リオと天才発明家

August 18, 2018

リオと天才発明家

リオには、魔法力が現れていない。

夜のたき火の時、リオはアドニスに聞いた。

アドニスは国王になったが、週に二度は、家に帰ってきてくれている。

普段は、おじいちゃんとおばあちゃんの3人暮らしだ。

 

「人って、どこかに消えられる?」

リオは木の枝をもてあそびながら、アドニスに聞いた。

今日、フィースとバップと遊んだ時に、2人が魔法を使ったので、辛くなったのだ。

「どういうこと?」

アドニスはリオを見た。アドニスも木の枝をもてあそんでいる。

 

「だからぁ、人は、死ぬ以外に消えられる?」

「無理だ。」

「そう‥。」

リオは下を向いた。

「でも、不可能ではない。」

アドニスは思いついたように言った。

「えっ。」

 

「タイムトラベルだ。」

 

 

ある日、リオは、サシムおじいちゃんがテレビを見て笑っている間に、家を抜け出し、近くに住む人間の下へ走った。

 

魔法使いの旦那を亡くした、ドアマさんの家である。

ドアマさんは、中国系だ。

中国様式の石碑の前で、線香をたいていた。

 

「ドアマさん!」

「なんだい?」

「ドアマさんって、人間でしょ?」

「ああ、そうだが。」

ドアマさんは、面倒くさそうに歩き出した。

「じゃあタイムトラベル出来る?」

「できない。」

「ねぇ、出来るでしょう?」

「できない。無理な物は無理だし、ダメなものはダメだ。」

「そう‥。でも、諦めなければ?諦めなければ、夢が叶うって、みんなが僕に言うんです。」

 

「お前は、バカだ。仕方がない。」

「それ、どういうこと‥?」

「男の子はみんなバカって事だよ。」

ドアマさんは、階段を昇っていく。

 

神社に来た。

 

「ここ、初めて来た。」

「当然だ。私以外、誰も知らない。」

 

不思議な風が吹いた。

 

「夫が魔法で作ってくれた、秘密の庭だよ。人がいないから、時々怖くなる。」

 

「もしかして、ドアマさんは、鬼か何かですか?」

 

「そう、鬼ババさ。」

ドアマさんが言った瞬間、リオは時空の入口に引き込まれた。

 

「お前が行きたい場所へ。」

 

「行きたい場所なんて、決めてない!」

「社会勉強をしてこい。」

 

 

ドン

リオが気付くと、どこかの会社のロビーだった。

スーツの人間達が、まっすぐ前を見たまま、歩いて行く。

「2018.」

 

「5985年前?ここが僕の社会勉強の場所?」

 

「どうした、ボウヤ。」

一人の紳士が声をかけた。

「あ‥。」

 

「ほら。」

紳士はリオを立たせてくれた。

 

「どうした?ここは子供が来る場所じゃないぞ。もしかして、お父さんが働いているとか?」

「いえ。僕、お父さんはいません。おじさんに育てられているんです。」

「では、おじさんがここで働いているのか?」

「いいえ。」

「そうか。」

紳士は急に声色を変えた。

 

「それなら警察に行こう。子供でも、君は正体不明の人間である事は間違いない。」

 

通り過ぎるスーツの人間達は、リオと関わりたくないという感じだ。

 

「ここは、世界の秘密を取り扱っている会社なんだ。正体不明の人間とは、誰も関わりたくはない。」

 

「警察に行くぞ。」

「ヤダ!」

 

紳士は、リオを引っ張り続けている。

「僕は、マトリアシルのリオ・ロジスタンです!おじさんは国王のアドニス・ロジスタン!本当のお父さんは、100年に1人の魔法使いで、去年僕を守るために死にました。」

リオが言うと、紳士はひるんだ。

 

「マトリアシル?」

「はい、世界最大の魔法国です。その国の王様が、僕のおじさん。」

 

紳士は息を飲んだが、すぐに声を出した。

「オイ!!」

 

警備達が走ってきて、リオを取り押さえた。

「やめて!!」

 

「一体、どうしたというんだい?」

薄黄色のポロシャツを着た初老の男が来て、警備達を止めた。

 

「怪しい男の子です、プロフェッサー。」

「ああ‥。君、僕をプロフェッサーと呼ぶのは止めなさい。」

初老の男が言うと、紳士はうなだれた。

 

「いいね、自分の子と置き換えて考えるんだ。パパの会社を見学したいのは、当然だよ。」

 

「男の子、一緒に来なさい。」

 

初老の男はリオを連れ、エスカレーターに向かって歩き出した。

 

紳士は、初老の男の背中に向かって言った。

「もしも自分の子供なら、平手打ちします。ビムナイツさん。」

 

 

「エレベーターは二階からだよ。僕。」

「僕の名前は、リオ・ロジスタンです。」

「リオ?良い所だ。‥じゃ、ないね。良い名前だ。君の名は。」

「ありがとうございます。」

「お父さんは、何階かな?」

「僕、お父さんはいません。」

 

「そうかい。じゃあなぜ来た?」

「分かりません。タイムトラベルして来たので。」

老人は驚いた顔でリオを見た。

「へぇ~、驚いた。タイムトラベルなんて、出来るんだねぇ。」

 

「信じるんですか?」

「ああ。信じるとも。私はなんだって信じる。」

 

エレベーターはぐんぐん上がって行く。

「君が女の子ならもっとよかった。」

 

「変な意味じゃない。大人になるといろいろあるんだ。教えたいことがあっても、女の子とはむやみ話してはいけないんだよ。」

ビムさんは、リオを見た。

 

「セクハラになる。最近、女の子と話したのは、印鑑を頼まれた時だけだ。その子はかなり怯えていた‥。」

 

「もうすぐ退職するらしい。妊娠したとかで。」

 

「相手が黒人ならいいのにね。でも、黒人ではないだろうな。多分、ヤツの仕業だ。白人の、ボビー。」

 

「そこに座りなさい。」

広い社長室には、窓際にデスクがあり、横には何台ものパソコンがあり、茶色のソファーがあった。

 

「僕の名前は、ビムナイツだ。もうお分かりだろうね?それは‥。」

ビムさんは、デスクの電気をつけた。

 

「暗くないね?僕はデスクにしか、電気をつけない。電気は環境破壊の元になるからね。‥パーソナルコンピューターが環境破壊だと?‥それは、言えるな。でも、それを僕に言ってきたのは、父親だけだ。」

 

ビムさんは満足そうに聞いた。

「そのパソコンに興味があるかい?」

「はい‥。」

 

「それには世界の秘密が隠されている。以前、そのパソコンで、テロの計画書を読んだ。でも、何もしなかったよ。どんな事でも、人の秘密だからね。」

ビムさんは目を落とした。

 

「でも実は、恋愛がうまくいかない女性の手助けをした事があるんだ。それで、僕が彼女を助けていることに気づいて、聞いてきたよ。」

 

「彼女は結婚でき、子供を3人産んで、今はとても幸せだ。」

 

 

外にはカラスが飛んでいる。

山が見え、信じられないほど、静かだ。

 

ビムさんは、パックのオレンジジュースとグラスを持ってきた。

「召使がいる生活など、映画でしか見たことがない。」

 

