多久さんの事件簿【ペアだった2人編】23

November 23, 2018

多久さんの事件簿【ペアだった2人事件編】23

『これは、ノリが、ボーリング界の第一線にいた時の話である。』

 

カランカラン

マロは高級ホテルのドアを開けた。

フロントマンとフロントレディーが挨拶をする。

「えっと‥。」

マロは、渡されていた紙を確認した。

「28階のレストラン。」

「どうぞ、こちらです。」

フロントレディーが案内をするため、歩き出した。

 

「ああ。」

マロは頭をかいた。

こういうのは苦手だ。

『一緒に来ればよかった。』

 

ノリとは喧嘩中である。

あまり馴染めていない。

元々、マロは多久と仲良くしていたから‥。

でも、多久は、ノリとも仲良くしている。

だから、多久のことも少し苦手だった。

以前、多久と2人でホテルに泊まった時、多久は襲ってきた。

ノリともそういう事をしていると考えると、吐き気がする。

 

本当の友達はいないんじゃないかと、長い間、不安に思っていた。

兄弟の多久は、ノリと仲が良い。

ノリと自分は‥。

ノリと仲良くしたくて、ボーリングを続けたのも、少しある。

 

リンチルのことは、どうでもいい。

最近少し、変わっている。昔からのことか?

とにかく、彼の事は、気にしていない。

リンチルは、筋が通っているから、きっと大丈夫だ。

 

ガタン

エレベーターは到着した。

エレベーターが28階に到着すると、レストランの前の椅子に、ノリが座っていた。

すると、レディーがしゃべりだした。

「あれ?ノリさん?まだここにいたんですか?」

「あ‥、はい。」

「入ればいいのに。」

「いや‥。」

 

レディーは気にせず、若くて背の高いウエイターに話しかけた。

ノリとマロのことだ。

ウエイターは、営業スマイルで2人を案内した。

同性に対して、嫌われていると感じるのは、どうしてだろう?

きっと、このウエイターが良い人だからだ。

自分たちより、ボーリングに向いている。

 

自分が構えると、相手も構えてしまうという話を聞いたことがある。

だから、いつも、本気にはなれない。

 

ウエイターが椅子を引いてくれた。

マロは座ったが、ノリは自分で引いて座った。

ノリは話しだした。

「僕は、レストランで、椅子を引かれたことがない。」

「え‥、なんで?」

「良いレストラン来たことあるよ。でも、いつも、ウエイターはオジサンの椅子をひいていた。」

「ああ、そうか。」

ノリには、妹が3人いるため、普段は養護施設にいたのだ。

オジサンは、お母さんの弟で、ノリの親みたいなものだった。

 

高い窓から、下を見ると、ノリは不安に思えてきた。

『きっと、俺を殺すためだよな‥。』

マロをちらりと見ると、マロは不安そうに貧乏ゆすりをしながら、スマホを見ている。

黒いジャケットと白いシャツ、銀のネックレスに、ジーンズ。

靴はローファーみたいな、変な格好だ。

このスタイリングには、靴の先がとんがっていた方がいいと思うが、靴の先が丸い。

なぜだ?今時、女だって、とんがった靴を履いている。

 

ノリは、90年生まれだが、実年齢より年上に見られることが多い。

ファッションは気にしていない。

だからだと思う。

今日の服も、少しダサい。

多久と一緒に買ったユニクロのチノパンに、リンチルとおソロで買ったGUのボーダーシャツ。それから、マージンのマネをして買った無印良品のパーカー。

靴は、赤いコンバースだ。

 

コンバースは、古くなっても、味が出る。

そこが好きだ。

 

「ふうう。」

少し気をよくしたが、やっぱり、窓の下を見ると、不安になる。

 

『きっと、俺を殺すためだよなぁ。‥違う?じゃあなぜ、ずっとスマホを見ている‥。』

マロはスマホに集中しているようだ。

 

『きっとトウナだよな?俺を殺すために、俺をこんな所に座らせて、君はあのビルの窓から、狙っている。そう、僕の、頭蓋骨をね。』

 

「はああ。」

少し怯えてきた。

トイレに行きたい。

「ちょっと、トイレ。」

「うん。」

 

「はぁはぁ。」

トイレでは、軽いパニック障害になった。

女便から突然、男が出て来て、心臓が止まるかと思った。

 

「大丈夫ですか?」

「ええ。」

『君はなぜここにいる?』

 

「そう、あの‥ボーリング選手ですよね?」

男は手を洗いながら言った。

「はい‥、いや、違います。」

「そうでしたか、すみません。」

 

『君はなぜここに?』

「いえ。よく、間違えられますから。」

 

「そう‥。」

 

『さよなら。』

 

男はちらりと見て、トイレから出た。

 

「ごめん。」

ノリは席に戻った。

客が増えていて、女性客がノリにちらりと目をやった。

 

『やっぱり。』

「つけられてるねぇ。」

「ダメ。」

マロは人差し指を口に当てた。

 

「今日来ないってよ。」

マロが言った。

 

「嘘。」

「本当。ほら。」

『ごめんなさい、やっぱり都合があわなくて。また今度、うめあわせします。』

「いや、いいよ。」

「うん、もういいよな。どうせ、経験のためだったから。」

 

『あの‥経験というのは?』

 

