウタは、隣町の高校の、広野さんのことが好きだった。

広野さんは非行少女で、コウタと同じ学年だったが、年は一つ上だった。

 

コウタが乗った特急は止まらない、田舎の駅に着た時、広野さんらしき人物が、なぜか立っていた。

広野さんはあまり笑わない。

以前、高校生らしくない男と駅で笑っているのを見た時は、コウタは心配になった。

広野さんは、地元のイオンに就職するという噂だ。

 

「すぐに結婚かなぁ。」

「ね、すぐ結婚だよねぇ。」

ダンズメンバーの匠とヒヨが話した。

どうやら、広野さんのことではないらしいが、なんという偶然の不一致だろう。

こういうことは、よくある。本当に不思議なものだ。

 

『でも‥、東京に行って強くなりたい。』

コウタは目を閉じた。

 

「ミヨコ。」

コウタは、広野さんの腕をつかんだ。

「え?」

 

「好きだ。」

コウタは目を覚ました。

 

「もうつくよぉ。」

前の席に座っていたダンズメンバーが立ち上がって、コウタを見た。

コウタはぼーっとした。

意味が分からないくらいに、広野さんのことが好きだった。

 

 

コウタは、広野さんのことが、今でも好きだ。

アドレスは交換できていないが、Twitterでフォローしたし、フォローされている。

広野さんのフォロワーは、20人くらいだ。

そんなところも好きだった。

 

コウタのフォロワーは、140人もいる‥。

 

夜景の写真を撮り、Twitterに載せた。

広野さんの投稿には、必ずイイネをしている。

 

広野さんの写真を見るコウタを見て、ナカはニヤニヤした。

「好きな人なの?」

「うん。」

「ええええ!」

ナカは、手で口を抑えた。

 

「ナカってさ、人と付き合ったことある?」

「あるよ。中3の頃に。」

ナカはニヤニヤと笑った。

「もう別れたけどね。」

 

コウタは手すりを持って、体を後ろにゆらしながら、聞いた。

目線の先には、東京タワーがある。

「高2でやるのって、早いかなぁ?」

「何?」

「だから‥。」

「ああ、あれ?そりゃ、早いでしょ。まず、親にバレたら、速攻で別れさせられるよ。」

ナカが言うと、コウタはうつむいてしまった。

「どうしたの?」

「いや、彼女がさ、高2の時に、中絶したらしいんだよね。」

「そうなんだ‥。気にしない方がいいよ。」

ナカは言ったが、コウタは悲しそうだ。

「今度、告ってみたら?」

「いや‥。」

コウタは、体を後ろに倒しながら、つぶやいた。

 

ナカは、コウタから、少し離れることにした。

コウタは自分だけが悲しいと思っているらしいが、ナカだって、かなり辛い想いをしている。

ナカはつぶやいた。

「明代さん‥。」

 

明代さんは、24才の女性だ。

貿易の勉強に熱心な、変わった彼氏がいて、同棲をしている。

 

明代さんは、ナカが電車の中で、鼻血を出してしまった時に、ティッシュをくれた女性だ。

市立図書館で見かけて、名前を知った。

少しだけストーカーをして、明代さんが、岩手県出身ということと、派遣社員だということを知った。

明代さんが、家電量販店で、彼氏と炊飯器を見ている時は泣きそうになったが、いつか別れてくれることを、ナカは信じている。

「明代さん‥。」

お土産コーナーで、スカイツリーのお守りを持って、つぶやいた。

 

「780円です。」

ナカは、お守りを買った。

コウタも、軽く泣きはらした顔で、お土産コーナーに入ってきた。

 

タケイ先輩とハナは、いまだに、デジカメを見ながら熱心に話している。

「この色、珍しいよねぇ。」

ハナは言った。デジカメは紫色だ。

「うん‥。そう?」

「うん。これを作った人は、どうしてこの色にしたのかなぁ?」

「いや、他にも、水色とか、ピンクとか、いろいろあったけどね。」

「へぇぇ、そうなんだぁ。」

 

コウタは、また夜景をぼんやりと見た。

広野さんへラブレターを書こうとしたことがある。

 

「はああ‥。広野さん‥!!」

コウタは眉間にしわを寄せながら、手紙を書いているうちに、愛のポエムを書いてしまっていた。

「なんだ、これは!!」

コウタは紙をくしゃくしゃに丸めた。

 

「くだらねぇなぁ。」

コウタのお父さんは、音楽番組がやっていると、野球かニュースにする。

世の中の金持ちは、大体、印税をもらっている。

世の中で儲かる仕事は、作曲家か小説家らしい。

だから、まともな作曲家はいつでも焦っている。

コウタがそれを知るのは、もっと後の話だ。

 

 