 

「見てごらん。昔の友達の写真だよ。家族がいて、幸せそうだ。僕は今でも連絡を取っている。」

「へぇ‥。」

ビムさんは、昔馴染みの写真を見せてくれた。

 

 

ビムさんは、会社を立てた時の事を思い出した。

母親のマリラは聞いた。

「ビム。何をするつもり?」

 

ビムは機械をさわりながら答えた。

「母さんには関係ない。息子の人生に口出しをしないと言ったのは、母さんの方だろう。」

 

「人が見て、驚くような事はしないでちょうだい。」

「それ、どういう事?驚く事がなければ、人生はつまらないし、それがなければ、世界は変えられない。」

「世界に変えるって‥平和に出来るような物なの?」

「ああ。平和になると思う。」

「思う?思うじゃダメだわ、ビム。」

「うーん、でも、世界が便利になる事は確実だ。」

「世界が便利?ビム、何その言い方。」

 

「しつこいなぁ。もういいよ、母さんなんか。」

 

「ビム、最初に言った事の言い方を変えるわ。」

マリラが言い、ビムは振り向いた。

 

「人が嫌な気分になることはやめてちょうだい。いつでも、人を幸せにさせるの。それが私達の役目よ。」

「分かった。」

 

 

「母さんは妖精のつもりかい?」

ビムが父親のウィリーに聞くと、ウィリーは分からないのポーズをした。

 

 

「ところで、君には友達が、何人いる?」

懐かしそうにアルバムをめくっていたビムさんが顔をあげると、リオはそこにはもういなかった。

ソファーの前のテーブルに置いてある分厚いアルバムは、開かれたままだ。

 

 

「大変だ!」

リオは走って、神社から降りた。

「ドアマさん!」

ドアマさんは、箒で庭掃除をしている。

「何だったんですか?」

「何だったって‥、これかい?これは、主人がいつも、乗っていた箒だよ。なぜか、いつもここにある‥。」

「箒の話じゃなくて、今の、タイムトラベルの話です。」

 

ドアマさんは、掃き掃除を続けている。

「教えて下さい!ビム・ナイツさんは、何者なんですか?」

「過去の大金持ちだよ。ビムのことも知らないなんて、どんな親に育てられたんだろうね。」

「国王です!」

リオは、美しい夕焼けの中を、家まで帰った。

リオが住むミミハムハーミンの奥には、『グァズラ』という地域がある。

どんな魔法族が住むのかは、謎である。

 

 

次の日。リオ、フィース、バップは、太い木の上で、分厚い本を広げていた。

フィースが読み上げた。

「ビムナイツ。コンピューターを発明したその人。彼が稼いだ額は、不可思議と言われている。」

 

「不可思議?不可思議っていくらだ?」

バップが聞き、リオが答えた。

「無量大数の前。億より、15先の単位。」

「リオって、数学が得意なんだな。」

「僕は数学が得意。」

 

「何不可思議円ですか?」

「さぁ。」

フィースは首をかしげた。

 

 

ビムは、ぼんやりとして、幻を見ていた。

ビムの初めての勤め先は最悪だった。

なんといっても、土木作業現場である。

土を掘っていると、女の人の死体が出てきた時はびっくりした。

 

仲間には、綺麗な奥さんがいたので、安心した。

ビムは、幸せな家庭を見ると祝福するタイプだ。

 

病気や身体障害者は、現場で働けない。

だから、自分の会社は、そういう人を雇おうと思った。

給料は、良いわけではなかった。

よくて20万だ。

でも、会社を設立し、大金持ちになるまで、実は、実家で暮らしていた。

 

上の人の給料は、40万とか、75万とか、かなり良かった。

でも、安心した。

幸せな家庭を祝福できる心は、雇用主に向いている。

神様は、ビムに、資本を与えた。

 

土木現場で働きながらも、ビムのプロジェクトは始動していた。

 

ビムは、パーソナルコンピューターにおいて、とても重要な権利を最初に取得する。

信じられない気分だったが、「まさか自分なんて。」という驚く顔は、大学の寮の鏡しか知らない。

 

『ボーカ、ボーカ。』

 

大事な著作物を持ち、家に帰る途中に、気味の悪い声が聞こえてきた。

「ん?」

 

「誰?」

 

何も聞こえない。

ビムは走って帰った。

こういう時は、走るのが一番いい。

大体の映画では、こういう時、歩いていて、襲われてしまう。

 

「ボーカ、ボーカ。」

「誰だ!!」

 

「気味が悪い。」

 

ビムは家に戻った。

庭がまぁまぁあるが、狭くて古い家だ。

たまに少女が遊びに来る。

母に懐いている子だ。

 

綺麗にガーデニングしてほしいが、チューリップや、枯れたようなカーネーションしかない。

父が、庭の隅に、犬の糞だめを作っている。

近い内に、家庭菜園を始めるとかで、肥料を作っているらしい。

 

「ただいま。」

「おかえり。ロムちゃんとポポイ君が来ているよ。」

ビムが覗くと、ロムちゃんとポポイ君の姉弟が、ビムが作ったゲームで遊んでいた。

 

「ビムちゃーん!」

「なんだい?」

「ほら!」

ロムちゃんは、ビムの絵を見せた。

 

「ね。上手に描けているでしょう。」

マリラは言った。

確かに、子供にしては上手だが、ビムの頭に、ミッキーの耳が描かれている。

 

「はああ。」

 

「父さん、いつ家庭菜園を始めるつもりだい?あの糞だめをなんとかしてほしいんだ。」

 

ウィリーは、駆け寄ってきた雑種のポムを抱いた。

「今週末さ。今日、マリラと一緒に種を買ってきたんだ。」

 

「さっさとしてくれよ‥。」

ビムは家の外を眺めた。さっきの男がまだ気になっていたのだ。

 

「ビム、ロムちゃんとポポイ君を、家まで送ってあげてちょうだい。」

 

 

「バイバイ。」

「おやすみ。」

2人を送り届け、家に戻ると、男が茂みから、家の中を伺っていた。

 

「誰だ。」

ビムが聞くと、男は顔をこちらに向けた。

長めの黒髪が美しく、端正な顔立ちだ。

 

「ボブ。」

男はこちらに来た。

「止めてくれ。僕の名前は、ビムだ。ナイツ家に何か用かい?」

 

「〇〇〇を発明したのは、この家の発明家かい?」

〇〇〇は、とても難しい名前だ。

 

「ああ、そうだ。○○〇を発明したのは、この家に住む僕だよ。」

「You are genius.」

「Thanks.」

その後、2人は、コンピューターの難しい会話をした。

 

少し議論し、握手をした。

 

「僕達は今、ストーリーの中にいる。」

男は言った。

 

「ああ、そうだな。」

 

「どちらが谷に落ち、どちらが山に登るかだ。」

「山頂はゴールじゃない。山を下り、家に帰って、ベッドで眠る。それがゴールだ。」

ビムが言うと、男は驚いた顔をした。

 

「谷に落ちても、川があって、泳いで家にたどりつければ、それはそれで、ハッピーエンドだ。‥なんの罪もなく、たどり着ければの話だが。」

 