「何か頼む?」

「いいよ。」

 

「うーん。」

『ほら、やっぱり見ている。あのビルの男の影、トウナだよな。』

 

「俺、このコースにするわ。」

「えっと‥じゃあ、僕もこれ。」

「え、これ?いや、ノリだったら、こっちなのかなって思ってた。」

「うん、いいよ。」

『分け合うのとか、苦手でしょ?それにさ、こんなお店だし。』

 

以前、多久とノリとマロの3人で食事をした時に、多久とノリが、マロの料理をほとんど食べてしまったことがあったのだ。

 

『トウナ、いなくなった。やっぱり勘違いか。』

 

「すみません。」

マロがウエイターを呼び止め、注文をし、予約の者が来なくなったことを告げた。

 

ノリは上機嫌になり、フォークとナイフを持ったりして、笑った。

マロはそれを見て、言った。

「ダメだぞ、料理が運ばれてくるまではな。」

 

ノリは止まらず、スプーンでスープを飲むふりをしたりして、マロも笑った。

 

裕福そうな親父客と女性が入ってきたので、2人は一度黙った。

ノリは窓の外を、また見てしまった。

 

『やっぱり、この感じ、違う。殺す気だ。』

 

『どこだどこだどこだ‥。トウナはどこで狙っている?』

 

「それにしても、マージンって、面白いよな。」

マロが言った。

「え‥。うん。」

 

マロはマージンについて、知っていることをペラペラと話し出した。

 

キーン

下を見るたびに、ノリの神経は張りつめた。

『殺される殺される殺される。どこだどこだどこだ。』

 

「やっぱアイツダメだよな。」

マロが言った。

「え、誰?」

「西倉。あいつさ、全然ダメだよな?」

「うーん‥。」

「世界の壁は高い高いって、ちょっとうざいよ。お前だって、分かってんだろ?

この前のボーリング試合、お前さ、わざとミスしたろ。」

「してないって。もう、本当、やめてくださいよ。」

 

「だからね、お前がミスすると、西倉が調子にのるからさ、気をつけろ。

今度のボーリングの強化練習でさ、アイツ、しごいてやろうぜ。」

「しごくなんて‥。」

「いや、そうでもしないと分からない。

それに、アイツのバックには、変なオバサマがいるわけだし。」

 

 

「お待たせいたしました。」

ウエイターが料理を運んできた。

 

「あああ、きたぁ。」

「うまそうだな。」

ノリとマロは目を輝かせた。

 

2人は前菜を食べた。

「うまいねぇ。」

「そうだね。」

美味い物を食べている時でも、嫌な事が浮かんでしまうのは、どうしてだろう?

 

『いつか殺される。』 

 

「あー、うまい。こんな柔らかい肉は、久しぶりだ。」

「あ!」

「どうした?」

「僕、お酒頼みたい。」

「いいよ。俺は飲まないし。」

 

「すみません。」

ノリは、ウエイターを呼び止めた。

「はい。」

「ホテルオリジナル白ワイン、瓶で。」

「かしこまりました。ボトルで、よろしいですか?」

「ああ、ボトルで。」

 

「ボトル、ボトル、ボトルちゃんか。」

ノリは酒好きだ。

 

「お前、そんなに飲んで、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

 

マロは軽くレジを見て、VISAマークを確認して、目を閉じた。

 

「ふぅぅ。」

ノリはワインを飲んだ。

「このワイン、どこ産だろうねぇ。」

「フランスだと思うよ。大体、こういうのって、フランスだろ?」

「ラフランス。」

 

「あいつ、麻薬やってるよな?」

「あいつって?」

「多久。」

「やってないよ。」

「いや‥、わかんねぇよ。」

 

「そんなことより、僕が気にしているのは、女子のことさ。」

ノリは言った。

「ああ。‥それは、どうして?」

「不憫だよねぇ‥。少しは気にかけてやりたいけど、こっちにも事情があるから。」

 

「大体さ、そんな男子ボーリングの世界にスタッフとして来る女子なんて、バカだと思うよ。」

マロは言った。

 

「でも、自殺とかしたら?前に、亡くなった方がいたでしょう?」

「いや‥こういう特別な世界では、仕方ねぇよ。」

 

ふん‥

ノリは窓の下を見た。

少しくらくらときたが、大丈夫だった。

お酒のおかげである。

やっぱり、高い場所で飲むお酒は最高だ。

 

マロは思った。

『ノリより先にボーリングをやめてやる。』

俺がいる世界から、先にこの人がいなくなるなんて、いやだ。

寂しいっていうか、悲しい。

 

2人は割り勘で会計をすませ、ホテルを出た。

フロントでは、先ほどのレディーが悲しそうだった。

ノリとマロを、見に行ったりしたせいだ。

 

 

「タクシーにするわ。」

ノリは言った。

「そんなに金使って大丈夫か?」

「うん。こんな事の後だし。」

「まぁ、そうだな。」

2人はタクシーで帰った。

 

結局、ボーリングは、ノリが先に辞めた。

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

最新記事

December 11, 2019

December 10, 2019

December 9, 2019

December 7, 2019

November 30, 2019

November 29, 2019

November 29, 2019

November 25, 2019

Please reload

アーカイブ
Please reload

タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

© 2023 by EMILIA COLE. Proudly created with Wix.com