「ちなみにさ、これ、いくらだった?」

ハナはタケイに聞いた。デジカメのことだ。

「2万。」

「ああ~。高いのか、安いのか、分かんないね。」

ハナは言った。

「昔、親に、5千円のカメラ買ってもらったなぁ‥。」

 

「ねぇ。」

タケイは、近くに来て、夜景を眺めている男を指した。

「つーか、マジやべぇ。」

ハナが笑いだしたので、タケイも笑ってしまった。

「マキノさんじゃん‥。」

 

「よっす。」

マキノさんは、33才の年増モデルである。結婚はしていない。

 

「奇遇ですよねぇ。」

ハナは、ニヤニヤしながら言った。

「うん。」

 

 

マキノさんのアパートは青山にある。

家賃は17万もするが、マキノさんはなんとか食いつないでいる。

マキノさんの本名は、牧野高水である。

 

マキノさんは、モデルの仕事以外にも、漫画家のアシスタントをしている。

バスケ漫画を描いている、日高オサム先生だ。

日高先生は、高層マンションの真ん中に住んでいる。

 

4年前。

インターホンを鳴らす。

「はい。」

「先生、マキノです。」

「どうぞ~。」

日高先生は、ロックを解除した。

 

「あっ。」

白いシャツとブルージーンズの女性が、マキノにぶつかった。

「土井さん?」

「ああ、マキノ君!‥このマンションに住んでるの?」

「いや、仕事で‥。」

「仕事?まさか撮影の?」

「ううん。漫画家のアシスタント。」

「そっか。‥じゃあね。」

土井さんは顔を少し赤くし、行ってしまった。

土井さんは、マキノの高校の同級生である。

10代の頃は、雑誌のモデルをしていた。

 

 

玄関を開けると、日高先生のアシスタントである山中さんが、急ぐように出て行く所だった。

「あ、どうも。」

「おお。」

 

「マキノ君、お茶いる?」

「あ、はい。」

先生は、ウーロン茶を机に置いた。

「ありがとうございます。あの、山中さんは、どうされたんですか?」

「知り合いのドラマ撮影があるみたいだよ。‥このマンションの最上階は、撮影現場として使われているんだ。」

「そうだったんですか。実はさっき、マンションの入り口で、高校の同級生に会ったんです。」

「じゃ、撮影かな?」

「はい、元モデルの子ですから。」

 

 

その日。タケイとハナは一緒にいた。23才の頃の出来事である。

「お待たせ~。」

ハナはTシャツの上に、襟付きシャツを羽織った姿で、待ち合わせの駅に現れた。

「今日はどうしたの?」

歩きながら、ハナは聞いた。タケイはスマホを見ている。

「ミッチーから電話がきて‥、ユキが‥グラビアをやってるから、見に行ってやってほしいって言われたんだよね。」

「グラビア?グラビアなんて普通じゃん。」

「ミッチーが心配なんだって。」

「ふーん。それ、どこでやってるの?」

「ラグジュアリーマンション。名前はピュアラルアント。」

「ふー‥ん‥。だけどさ、入れる?」

「これ。」

タケイは合言葉を見せた。ミッチーから教わったものだ。

 

インターホンを鳴らし、タケイが暗号を言うと、入ることができた。

 

 

真剣に漫画の執筆に励んでいる日高先生とマキノだったが、日高先生が振り向いて言った。

「今日やってるの、一体何の撮影だろうねぇ?」

「さぁ‥。」

マキノは顔を暗くした。なんだか悪い予感がしたのだ。

「見に行ってきてくれる?」

「はい。」

マキノは立ち上がった。

 

ガチャガチャ

マキノは、最上階の部屋のドアをガチャガチャとした。

「はい。」

ドアを開けてくれたのは、タケイとハナである。

「スタッフの方ですか?」

「違います。僕は‥下の階で、漫画家のアシスタントをしていて、その漫画家の先生から、撮影を見て行ってほしいと言われ来たんですよ。」

「そうですか。僕達は、友達に頼まれたんです。」

 

「全部の部屋で撮影が行われているから、どこから見ていったらいいか分からなくて。」

タケイが小声で言った。

 

3人はまず、リビングに向かった。

途中の部屋からは、喘ぎ声やうめき声が聞こえている。

 

リビングでは、黒いビキニ姿の女性の撮影が行われていた。

白いTシャツにジーパンのメイクさんが1人いて、男のカメラマンが1人いる。

 

3人が入口に立つと、モデルがこちらに気づき、カメラマンがふりむいた。

「ああ、役者の人?」

「あの‥。」

「はい、そうです。」

マキノが答えた。

「そっか。」

 

「時間まで、コーヒーとか、適当に飲みながら、待ってたら?」

「はい。」

3人はキッチンに入った。

 

 