男はまだ驚いている。

ビムの言った事の意味を考えているようだ。

 

「スティーブン。また会いたい。」

「じゃあ‥。」

スティーブンさんは、店の名刺をビムに渡した。

『スティーブ・ジョブズ』

 

 

 

西暦8001年の世界では、アダンが、Thailandの魔法族チャングズの反乱を止めている所だった。

マトリアシルの密猟者が、メスの黒ヒョウを殺したのだ。

チャングズは象を操る魔法族で、民族化している。

 

チャングズは、密猟者のジープに向かって、魔法の矢を放った。

アダンは大きな杖で止めたが、チャングズの若い女が威嚇したので、打つのを許した。

そもそも、マトリアシルの密猟者が悪いのだ。

 

バン

密猟者の男は倒れた。

どうやら死んだらしい。

アダンは振り向き、顔をしかめた。

 

不思議な風が吹いたので、空を見上げた。

ペガサスに変身したアドニスだ。

黒魔術師の男と一緒に、瞬間移動してきたらしい。

アドニスは翼をはためかせ、矢を跳ね返した。

アドニスの魔法はすごい。

跳ね返した矢は、チャングズに当たらなかった。

 

Thailandには、6000年前から続く不思議な地名がたくさんある。

そして、世にも美しい女と男が住んでいる。

Thailandには、魔法族は多い。

でも、Thailandの85パーセントが人間なので、魔法族へはマトリアシルへの移住を進めているが、言う事を聞かない。

もともと奇妙な力を持つ土地だ。

2025年、魔法使いHが、人間に魔法族の存在を示してからの、Thailandの魔法史、またそれ以前の魔法史は、謎に包まれている。

 

「ありがとう、アドニス。」

アダンは言い、軽く息を飲んでから、続けて言った。

「密猟者が一人死んでしまった。チャングズの女の矢が当たったんだ。」

 

「見逃します。‥早く帰りたい。リオが僕と遊びたがっている。」

 

 

アダン、アドニス、リオ、フィース、バップは、スポーツセンターに遊びに来た。

アダンとアドニスは、子供達のピンポンを見守っている。

 

 

このスポーツセンターに来る途中、リオはアドニスに言った。

「この前、タイムトラベルした。」

「どこに?」

「2018年。ビム・ナイツさんの会社に‥。」

「ビム・ナイツ?」

アドニスは顔をしかめた。

 

歩いていても、スポーツセンターらしき場所は見えない。

「どこぉ~!」

バップとフィースは、走り出した。

 

アダンが歩き、手をかざすと、スポーツセンターが現れた。

このスポーツセンターは、16歳以下は、保護者同伴が必要である。

 

 

体操の場所では、フィースはハンドスプリングをし、バップも跳び箱のすごい技を決めた。

リオはアダンに抱っこされ、鉄棒にぶら下がったが、何も出来ない。

 

「あー。」

リオは声を出した。

 

「あああ。」

フィースとバップもため息をついた。

 

アドニスも腕を組んで、壁によりかかりながら見ていた。

「こんにちは、あなた国王?」

アドニスは目を見開いた。

一瞬、女性がシーアに見えたのだ。

女性は綺麗な黒人女性だ。

 

「国王陛下ね。」

「違いますよ。」

「いえ、そうよ。私の名前は、クロウ・ミラーです。よろしく。」

アドニスは、諦めたように、クロウと握手をした。

 

「バレエのレッスン、始まるよぉ~!」

子供達3人ははしゃいでいる。

 

「じゃ、これで。」

「ええ、また。」

クロウはミステリアスな感じで笑った。

 

リオとフィースとバップは、子供といっても15才。もうすぐ16だ。

バレエではシニアに入る。

バレエは初体験だ。

トォシューズは、思ったよりきつい。

「これじゃ、足がおかしくなるよ。」

バップは言った。

 

「がんばろ。しなやかな動きを見につけるため。」

リオは言った。

 

「アンドゥトロワ、アンドゥトロワ。」

先生の言葉に合わせて、体を動かしていく。

 

一人、熱心にバレエに取り組む黒人少年がいる。

3人は、その少年を見た。かなり上手なようだ。

 

休憩時間、3人は黒人少年に話しかけた。

「バレエ、上手なんですね。」

「バレリーナになりたいから‥。」

「へぇ‥。」

 

「テアロス、お手本を。」

先生が言うと、黒人少年テアロス・ハロウィンは踊りだした。

 

「わあ‥。」

「すげぇ‥。」

 

 

バレエのレッスンが終わると、少年4人はバスケをして遊んだ。

アドニスはアダンに言った。

「この前、リオがタイムトラベルをしたようです。」

「そうか。どこに行ったのかな?」

「ビム・ナイツさんの会社らしいんですけど。」

アドニスは言い、無表情のまま、バスケットボールを持った。

 

「あー‥、それなら、君が昔、行った会社だな。」

アダンは言い、アドニスはシュートを決めた。

 

アドニスは警察官になる前、過去にタイムトラベルをして、その会社の面接を受けたのだ。その時の事を思い出した。

廊下に座っていると、ビムさんが歩いてくる。

アドニスは目を見開いた。

ビムさんは言った。

「才能があるかないかのテストだよ。ない者が選ばれる。いいね?」

 

「ビムさんっ。」

熱心な若者が、ビムさんの手をとった。

「やめたまえ。常識がある者は選ばない。ない者に、常識をとことん叩き込む。」

 

アドニスは下を向いた。

 

 

帰り道、リオ、バップ、フィースは、テアロスに言った。

「テアロス、一緒にタイムトラベルしようぜ。」

「タイムトラベル?」

「そう、リオが行った場所にさ。」

「でもそれ、どこから?」

「ドアマさんの家。」

「ドアマさん?」

「超怖いおばあさん。」

 

 

まだ呆然と、昔のことを考えているアドニス国王を、アダンは心配そうに見た。

「アドニス国王、大丈夫かい?」

「いや‥。」

「マトリアシルは、世界最大の国だ。辛くなる事があっても、あまり深く考えない方がいい。ただ、任務を遂行するんだ。」

「分かりました。」

「いいかい?明日には持ち込むな。」

 

 

「じゃ、明日な。」

「放課後にね。」

「いいよ。」

 

「じゃあねー!」

 

 

 

少年を送り届け、リオの家の前まで来ると、アダンは瞬間移動で消えた。

アドニスはまだ呆然としたままだが、リオをハグしてキスし、ペガサスに変身して消えた。

「怪獣‥。」

最近のリオは、アドニスにキスされると気持ち悪くなる。

昔は、アドニスのペガサスの姿がかっこよくて仕方なかったが、今は、ケモノか、カイジュウに思える。

 

「おやおや、あの子ったら、挨拶もなしかい。」

ペラお婆ちゃんが出てきて、空を見上げた。

空には、いっぱいの星が出ている。

 

「リオ、夕食が出来ているよ。家に入りなさい。」

サシムお爺ちゃんが顔を出した。

 

「なんて美しい星‥。」

ペラお婆ちゃんは言い、妖精の力で、見た目を40年若返らせ、バレエを踊りだした。

 

