多久さんの事件簿【変態スターになる編】22

November 16, 2018

多久さんの事件簿【変態スターになる編】22

「美味しいワインだなぁ‥。」

夜、多久は1人でワインを飲んでいた。

ワインはどんな口でもいける。

甘口とか、辛口とか、そういう事だ。

甘い酒もいいが、多久もこう見えて、一端の大人の男であるので、

どちらかというと、辛口が好きだ。

辛口を飲むと、強くなった気分になる。

甘口は、悪酔いしやすい。

飲みながら、怒ってしまうのだ。

辛口の酒は、怒りを消してくれる。

 

「くぅぅ。」

『今頃、仕事なんて、可哀想に。』

時計は夜11時をまわった。

 

プルルル

「また、ばばあかよ。」

事務作業をしていたマロはつぶやいた。

どうやら、マロの身分が割れてしまったようだ。

スーパーのばばあは、金を入れる機械を、わざと壊してくれる。

そのたびに、マロが行かなければならない。

 

「あー。」

「一緒に行こう。」

「はい。」

一応返事をしたが、2人で行くのが決まりだ。

上司の基山さんは優しい。

子供が2人いるらしいが、30代半ばでこの仕事に転職したようだ。

「僕ね、柔道の黒帯持ってなかったから、独学で勉強して、とったんだよ。」

「へぇ、そうなんすか。」

「東京にはさ、そういうスクールもあるんだけどね。」

 

「はああ。」

夜の2時に仕事は終わった。

「コーヒーでも飲むか。」

でも、お汁粉を買ってしまった。

甘い物を摂って、よく眠りたい。

 

「はああ。」

マンションの近くまでくると、多久が降りて来ていた。

「いいって、そういうの。」

「ちょうど、目が覚めていたので。」

 

「はああ。」

エレベーターに乗ったが、マロは何も言わない。

少し、気まずそうだ。

多久はマロを見た。関係ない。

多久は、マロについては深く考えない。

何も感じないから‥。

 

「ノリさん、元気かな?」

「さあ、寝てるんじゃないの?それでさ、リンチルとナツは。」

「知りません、寝ていると思います。」

 

 

その頃、ノリは、夢を見ていた。

夢の中のノリは、鏡を見た。

別人だ。まるで‥、ロックスターのGakunみたいな感じ。

それか、スーガオかな?

 

まぁ、いいか。

 

とりあえず、夢だ。

「それほど、良いホテルじゃないな。」

今は廊下にいる。

持っている鍵の部屋に行ってみることにした。

「おや、ここは、上階かい。」

まるで空中にいるみたいだ。

 

ガチャ

「わぁ‥。」

 

「えー、すごい。こんな部屋、誰かと2人で来たかったよ。」

ノリはロイヤルスイートに入った。

「2人、2人‥2人じゃ、ダメか。」

部屋はかなり広いのだ。

「うわぁ。」

引き出しを開け、ホテル名をチェックする。

「えーと、リッツ?」

『リッツカールトン』

「ああ、そのリッツか。」

ノリは、リッチモンドホテルには、何度か泊まったことがある。

 

「リッツ置いてあるかな。」

ノリはいつもの調子で、ホテルを見て回った。

冷蔵庫を開けると、ミネラルウォーターが入っている。

コンビニですぐに買えるようなものだが、特別に美味しそうだ。

「お金、とられるよね。」

『ふーん。』

しげしげと眺めたが、ミネラルウォーターを飲んだ。

 

「ははは。」

ノリはベッドでテレビを見て少し笑い、消して、少しだけ泣いた。

「なんで、こんな場所に。」

そのうちに、寝てしまった。

 

ピンポーン

「ん?」

 

「はい。」

ノリが出ると、女が立っていた。

「ごめん、待った?」

「いや。」

「レストラン、行くでしょ?」

「うん、いいね。」

ノリは、スーガオになりきった。

 

セクシーな服の女は、スーガオの腕を抱き、歩いた。

2人はさらに上階のレストランを目指した。

 

「スーガオです、2名。」

女は、ウエイターに言った。

言い方が、庶民みたいだ。

「お待ちしておりました。」

それでも、ハゲのウエイターは笑顔で、空の席を指した。

正確に言えば、角の一番、窓に近い席だ。

 

「きれいね。」

やっぱり、この女の言い方は、庶民じみている。

「ああ、そうだねぇ。」

やはり、ノリは、スーガオになりきった。

 

「コースどうする?」

「いや、僕は‥。」

「真ん中?」

「うーん‥。」

ノリはまわりを見渡した。

 

客はまばらだ。

裕福そうな老客は、壁の席に座っている。

下で、財布を開いてみる。

札が沢山入っているし、カードもある。

「よし。」

 

「決まった?私、真ん中でいいや。」

「うん。すみません。」

 

「はい。」

偽笑顔のハゲウエイターが来た。

「一番上のコース、2つ。それと、ドンペリ。」

「かしこまりました。」

 

「ドンペリ?そんなの部屋で、頼めばいいじゃない。」

「大丈夫さ。残ったら、ウエイター達が飲むよ。」

スーガオになりきったノリが小声で言った。

 

女が聞いた。

「しかもさ、一番上のコースって、何?」

「当然だよ。こんなにいい席に座っているんだから。」

 

 

ノリは、食べている時、前かがみになる癖がある。

 

ノリは、食べながら、女をチラチラと見た。

やっぱり、この女は、庶民じみている。

塗っているリップのせいだろうか?