モデルとカメラマンは、撮影を続けている。

薄ピンク色のファーをモデルは首にかけて、寝転んだ。

メイク直しの時間だ。

モデルは膝まづく感じで、メイク直しをされている。

撮影は再開された。今度はミリタリージャケットを羽織っての撮影だ。

モデルは言った。

「ねぇ、分かってんだよねぇ?あんたは、絶対に、カメラの前に立てないって。」

「はい。」

メイクさんは答えた。

 

「まさか、もう?」

「ジュナちゃん、やめろって。」

モデルが言うと、カメラマンが笑いながら止めた。

 

モデルが3人に言った。

「あんた達さ、これから本番なら、この子で、予行練習したら?」

 

3人は、突然そんなことを言われ、マキノがキレた。

「うっせぇよ!!!俺は役者なんかじゃない。お前らを警察に通報するつもりで来たんだからなぁ!!」

 

カメラマンはギョッとした顔で固まり、モデルは泣き崩れ、メイクはモデルに駆け寄った。

 

マキノは怒りながら、部屋のドアを全部開けて行った。

 

「はぁぁぁ。」

入口付近で、マキノは泣いたので、タケイが聞いた。

「大丈夫ですか?」

「うん‥。2人の友達は?」

「いないみたいです。」

タケイとハナは、顔を見合わせた。

 

「ちょっと、トイレ。‥あのさ、警察に通報しておいてくれない?」

「分かりました。」

「それにしても、くっせぇなぁ!!」

マキノは叫びながら、トイレに向かった。

 

タケイは110を押した。

「あの‥ピュアラルアントというマンションの最上階で、AV撮影が行われていて‥。」

「ああ。でも、ピュアラルアントなら、問題ないんだよね。」

警察が言った。

「え?」

「だからぁ、ピュアラルアントさんは、素人は使わないの。素人が関わってるんなら、警察も動くんだけどね。」

「ああ‥。」

「はい、じゃあ今回はこれで。」

「はい。」

ハナは唖然として、タケイを見た。

会話が聞こえていたのだ。

 

マキノはエレベーターの中で号泣した。

「大丈夫ですか?」

「うん‥。」

 

1階までつくと、マキノは言った。

「俺、まだ仕事あるから。」

「はい。」

「あ、そうだ。」

マキノはロビーに置いてある雑誌を持った。

「俺、モデルなんだ。ほら。」

「マキノ・コウスイ?」

「うん。また、会えたらいいね。」

 

タケイとハナは、新宿まで、電車に揺られ、戻った。

2人とも呆然としている。

 

「映画観ないか?」

「映画?」

 

ハナが言った。

2人は新宿ピカデリーで映画を観た。

くだらない青春映画だが、少しは爽やかな気分になることが出来た。

 

 

「この大馬鹿者!!」

日高先生は、山中さんをビンタした。

「え‥。」

山中さんは頬をおさえ、呆然としている。

「AV撮影に行っていたというのは、本当か!!」

「え‥。」

 

マキノは泣きはらした目で、山中さんをちらりと見た。

確かに、最上階に山中さんはいなかったが、撮影に行っていたのだ。

 

「あの‥俺が見に行っていたのは、お台場での、刑事ドラマの撮影です。」

 

「え‥。」

日高先生は固まってしまった。

「マキノ君、どういうこと?」

日高先生は聞き、マキノはうつむいた。

 

 

「何年振りっすか。」

スカイツリーで、ハナは、マキノに聞いた。

「う~ん、4年ぶり。」

「今も現役モデルですよね?」

「うん。」

 

「先ぱーい!」

ナカとコウタが、小走りでこちらに来た。

「今、あっちで花火が上がってるんです。」

 

「あれ?知り合いですか?」

「うん。モデルのマキノさん。」

「そうなんですか。僕、山本ナカイです。」

「植田コウタです。」

「おお~、よろしくぅ。2人はまだ大学生?」

「はい。」

 

 

5人は押上駅に来た。帰るためだ。

「ああ~、じゃあまたな。」

マキノは言った。タケイとハナは、ついにマキノと連絡先を交換することが出来た。

「お前達、ちゃんと帰れよ。」

「はい。」

今は夜の10時だ。

2人のアパートは神奈川の東横線沿いにあるが、まだ間に合う。

 

 

次の日。

ナカはチェーンのカフェで昼11時からバイトだった。

日高先生は、そのカフェでコーヒーをすまし顔で飲んでいる。

でもナカは、日高先生のことを何も知らない。

 

2つ隣の駅に住むコウタは、この駅のガソリンスタンドでバイトをしている。

コウタもこれからバイトのようだ。

コウタは、カフェの外から、ナカに向かって手を振った。

 

【Hetero sexual】


by Shino Nishikawa

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