「お婆ちゃん、おかしくなってきちゃったな。」

サシムお爺ちゃんはリオに言った。

ペラのまわりには、幻の妖精たちが集まり、みんなでバレエをしている。

とても美しい。

 

 

次の日の放課後。

4人は集まった。

テアロスは黒魔術師だ。瞬間移動で、山の方の学校に通っているらしい。

4人とも、部活を休んだ。

テアロスはバレエ部、バップとフィースはサッカー部、リオは陸上部だ。

 

「ドアマさん!」

夫の箒で庭掃除をしているドアマさんに、リオが声をかけると、振り向いたドアマさんはギョッとした顔をした。

 

 

「嘘でしょう、スティーブ。」

母親は言った。

「スティーブン、冗談だろう。」

父親も言った。

 

「冗談じゃない。陽性だと言われたんだ。」

スティーブは椅子に座れ、頭を抱え、座り込んだ。

「そんなわけないよ、スティーブ。」

「何かの間違いに決まっているさ。」

友達のウォズとロイも言っている。

 

「エイズになる可能性は‥」

スティーブはこの街のエイズ人口をあげ、パーセントを言った。

「俺がなるはずがないんだ。」

 

「ああ、聞いてもいいかい?」

 

「誰とやった?」

母親と父親も覗き込んだ。

 

4人の少年が来てしまったのは、スティーブさんの家だった。

 

「ああ‥それは答えられない。」

「答えられない?答えろよ、スティーブ!」

 

ロイは4人の少年に気づいた。

「安全のために、もう一度、病院に行こう。」

「病院には行きたくない。」

 

ウォズも言った。

「いや、病院に行くんだ。子供達も心配して見に来てる。」

 

 

4人の少年はバスに乗せられた。

スティーブさんと病院に行くのだ。

「心配よね、もしかしたら自分もHIVなんじゃないかって‥。大丈夫よぉ~。」

スティーブさんの母親は言った。

「ほら、飴玉がある。食べてみなさい。」

父親が飴玉をくれた。

「ありがとうございます。」

4人の少年は目配せをした。

 

 

病院の廊下で、母親が泣き叫んだ。

「嘘でしょう、スティーブ!!」

「スティーブン、人生はこれからだよ。」

父親は言った。

 

ウォズとロイは怯えて泣いている。

スティーブは言った。

「これからも友達でいてくれるな?」

 

「ああ~‥。」

ロイは息をもらし、上を向いた。

「ウォズ、君はずっと俺の友達だろう?」

スティーブは聞いた。

ウォズは首を軽くふりながら、言った。

「これ以上、近寄るな。」

 

「なんで?俺達、同士じゃないか。」

「同士?ふざけるな!最初(ハナ)から、お前とは考えがあってなかった。お前は俺のアイディアを、横取りしようとしたんだ!」

 

「そんなことない‥。」

スティーブは、ウォズとロイをハグしようとした。

 

「近寄るなと言っただろう!!」

ウォズはキーホルダーナイフを、スティーブに向けた。

ロイは泣いている。

 

ちょうど、4人の少年は、血液検査を受け、診察室から出てきた。

 

「やめなさい、スティーブ。」

「スティーブン、落ち着くんだ。」

 

「落ち着くのは俺じゃない、ウォズとロイの方だ。」

スティーブが言った。

 

「ウォズさん、落ち着いてください。」

「あなたの言う通り、スティーブは悪い事をしました。」

両親がなだめると、ウォズはナイフをおろした。

黒人ナースが来た。

「念のため、聞いてもいいですか?」

「はい。」

「相手の名前は?」

「ああ‥リサだ。」

 

 

4人はまたタイムトラベルをし、マトリアシルに戻った。

「今の誰?」

「スティーブ・ジョブズさんだよ。これを初めて作った人。」

テアロスは、iPhoneを出した。

 

 

「ただいま。」

「おかえりー。」

バップが家に帰ると、お兄ちゃんと友達が、ゲームをして遊んでいた。

 

「ただいま。」

家についたフィースの表情は暗い。

両親は共働きで夜は遅いし、お姉ちゃんが彼氏を家に連れ込んでいるのだ。

『カレー食べていいよ♡その代わり、この事は秘密ね。』

姉の字だ。

 

「ただいま。」

テアロスが帰ると、両親が何かの議論をしている。

よく聞くと、部長の悪口のようだ。

「よしなよ、悪口なんて。」

「いい?テアロス。相手は悪人よ。悪口くらい言わなきゃ、なめられる。」

「そうだぞ、テアロス。お前は仮にも、黒魔術師なんだからな。‥その見た目で妖精なわけない。」

 

 

「遅いじゃないか!!」

リオが家に帰ると、アドニスが待ち受けていた。

「どこかで飯を食ってきたんだろう。ラーメンか?それとも餃子か?」

 

リオは何も言わない。

16才の男が、夜7時をこえただけで、こんなに怒るなんて、ちょっとおかしい。

「マックか?フィッシュアンドチップスか?ミスドか?それともスタバか?」

 

「やめなさい、アドニス。16才の息子の帰りが、夜7時をこえただけで、こんなに怒るなんて、気ちがいを超えている。」

サシムお爺ちゃんが、アドニスを止めた。

「だけど、連絡なしで、何かを食べてきたんだ。」

「僕、何も食べてません。」

 

「リオ、食事が出来てるよ。食べなさい。」

ペラお婆ちゃんが、リオを椅子に座らせた。

 

「お前は勘違い息子だよ。」

ペラお婆ちゃんがアドニスに言うと、アドニスは背を向けた。

 

 

夏の夕方。

それは、いつ頃の出来事だっただろう?

こんな景色は何度だって見たから、いつの事かなんて、詳しくは覚えていない。

 

大きな入道雲が赤く染まっている。

『ソフトクリーム』

入道雲を見ると言ってしまう癖がある。自分では全く変だと思わないが、子供達は、みんな怪訝な顔をする。

 

「ストロベリーソフトクリームは、食べた事がないな。」

「なんだって?」

 

「ストロベリーソフトクリームを、食べた事があるか?」

スティーブは聞いた。

「ああ~‥そういえば、ないな。」

 

「ロン、食べたことある?」

ウォズは続けてきいた。

「いーや。チョコレートのミックスしか、食べた事ない。」

「だよな。」

 

スティーブさんは、美しい雲を眺めている。

「どうした?スティーブ。」

ロンは覗き込んだ。

 

「綺麗だよな。自然に勝てるアーティストなんていない。」

ウォズは言った。

スティーブは何も言わない。

ただ、美しい髪が、風になびいている。

ウォズはスティーブを見た。

 

「ああ‥、スティーブ。君は昔、LSDをやっていたんだろう?」

「Yeah.」

 

ロンは夕日がまぶしそうにしている。

ウォズは聞いた。

「それを、君は、今もやっている。違うかい?」

 

スティーブは軽く笑った。

 

 

ビムはベッドで目覚めた。

その頃のビムは、布団の色は、ブルーと決め込んでいた。

今ではアースカラーと決めているが‥。

 

その頃のビムは、アラサーのくせに、ミッキーマウスが好きで、ミッキーマウスの掛布団カバーをつけていた。

 

