マトルキャットとニグラムバード

December 14, 2018

マトルキャットとニグラムバード

「くっだらねぇ。」

17才のレリカはタバコを吸いながら言い、ワイトも鼻から息を吐いた。

 

「先輩。マジでもう、見つかりますから。」

ボッティが来て、言った。

ボッティは13の時に、タバコは止めている。

 

双子がタバコを吸っている場所は、ヤンダルム高校の体育館の裏にある、ツタが沢山生えた物置の裏だ。

双子は16才で成長が通常通りになった。

ヤンダルム高校という、ウイストンの人間の高校に通っている。寮生活だ。

ボッティは、双子と仲が良い。ボッティと双子は同い年だが、双子は8月生まれで、ボッティは12月生まれなので、ボッティは双子を先輩と呼んでいる。

 

 

双子は、タバコを踏み消した。

今は秋で、少しだけ寒い。

 

3人が物置の裏から出ると、相談室のプーミン・マイケル先生が怖い顔をして立っていた。

 

「お前たち、タバコ吸っていただろ。」

「は?」「吸ってません。」

レリカとワイトは、赤くなって言った。

「吸うわけねえじゃん。」

レリカが口をとがらせて言い、逃げようとした時、プーミン先生がワイトの腕をつかんだ。

 

「出せ。」

「はぁ?」

ワイトは顔を赤くした。

 

「おい、お前もか。」

プーミン先生は、ボッティを指さした。

「違います。」

 

ボッティは、レリカとワイトをちらちらと見た。

 

「タバコを見せてもらう。」

プーミンは、レリカとワイトのポケットからタバコを出した。

 

「やっぱり。」

 

レリカとワイトは呆然と立ち尽くし、プーミンは物置の裏を見に行った。

 

「やっべ。」

プーミンが言ったので、レリカとワイトは泣きそうになってしまった。

 

「このタバコ、教頭と同じ銘柄だぞ。」

プーミンが言うと、3人は沈黙した。

 

プーミンは、ボッティの制服の臭いをかぎ、ボッティは無罪だと分かったため、ボッティは釈放され、授業に戻った。

 

レリカとワイトは、生徒相談室のソファーで、プーミンと向き合った。

「担任のブースター先生に連絡するから。」

 

しばらくすると、担任のロイトン・ブースター先生が来た。

ブースター先生は数学の教師で、とても太っている。

初めての恋人が事故死して以来、誰とも付き合っていないらしい。

 

ブースター先生は、息をはぁはぁして言った。

「ピピンさんには電話しました。」

「ありがとうございます。」

プーミンは立ち上がり、頭を下げた。

 

「ダメじゃないかぁっ。」

ブースター先生は、顔を赤くし、高い声で言った。

「一体どうしたんだっ。」

 

レリカとワイトは、ブースター先生を見たあと、うつむいた。

双子は10秒くらい沈黙したが、それが10分のように長く感じた。

 

「どうして、そんなことをしたか、教えてくれる?」

ブースター先生は双子の前に座り、優しく聞いた。

プーミンは腕組みをして睨んでいる。

 

レリカは口を開いた。

「うまくいかなくて。」

「うまくいかない?何が?」

 

「全部。」

「ええ?だって、君たちには、ボッティ君という親友もいるし、クラスの仲間だっているだろう?」

 

「僕たち、猫耳があるんです。」

「それは知っているよ。お父さんから事情を聞いているからね。でも、薬があれば、1カ月は消えるんだろう。」

「はい。」

「じゃあいいじゃないか。」

 

ガラガラッ。

プーチとオイドレンが相談室に入ってきた。

 

 

「このたびは息子たちが、ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません。」

プーチとオイドレンは深々と頭を下げた。

「いえいえ。レリカ君とワイト君には、悩みがあったそうなんです。」

「じゃ、今日は‥。」

「連れて帰ってあげてください!」

ブースター先生が言ったので、レリカとワイトは、帰ることになった。

 

オイドレンの魔法の黒馬車で帰ったので、家までは20分くらいだった。

プーチは、心配そうな顔で双子を見て、スティックのキャラメルラテをいれてくれた。オイドレンが魔法で泡立ててくれたので、店のキャラメルラテのようになった。

 

「どうしたんだ、お前たちがタバコなんて。」

「ごめんなさい‥。」

 

「ちがうって。悩みがあるなら言えよ。」

 

「‥僕たちが猫だから‥。」

「みんなと違う。」

 

「人はみんな違うぞ。それに、お前たちは、マトリアシルで生まれたんだ。いつか魔法力が芽生えるかもしれない。」

 

「今日は、ロドリアムの店に行こう。」

「うん‥。」

 

夜、レリカとワイト、プーチとオイドレンは、ファミリーレストランに食事に行った。

ロドリアムは、そこで働いているのだ。

 