口元が、やたらと老けている。

 

髪といい、肌といい、きっといい化粧品を使っているはずなのに、

リップだけ、忘れたのだろうか?

きっと、そうだ。しばらく、忘れていたんだ。

それか、態度や言葉に、気を配らなかったせいだ。

 

態度を改めると、口元は可愛くなる。

それは本当だ。

 

ノリは、ドンペリで言葉を飲み込んだ。

女が言った。

「この後は、仕事するわね。」

「あ‥。うん。」

「そろそろ、出ましょうか?」

「いいね。」

ノリは、ドンペリのアルコールで、くらくらと来ていた。

会計はカードで済ませた。

どうせ、夢の中の他人の金だ。

 

ふぅ‥

朦朧としながら、シャワーを浴び、バスローブでベッドに倒れこんだ。

「はぁ‥。もう寝たい。」

 

「帰りたいな‥。」

 

「はぁ‥。」

10分くらいたって、女が出てきた。

さっき、一緒に風呂を誘われたのだが、断ったのだ。

 

すると、ノリの頭は、だんだんと冴えてきてしまった。

女は、自分で持ってきたと思われる、体にピッタリと合った、寝間着のような、バスローブのような、ピンク色のワンピースを着ている。

 

「マッサージするわね。」

女はノリの背中にまたがった。

 

スーガオは裸にされ、腰巻だけの状態だ。

女は、ローズの香りのジェルで、スーガオの背中をマッサージした。

「ああ、いい。」

「ふふ、そうでしょ。」

 

女は、スーガオの足も念入りに、マッサージをした。

「マッサージ師なの?」

「違う、これは副業。」

「じゃあ、本業は?」

「えーと‥。」

「何。」

「ライター。」

「ライター?」

「うん、そう。○○って雑誌知ってる?」

「うん。そんなの書いてるの?」

「ええ。」

 

「はぁ‥。」

スーガオはため息をついた。

ただ、なんとなくだ。何も考えていなかった。

 

「はい、お次は、仰向けになって。」

「うん。」

女は、スーガオの頭をマッサージした。

「歌うのって、大変?」

「ええ‥、多分。」

「そう。」

「いや、ボーリングするよりは。」

「は?」

「ううん、ごめん。」

 

女はまた下に来て、足をマッサージした。

「どう?むくみ、取れてる?」

「うん。」

「あ、あれ、やっていい?」

「う、うん。あれって?」

「タイの古式マッサージ。」

「うん。」

ノリはタイ古式マッサージに興味があった。

 

「じゃあ、また、うつぶせになって。」

「うん。」

 

『おええええ!おええええ!』

ノリは心の中で叫んでいた。

「あああ、あああ。」

スーガオは声を出した。

女が、スーガオの背中に足をあて、腕を引っ張っているのだ。

「もう、いい。」

『殺す気かよ!!』

「あ、そう?」

女はにやにやした。

 

「まだ、マッサージ続ける?」

女は、スーガオに乗り、聞いた。

「いや‥。」

 

その後に、女がした事は、よく覚えていない。

まるで、自分が雲になった感じだった。

感情はなかった。ただ、エサを与えられた。

 

その後は少し寝たが、気づいたら、女の上に乗っていた。

自分が漏斗という機械を持っていたということに、初めて気づかされる。

天使でもあるし、悪魔でもある。

その行為をする時、本当に犬になりたかったが、

この世の生物でいえば、ミミズである。

 

次の日の朝、女を叱った後、ロビーに向かった。

支払った額は100万だ。

まだ夢から覚めない。

 

自宅に戻ると、書きかけの漫画が置いてあった。

「超くだらない。」

スーガオは言った。

『コンコンと寝なさい。』

スーガオは、母親の言葉を思い出した。

 

ようやくノリは夢から覚めた。

少しだけ漏らしてしまっていた。

今日はかなりヤバい。

漏らしたのは、おしっこの方だ。

 

「あああ。」

ノリは、手で顔を覆った。

 

パンパン

多久は布団を干した。

マロが話しかけた。

「漏らしたのか?」

「いや‥、試合が近いので。」

「大丈夫か?」

マロは涙目になった。

「そんなんで、プロか?お前。」

「いや‥、今は関係ないんで。」

多久は震えた。

 

「あああ!」

マロは泣きながら、部屋に戻った。

少しだけゲームをすると、心は晴れた。

 

今日の話は終わり。

 

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