ハッ‥

「夢か。」

ビムは起き、鏡で、しげしげと自分の顔を見た。

ビムは、鍵が沢山ついた家を建てた。両親にもだ。

 

50才のビムは、スーツを着て、出社した。

黒い鞄以外、何も持たない。

鞄の重さは、6キロ以下だ。パソコンは、重い時もある。

 

 

大体は、自家用車で通勤だが、なんとなく、今日は違う。

ビムは世界最大の著作権を持っている男だ。命を狙われる日もある。

今日はヤバい気がした。

立ち止まり、黒いピッチ(PHS)を出して、警察を呼んだ。

念のためだ。

 

「やぁ、ビムだ。」

 

「車の様子がおかしい。見ておいてくれないか?」

専任の警官は、30才。ビムより20才年下だ。

 

「世界一金持ちの警護ができるなんて、ありがたいと思え。」

ビムは、切ったピッチに向かって言った。

 

「おじさん、お弁当のにおいがしないね。」

バスの中で、子供が話しかけた。

子供は何も知らない。

『stupid』

ビムはつぶやいた。

可愛い子供には、愛想なくしてしまう。

可愛い高校生にも、可愛い社員にもだ。

 

「なんで?ご飯はいいの?」

子供は聞き、ビムは鼻で笑った。

 

「わかった、おじさんの仕事は、午前で終わりでしょ?」

「ちがうよ。おじさんの会社には、レストランがあるんだ。」

「レストラン?」

「そうだよ。」

「なければ、どうするの?」

「なければ、コンビニエンスストアだな。」

 

「コンビニエンスストアもなければ‥。」

「コンビニがなければ、おじさんは何を食べるんだい?」

「お母さんの料理。」

「おじさんには、お母さんはいないよ。」

子供は気まずそうに、ビムの黒い鞄を持ってみたりした。

 

「ねえ、これ何?」

「パーソナルコンピューター。知らないかい?」

「知ってるよ、だって‥。」

子供が言いかけた時、中年の女性が男の子を止めた。

 

「さよなら、ボウヤ。」

ビムはバスを降り、男の子は怪訝そうに窓からビムを見た。

バス停は、ビムの会社の前だ。

 

自分の会社では、基本的には速足になり、コートの襟を立てるようにする。

夏なら、赤フチメガネだ。

そうすれば、分からない。

『実際の年齢より、僕は若い。』

ビムはエレベーターに乗り込んだ。

 

「どこまで?」

アラフォーの社員がタメ口で聞いた。

「最上階まで。」

アラフォー社員は驚いて、ビムを見た。

「じゃ、君、知り合いかい?」

「ああ‥そうだねぇ‥。」

「ふん、うらやましい。僕はまだ、話したことがない。その‥プロフェッサーとね。」

「ああ‥。」

「彼がゲイだというのは本当かな?」

 

ビムは吹き出し、答えた。

「違うと思うよ。」

「ふん。僕は処理課だ。」

男はエレベーターを降りた。

 

ビムは目を落とした。

 

その頃、ビムの専任の警察官、レイラン・ロイスは、仲間の警官達と一緒に、ビムの車を調べていた。

車のキーを回すが、エンジンがかからない。

「ただの故障か。」

レイランは言った。

他の警官達は、不安そうに、うなずいた。

一人の、ブロンドの小柄な警官が聞いた。

 

「ブレーキペダルを押しながら、回したかい?」

「ああ。やった。」

「じゃあ、アクセルペダルは?」

「え‥。」

警官達は、顔を見合わせた。

 

レイランが言った。

「そんなことしたら、車が急発進するかもしれない。」

「きっと、大丈夫だ。やってみよう。」

「いや、危険だよ。ダリアン。」

他の警官達も、ダリアンを不安げに見つめた。

 

「僕がやるよ。君達は下がっていてくれ。」

ダリアンは言った。

 

レイランは、軽くうなずきながら、他の警官達を下がらせた。

 

バン

 

車は爆発した。

 

 

社長室で仕事をしていたビムは、よからぬ気配を感じ取り、窓から外を見て、顔をしかめた。

真っ黒な煙が、自分の家の辺りから上がっている。

「こりゃ、やられちゃったかなぁ。」

 

プルルル

次の瞬間、電話がなった。

「はい。」

「こちら警察です。ビム様の車に仕掛けられていた爆弾が、爆発しました。」

「そうか。でも、これから、会議がある。終わり次第、向かう。」

会議があるのは嘘だ。

ビムはいつも通り会社で過ごし、夕方に家に戻ると、警察やカメラマンで溢れかえっていた。

「あなたが車の持ち主様ですか?」

アナウンサーが聞いた。

「ああ、そうだよ。ただ、偽名を使ってほしい。実は僕は、マイクロの社長なんだ。」

「オーマイガー!」

アナウンサーは叫んだ。

とんでもないネタだったが、テレビ局は、ビムの味方をした。

 

 

深夜1時。ようやくベッドに横になれた。

こんな時、妻がいてくれれば‥。

「結局、自爆かよ。」

ビムは言い、目を閉じた。

プルルルル

「なんだ?」

 

「はい。」

「やぁ、スティーブだ。」

スティーブは何も知らない。

「ああ。どうした?」

「○○をついに開発したんだ。だから、一番に、君に伝えようと思ってね。」

「そうか‥おめでとう。実は、僕の方は、自家用車が爆破されたんだよ。」

 

「犯人は、死んだ。自分で爆発させて、死んだんだ。」

 

スティーブは電話を切り、ベッドに横になった。

まるで、仕事が成功した日に、恋人が事故にあって悲しい思いをしたような、気分だった。それは、もう二度と味わいたくないと思っていた気持ちだった。

 

 

ビムが30代半ばの出来事だ。

「ハッロォー。」

夜、家に帰る途中、スティーブが飛び出して来た。

ビムは著作物を持ち、驚いて立ち止まった。

命の危険はなんとなく感じていたが、その頃のビムは、いつ死んでもいいと思っていた。

今思えば、その頃の自分は、何一つ、やり切った事などないのに‥。

 

自分が築き上げた巨大な産物を、どうすればいい?

会社役員の会議では、解決できない。

まして、消費者は、この産物の行方を追ってすらいない。

ただ目の前の事を、調べているだけだ。

 

この産物を一言で現すなら、恐怖だ。

みんな恐くて、手をつけなかった。

命がけになれば、なんだって出来るのに、誰もしようとしない。

どうしてだろう?