「お決まりになりましたら、お伺いいたします。」

そこは、映画会社経営のレストランで、シーズンごとに流行映画模様に変わる。

従業員の制服も、メニューもだ。

 

今は、吸血鬼映画模様である。

 

土曜日は宿題と、復習と予習をして、お手伝いをした。

日曜日は、朝からプーチとスーパーに行った後、公園でバドミントンをして遊んだ。

双子が遊んでいると、男の子たちが来て、本気バドミントンを始めたので、双子は帰ることにした。

 

 

ヤンダルム高校の生物の教師である、ポラルド・ロリィタ先生は、変わっている。

暗い感じがするし、たまに言うジョークが不気味だからだ。

一部の女子をヒイキしているのも、不人気の理由だった。

 

生物の先生はもう一人いる。

スティーダ・ブリドウ先生だ。

スティーダ先生はワイルドな感じのハンサムで、少しだけ髪が長い。

女子から人気だが、男子にも人気である。

 

レリカとワイトのクラスは、C組だ。ちなみにボッティはD組である。

CとD組の生物の担当は、ポラルド先生だ。

 

レリカとワイトは、授業の後、ポラルド先生から声をかけられた。

「この前の宿題が未提出だ。」

「すみません。金曜日、早退したので。」

 

「そうだったか。では、水曜までに提出するように。」

「はい‥。」

レリカとワイトは、ポラルド先生が苦手だった。

双子は月曜のうちに宿題をすませ、火曜の朝に生物研究室に行ったが、スティーダ先生しかいなかった。

 

「おはよう。どうしたの?」

「宿題を出してなかったんです。」

「そっか。ポラルドのクラスだね。じゃ、そこに置いておいて。」

スティーダ先生はチャーミングな感じで言った。

 

「先輩、大丈夫っすか。」

昼休みに、廊下でボッティが話しかけた。月曜日はボッティと話せなかったので、今週初めてボッティと話す。

 

「うん。」

「俺も、土日大変だったんですよ。」

「もしかして、俺たちのせいで?」

「ちがいます。」

ボッティは白い歯を見せて笑った。

 

「NBA選手と一緒にバスケしたんですよ。」

「すごいじゃん。」

ボッティはその時のことを話し始めた。

 

「うわああああああ!!うわあああああ!!」

ポラルドが、叫び声をあげながら走ってくる。

 

「待ちなさいよ!!」

結婚はしているが子供が持てず、42才で高校教師になった、美術のロナセン・ルイジュウス先生♀がポラルドを追った。ロナセン先生はインド系だ。

 

「捕まえて!!」

ロナセン先生は叫んだ。

3年の男子数名が、興奮しているポラルドを捕まえた。

 

「来て!!」

ロナセン先生は、ポラルドの体をつかみ、保健室に入った。

 

 

「どうしたんだろう?」

レリカ、ワイト、ボッティは心配そうに話した。

 

女の子たちは驚いて泣いている。

捕まえた3年の男子たちも、バツが悪そうだ。

 

水曜日、生物の授業はスティーダ先生が担当した。

スティーダ先生も元気がなさそうだ。

 

木曜日もポラルドはいなかった。

 

 

「どうしたんだろうね。」

レリカとワイトは、また、来てはいけない場所に来た。

それは、体育館裏の物置である。

黄色や赤色の枯れ葉がたくさん落ちている。

 

双子はケンケンパーのようなことをして遊んだ。

「アハハ!」

「やっぱり、タバコは、ダメだよね。」

 

双子は、鼻歌を歌いながら、物置の裏に入った。

 

「え‥?」

 

そこには、ポラルドが心臓をナイフで刺されて死んでいたのだ。

 

「え‥。」

 

殺されたばかりのようだ。心臓が外に出て、動いている。

 

レリカとワイトは外に出た。

 

空から何者かが覗いているのが見える。

「カラス。」

「怖い。」

双子はうずくまった。

 

「大丈夫?」

しばらく双子はうずくまっていたが、そのカラスが声をかけた。

 

「ああ‥。」

双子はうずくまり続けた。

「怖い。」

 

遠くから声がしたので、カラスは飛び立った。

 

レリカは手を見た。

つめが生えてきている。

ワイトは、レリカの目に映る、自分の姿を確認した。

 

今まで見たことないくらいの化け物猫になってしまっている。

双子とも目は真っ赤だ。

 

「シャアアア‥。」

猫の叫び声をあげながら、物置の裏に入った。

 

双子は、自分が分からなくなっていたが、朦朧とした意識の中で、人間のままの自分たちの顔に、鏡の前で血を塗り、化け物猫に変身する夢を見た。

振り向くと、呆然としたプーミンが立っていた。

 

それは現実でも起きていることだった。

 

「プーミン。」

 

双子は気を失った。

 