みんな大切な家族がいるから、命が惜しいのだ。

自分もそれが一番欲しかった。

スターはみんなそう言う‥。

 

「ハッロゥ。」

スティーブはニッコリ笑って前に立った。

この男は良い男だ。

 

「君は恋人にふさわしい男だろうな。」

「オオ‥。」

スティーブは胸をおさえ、おどけてみせた。

 

「ゲイだって、本当だったの?」

「まさか。答えはノーだ。」

 

「嘘おっしゃい。だって、今‥。」

「断言しよう。僕はゲイではない。」

「そうかい。」

スティーブはズボンで手の汗を拭いた。

「フゥ」

スティーブは手にツバをとばした。

 

「何をやっている‥。」

「握手してくれ。」

「無理だ。手を拭いてくれ。」

ビムはティッシュを出した。

しかし、スティーブは無理やりビムの腕をつかんだ。

 

「エイズと診断された。」

「そんなに喜ぶ事ではないだろう。」

ビムは厳格に答えた。

 

「それで‥大丈夫か?君の下にいる社員は、全員無事なのか?」

「無事だといいな。よければ、君の血液をくれ。治るかもしれない。」

「無理だ。君とは血液型が違う。」

ビムは背を向けた。

 

「AB RH-。君の血液型はそれだろう?」

「なぜ知っている?その事は両親から、他人に言うなと教えられてきた。」

「簡単さ。君の家の郵便物を調べさせてもらったんだ。」

「なぜそんな事を‥。」

「俺の会社の製品を、君の会社がパクっているからだ。」

「そんな事はありえない。知っているかい?○○の権利は、うちが持っているんだ‥。」

プルルル

スティーブのピッチが鳴った。

「イエス?」

スティーブは少し話し、切った。

「帰る。」

「そう。嬉しいよ。」

「子供が待っているんだ。」

スティーブが子供と言ったので、ビムは少しよろけた。

「Child?君には子供がいたんだねぇ。」

「他人の子供さ。俺はシッターの仕事をしているんだ。」

 

「You are crazy.」

「何か言ったかい?俺の会社の新しい名刺だよ。」

スティーブは名刺を渡し、止めてあったマウンテンバイクに乗って行ってしまった。

 

「きっと君は、うちの会社に吸収されるだろう。そうなった時、家族がいたら安心だったのに。」

ビムは誰もいない夜道でつぶやいた。

 

スティーブは若者がたむろする路地で、マウンテンバイクを軽く地面に倒し、

転がっている缶を蹴った。

スティーブは奇声をあげたので、若者達はじろじろと見た。

 

 

次の日、ビムは名刺ブックに、スティーブの新しい名刺をいれた。

60才のビムは、スティーブの名刺を20枚くらい持っている。

各国の首脳、トップ選手の名刺‥。

おそらく、ビムの持つ名刺量は世界一だろう。

ビムはよく考える。

『いつか、名刺博物館を作ろうかな‥。著名人でなくとも、私が所有していれば、著名人ということになる。』

ビムはニッコリしてうなずいた。

 

トントン

30代後半の姿に戻ったビムは、デスクで顔をあげた。

メガネをかけ直す。

この頃の自分は、今より大胆だったが、年老いていた‥。

 

「こんにちは、先日申し上げた、僕の新しい提案についてです。」

社員は、新しい提案の話を始めた。

男は延々と話し続けるが、大体の話は、男が広げている図を見れば分かる。

いい案だ。

「いい案だね。」

「ありがとうございます。」

「それに、君はいい男だ。俳優に向いている。」

ビムが言ったので、男は言葉をつまってしまった。

「でも‥俳優になるには、いろいろな事を経験しないといけないので‥。」

「ああ、そうだね。君はまだ、私の家にいるべきだよ。」

ビムが言うと、男は泣きだしそうになり、会釈し、出て行ってしまった。

 

時々、英語は難しい‥。

男は会社を辞めた。

ビム社長が、自分を恋人候補に考えていると、勘違いしたのだ。

 

「あの子の提案を、採用しようと思っている。」

ビムは秘書に言った。

秘書のティムはまぁまぁ若くて、ハンサムな男だ。

「ああ‥、ケイティブは、先日退社しました。」

「なぜ?」

「理由は分かりません。ただ、ビム様には、申し訳ないと言っていました。」

「そう‥。」

ビムは理由を考えた。

 

数日後、会社の前で工事が行われた。

ビムが窓から見ると、作業員の格好をしたケイティブはビムを見上げている。

まるで睨みつけるかのようだが、迷っているような表情がうかがえる。

ビムは意味が分からず、窓から背を向け、首をかしげた。

ビムは、ケイティブに一千万円振り込んだ。

ケイティブは、会社に新しい資本をもたらす鍵を作った男だ。

これくらいの事は、当然である。

ビムは資本主義だ。

 

 

「オンラインは素晴らしい。」

60才の姿に戻ったビムは言った。

 

ビムの会社には、綺麗な女性がたくさんいる。

みんな何も言わない。

まっすぐ前を向き、かっこよく歩いて行く。

 

「お前ら。」

リオが最初に出会った男が、リオ、バップ、フィース、テアロスを捕まえた。

 

「ビム様。またこの子供です。他にも3人、新入りを連れてきました。」

「Thanks.」

 

「ただ、今はちょっと困るかな‥。」

ビムさんは、何か書きながらつぶやき、4人はソファーに座った。

 

「ほら。」

ビムさんはゲームを貸してくれた。

「オンラインゲームでもしていなさい。今、おじさんは、君達と話している時間がないんだよ。」

 

 

会社を始めた数年は忙しかったが、10年目くらいで辛くなった。

下の階の者は、与えられた仕事をこなしていくが、ビムは与える側の人間だ。時々、やる事が分からなくなる。

眠くなったり、ゲームをしたくなったりした。

でも、持ち前の体力で耐えた。

若い頃は、スポーツ選手に対して、憧れや尊敬の念を抱いたりした。

デスクの引き出しを開いて、スポーツ選手の写真を見る。

 

見習わなくてはならないのは、体力と忍耐力である。

それさえあれば、生活するのなんて、きっと楽だろう。

 

それか時々は、一番大きな引き出しから、退職者名簿を見る。

我が子のように可愛く、にくたらしい社員の名前には、赤ペンで斜線する。

どこかで、スーパースターになってもらいたいからだ。

 

その他の愛する家族達の名前は消さない。

ビムは、他人の名前を消すことと、自分の名前が消されることが大の苦手だった。

 

コンコン

40代に入った頃の出来事だ。

「はい。」

白人男に支えられ、泣いている黒人女性従業員が入ってきた。

 

「どうした?」

「リリーが、コンピューターに水をこぼしてしまったんです。」

「大丈夫だ、よくある。」

「それが、最新の○○なんです。」

 

ビムは椅子を動かした。

「大丈夫だよ。○○に水がかかってなければ、すぐに直せる。」

「ビムさん、申し訳ございません。」

「いやいい。それより、僕は、申し訳ございませんと言われるのが、一番苦手だ。」

 

若い二人は、社長室を出た。

リリーはまだ泣いている。

出た所で、男が話しかけた。

「大丈夫かい?」

 

「はい。」

白人男が答えた。

「分かった、モデルになりたいんでしょう?それを、ビム社長に反対されたんだ。」

「いえ‥。」

2人は立ち止まり、振り向いた。

 

「モデルにはならない方がいい。男は、有名人は苦手だ。平凡な美人が一番好きなんだよ。」

スティーブが言うと、白人男はリリーの肩を持ち、去った。

 

 

スティーブはノックなしで、社長室に入った。

「スティーブン。どうした?」

「どうした?しらばっくれるな!!また、俺達のプランを探りやがって。」

「探ってなんかいない。大体、君達には真似出来ない。○○〇の権利は、こちらにある。」

「ああ‥。」

スティーブはため息をつき、社長室をダラダラと歩き回った。

 

「ティム、こいつをどうにかしてくれ。」

「Who?」

「彼は、スティーブ・ジョブズだよ。」

「オーマイガー!」

ティムは嬉しそうに、スティーブと握手をした。

「僕はちょっと‥。」

ティムは顔をほてらせ、社長室を出て行ってしまった。

 

スティーブはだらだらと歩き、ビムの肩をもんだりした。

「なぁ、ビム。俺達は、これからどうなるだろう?」

「これから?未来のことではなく、大切なのは、現在だ。」

 

「現在の君は、まるで薬中の大学生だ。」

「薬はもうやめた。」

スティーブはビムから手を離した。

 

スティーブはしばらくの間、窓の外を眺めた。

ビムはコンピューターに向かって、数式パズルのような物を打ち続ける仕事を続けた。

ビムの名前は、1万年先までも、確実に残るであろう。

そんな男は、やはり只者ではない。

どんなに優秀な従業員が入っても、ビムの方が数式パズルを得意だった。

コンピューターの脳みそを作る仕事だ。

難しい事ではない。でも、向いていない人は勉強しなくてもいい。

つまらないロボットになるだけだ。

 

「ここはまるで学校だ。」

「環境はね。でも、みんなきちんと働いている。」

「どこで学んできたやら‥。」

「どういう意味だい?」

「あいつは、前、うちにいた奴だ‥。」

「君の所が、嫌になったんだよ。」

 

「‥やっぱり、○○を譲ってくれないか?」

「それは出来ない。」

「分かった。では、こうする事にしよう。俺はルーカスを買収する。」

「ルーカス?」

「俺が先に言った、手を出すな。」

「何のことだい?まさかサーカス団を‥。」

 

ビムが言うと、スティーブは高笑いした。

 

エレベーターが止まるたび、従業員達は、スティーブをジロジロ見た。

何かコソコソ言っている。

スティーブは興味がありそうな部署に降り、見学をした。

 

 

「エキジット。」

最後のキーを打った、60才のビムは言った。

 

12時のチャイムが鳴る。

「やっとお昼だ。」

ビムは、4人の少年に言った。

4人はここがどこか分からなくなっている感じだ。

無理もない、ビムのゲームは完璧だからだ。

ビムはパソコンの強度についての実験も完璧だった。

目玉商品の時は、大体1000件くらい行う。

当然だ、これで世界を作る。

 

「レストランに行こう。」

綺麗な社内を歩いて回る。

ビムは挨拶をする。

掃除夫にも‥。

掃除夫と普通の従業員の時給は変わりない。

ビムは会社の中で、忍耐力と体力とモラルを、分からないように、指導するようにしていた。

確かに、社員とパートというくくりはあるが、あまり変わりないと思っている。

管理する側の人間にも、差別するなと指導している。

社員が資本者で、パートが労働者という、変なかんちがいが、世界あちこちで見られている。

これは大変な異常事態だ。

ケイティブは資本者の仲間入りだったのに‥。

「残念だ。」

ビムは1人事を言った。

 

4人の少年はちらりとビムを見る。

まるで夢から覚めたような顔だ。

 

今日のレストランはバイキング形式。

会社の中には、高級店もあれば、寿司屋もある。

店には、一般客も入れる。

 

「なんでもとっていいんだよ。今日はおじさんのおごりだからね。」

 

 

サフランライスを食べながら、テアロスが言った。

「僕、3時から、バレエのレッスンがあるんだ。」

タイムトラベルでは、時差はない。

 

 

ビムさんは、最近入ったばかりなのに、なぜかビムさんに親しげな中年男と談笑している。

「じゃ‥。」

「うん、頑張ってくれ。」

ビムさんは言い、男は笑顔で去った。

 

「あの、僕達、そろそろ帰ります。」

「御馳走していただいて、ありがとうございました。」

 

「いいんだよ。またタイムトラベルしてきてくれ。」

ビムさんは笑った。

「ほら、僕の名刺だ。」

ビムさんは4人に名刺をくれた。

 

 

「名刺なんてもらったの、僕、初めてだよ。」

フィースは言った。

「帰る前にトイレ行ってもいい?」

バップは名刺を持ったまま、トイレに入った。

 

「オーノー。バップ。」

フィースが青ざめた表情で、男子トイレで言った。

なんと、バップが、男子便器の中に、ビムさんの名刺を落としてしまったのだ。

 

「これどうするの?」

「バップ、僕、こんな光景見たの初めて‥。」

テアロスとリオも言い、バップは黙ってうなだれている。

 

「アハハ。それで商談は成立しそうだ。」

ディキアランが同僚と入ってきた。

ディキアランは、朝の男だ。

 

「おっと‥。また君達か。用が済んだのなら、さっさとトイレから出ろ。」

ディキアランは言い、ため息をつきながら、用を足す態勢に入った。

「オーマイガッ。」

ディキアランは、用を足さず、ズボンに戻した。    

「誰がやった!」

 

リオ、フィース、テアロスは、バップを指さした。

 

「バカタレ!」

ディキアランはゴム手袋をして、ビムさんの名刺を拾い、

「ソーリー。」

ゴミ箱に捨てた。

 

水道で念入りに手を洗いながら、ディキアランは言った。

「しつけがなってない。‥今度、お父さんと一緒に来てくれ。」

 

「ごめんなさい。」

「ごめんなさいで済む話か。ビム様は世界一の金持ちだぞ。つまり、世界で最も偉大な人物だ‥。」

ディキアランは言い、4人はつばを飲んだ。

 

「反省文を書いてもらおう。」

トイレを出たディキアランは言い、テアロスは顔をしかめてリオを見た。

 

「こちらだ。」

ディキアランはドアを開けた。

 

「何をしている?」

そこに現れたのは、ビムさんだ。

「ビム様‥。」

「この子達は、もう帰らないといけない。この後、予定がある。」

「でも、こいつらはビム様の‥。」

 

「ごめんなさい!!」

「おい‥。」

「せっかくいただいた名刺を、トイレに落としてしまって‥。」

ディキアランは止めたが、バップは泣きながら、ビムに抱きついた。

 

「いいんだ。気にすることない。」

ビムは優しく言った。

 

ビムは昔の事を思い出した。

それは、ITの世界に入り、2枚目の名刺をもらった日のことだ。

 

「キアラス・レダン?おかしな名前。」

キアラスは金髪の髪を綺麗に整えた、スーツの男だ。

「ふーん。でも、もう関わることないや。」

 

ビムは、排水溝に名刺を落とし、暗い目をした。

排水溝にゴミを入れてはいけないことを分かっていた。

 

でも、その頃のビムは、愛をもらっていないので、心は冷たい少年だった。

 

ビムは顔を固くしたまま、実家に戻った。

 

ビムにも一応、仲間がいた。

とても古い付き合いの友人だ。

 

「‥じゃあ、キアラスさんに電話してよ。」

友人のジャックが言った。

「え?」

ビムは顔をしかめた。

「何。キアラスさんから名刺もらったでしょう?」

「ない。捨ててしまった。」

「ばかだな‥。もらった名刺はちゃんと取っておけ。」

 

 

60才に戻ったビムは、エレベーターで1階に降りた。

なんとなく、ロビーのカフェのアイスオレが飲みたくなったのだ。

 

アイスオレといえば‥。スティーブが会社に遊びに来た時のことだ。

スティーブはビムの肩をもんでいる。

『‥ったく、邪魔だなぁ。』

 

「ビム、何か俺に出来ることは?」

スティーブは調子がよかった。

ビムに、権利の一部を譲ってもらったのだ。

 

「ない。」

「遠慮せずに、何でも言ってくれ。」

「じゃあ、1階のカフェで、アイスオレを買ってきてくれ。」

「分かった。」

 

数分して、スティーブは戻ってきた。

デスクに置いたのは、アイスミルクだ。

ビムは顔をしかめた。

「アイスオレと言っただろう。なぜアイスミルクを。」

「ああ~、店員にアイスオレと伝えたら、これを出してきたんだ。」

 

 

アイスカフェオレを持ち、エレベーターで上に昇る。

処理課で、一人の男が大声を出している。

前にエレベーターで話した男だ。

「ちょっと、これを持っていてくれ。」

ビムはアイスカフェオレを、25才の新米男に手渡した。

 

「やめなさい、君。」

ビムが止めると男は振り向いた。

 

「こいつが、会社の金を横領していたんだ。」

「そうか。でもいい。許してやってくれ。」

 

「社長室に行こう。」

ビムが見ると、新米男はビムのアイスカフェオレを飲んでしまっている。

 

「やっぱり、何か飲みながら、話そうか。」

ビムは提案した。

 

ビムは、一階のカフェで、ジュアリアンの話を聞いた。

多分一時間くらいだ。

 

「ふん、それは辛かったねぇ。」

「辛いなんてもんじゃない。地獄だった。」

 

「この事をビム様が知ったら、どう思うだろう?」

ジュアリアンは、まだ相手がビムだという事に気づいていない。

 

「はあ‥。」

 

2人はエレベーターに乗った。

「何階だ?」

「ああ、最上階だ。」

 

「ビム様に告げ口する気だな。この‥色ボケ坊主めが。」

ジュアリアンはビムのおでこにデコピンをした。

 

「じゃあな、お坊ちゃま。」

ジュアリアンは処理課で降りた。

 

 

 

社長室のデスクで、ビムはため息をついた。

あの日の事を思い出す。母が亡くなった日の事だ。

 

母は胸を抑えて言った。

「ビム‥母さんね、医者からもうダメだって言われているの。」

「ああ、その事は、先生から聞いているよ。」

 

「包丁‥。」

「何するんだい?」

「漬物を切るの。父さんにね。」

 

「ああ、父さんにか。」

 

ジャックが来た。ジャックはビムの従兄だ。

「どうした?おじさんは、ずいぶん前に亡くなったはずだ。」

「ああ、そうだった。」

ビムは我にかえった。

 

「あああ。」

マリラは包丁を落とし、泣き崩れた。

 

「母さん、大丈夫かい?」

ビムは声をかけた。

「ベッドに寝かせよう。」

ジャックが提案し、マリラをベッドに寝かせた。

 

 

マリラは息を引き取った。

「母さん‥。」

ビムは泣き崩れた。

 

「ビム、君は最後まで、よく看病した。」

「でも‥。」

 

なんとなく、納得がいかなかった。

仕事をいつも通りこなしていたし、母を長生きさせたというより、逝かせた感じがしたのだ。

 

お葬式には、赤い目をしたロムちゃんが旦那さんと来た。

「ロムちゃん、よく来てくれたね。」

ビムが言うと、ロムちゃんは泣いて、ビムにハグした。

 

「兄さん。母さんの事、まかせっきりにしてごめん。」

弟だ。弟は牧場を経営している。

従妹も従弟も弟も、年下という年下は、ビムに迷惑をかけてきた。

 

「いいんだ。母さんに、ありがとうを言おう。」

ビムが言うと、弟達は、涙目でうなずいた。

 

「お母さん、ありがとうございました!!」

弟達は、お母さんに向かって叫んだ。

 

 

 

会社のデスクで、ビムはティムに言った。

「僕は、旅に出る。」

「旅に?」

「ああ。上海にね。」

「では、付き添いは、いかがいたしましょうか?」

「付き添いはいい。プライベートな旅行だ。」

「はぁ‥プライベート‥。」

ティムは少し考え込んだ。

 

 

上海支社も少し見学したが、後は本当に自由だった。

スタバで少年に会う。

なぜか、この人には、前に会った気がした。

 

少年はiPhoneで音楽を聴いている。

「ハロウ、君は、音楽をやっているのかい?」

「いや‥。」

少年は中国語だ。

「はあ、音楽は突然うかぶと聞く。」

 

「僕も突然うかんできた。」

 

「アハハ!閃いた!」

ビムはノートパソコンを開き、打ち始めた。

途中、大きなパソコン辞典を開く。

『なぜここにある?』

「不思議だねぇ‥。」

ビムは打ち続けた。

 

 

スティーブは聞いた。

「君は、○○を作る時、Heartを打つんだろう?」

「ああ。もちろんさ。ヤツの心臓を高く鳴らすには、その言葉は不可欠だ。」

「Heartは均一かい?」

「均一なわけない。拍は、早くなったり、遅くなったりする。」

 

「君は、LOVEも打つんだろう?」

「ああ。でもそれも均一じゃない。」

 

「いいか?ヤツの気持ちを考えろ。ヤツに合わせて書くんだ。」

ビムは言い、スティーブから背を向けた。

 

『死ね!』

スティーブは舌を出して、中指を立てた。

 

 

「ええ?スティーブが亡くなっただと?」

ビムはデスクから立ち上がった。

「はい、たった今、連絡がきて‥。」

 

ビムは目の前が真っ暗になった。

 

「スティーブ‥。」

スティーブは、白い布をかけられ、眠っていた。

 

「スティーブ、まさか!!」

「あああ。」

ビムはスティーブの上に覆いかぶさって泣いた。

 

「○○の法則を知っているかい?」

「なんだって?」

ビムが後ろを向くと、若かりし頃のスティーブが立っていた。

 

「スティーブ‥。なぜ死んだ。」

「逃げたかった。俺が作った物が、恐しい物だと気づいたんだ。」

「そんな‥。僕が守るのに。」

 

ビムが言うと、スティーブは鼻で笑った。

「まるで俺が、君の、彼女みたいに。」

「君は恋人にふさわしかった。」

ビムが言い、スティーブに抱きつくと、スティーブは舌を出した。

 

 

デスクでビムはパソコンを打っていたが、

手を止めた。

 

 

春の光の中で、リオ、フィース、バップ、テアロスは歌いながら歩いている。

桜がとても綺麗だ。

 

引率していたアドニスは、一人の男を見つけて、目を細めた。

桜吹雪が舞っている。

 

「ビムさん?」

「ああ、また会えたね。」

 

4人はビムの下に走った。

 

「ここは、どこだい?」

「世界最大の魔法国です。」

 

「そうか。ここが世界で一番、偉大な場所ってわけだね。」

 

桜吹雪は、美しいスカイブルーに舞い上がった。

 

【Matriacil】

【Errand of the sky】

【Heroes】

【I know】

By Shino Nishikawa

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