起きると、保健室で寝ていた。

ブースター先生が、覗き込んでいる。

「ちがうね?」

「うん‥。」

双子は、人間の姿に戻っていた。

 

保健室には警察がいる。

プーミンは泣きはらした顔で、太った刑事と話していた。

「ちがう。やってない。」

プーミンは言っている。

 

「逮捕状が出たわ。」

女刑事が入ってきた。

 

「そんな。この子たちはやっていません。」

プーミンは立ち上がったが、

「この子のポケットから、凶器のナイフが出てきたのよ。」

女刑事はレリカを指した。

 

レリカとワイトは立ち上がらされ、連行された。

保健室を出ると、プーチとオイドレンがちょうど到着した所だった。

「レリカ。」「ワイト。」

 

「お父さん‥!!」「オイドレン‥!!」

 

「行くぞ。」

刑事が言った。

 

「ナロウ。」

スティーダ先生が保健室に来た。

「あら、スティーダ。久しぶりね。」

「あの子たちはやっていない。」

「そうなの?」

スティーダ先生と女刑事のナロウ・ジュードは、元恋人同士だ。

 

「しっかり取り調べるわ。」

ナロウは去った。

 

レリカとワイトが連れて行かれた場所は、ティラロス島の刑務所だ。

厳しい取り調べを受けても、双子は違いますと言った。

 

2日後、オイドレンとプーチ、ロドリアムが面会に来た。

レリカとワイトは、少し痩せて、蒼白だ。

 

「これ、ボッティからだ。」

プーチが、ボッティからのバレンタインカードを渡した。

 

「僕たち、やっていません。」

「分かっておる。すぐに助けるからな。」

 

「何があった?詳しく聞かせてくれ。」

 

「物置の裏を見たら、ポラルド先生が死んでいたので、ひとまず外に出たら、空にカラス人間がいて‥。僕たち怖くなって。」

 

「それで、気づいたら、猫になってしまっていたわけだ。」

「はい。」

 

「カラス人間の特徴は?」

 

「男で、短い黒髪。それしか分からない。」

「そうか‥。」

 

「時間です。」

嫌味な刑務官が言った。

 

 

3人は外に出て話した。

「こんなことになるなら、もっと魔法を勉強しておくべきだった。」

ロドリアムが言った。

ティラロスは、小さな島が点在していて、何千年も昔は、とても美しい観光地だったが、今では、刑務所の島だ。

 

「カラス人間ってなんじゃ。」

 

「多分、ニグラムバードのことだ。妖精とカラス族の突然変異で生まれるらしいが、俺も会ったことはない。火の鳥も、妖精とカラス族の突然変異だが‥」

 

「ニグラムバードは危険よ。」

海岸の大きな石に座っていた、ナロウが言った。

 

「ナロウさん。」

 

「なぜニグラムバードが危険なんだ?」

「ニグラムバードは、妖精とカラス族の突然変異だけでは生まれない。父親が妖精と黒魔術師のハーフ、母親がカラス族の時に、突然変異が起きれば、生まれる生き物なの。」

 

「そうなのか。」

 

「ええ。ニグラムバードの特徴は、飛ぶ時は黒い翼が生える。」

ナロウは黒い翼を生やした。

「そして、敵と自分の位置を、交換させられる。」

ロドリアムとナロウの位置が交換させられた。

「位置交換の力は、喉の奥にあるの。」

ナロウは軽く、自分の喉に触れた。

 

「死ぬ時は爆発するわ。」

ナロウはオイドレンの瞳をまっすぐに見て言った。

 

「じゃあ、君はニグラムバード?」

「ええ。」

ナロウは短い髪をなびかせ、遠い目をした。

 

「あの子たちが言っている男を探してみるわ。」

 

ナロウは黒い翼を生やし、空に行ってしまった。

 

 

この事件には、魔法族が関わっている。

ウイストンの警察ではなく、マトリアシルのピズリスという山のふもとの、ロミカ村に本部がある、ロミカ警察が捜査をすることになった。

 

捜査リーダーは、アスタ・モアサという黒人の男である。

モアサは、ロミカの警察がどれほど危険な仕事か分かっているので、家族は作れていない。

 

学校の先生たちは、モアサから事情聴取をされた。

ごつい見た目のわりには、モアサはとても紳士的だ。

 

まずは、担任のブースター先生からだ。

「あの子たちはやっていません。本当です。」

ブースター先生は必死だった。

「では、あなたから見て、ポラルド・ロリィタさんはどのような人物でしたか?」

「うーん。真面目にやっていて、生徒にも人気がある。」

「他には?」

「とても優しい。」

「そうですか‥。」

 

次はプーミンの番だ。

プーミンはうなだれている。

「やってない‥あの子たちじゃない。」

「しかし、レリカ君のポケットから、凶器のナイフが見つかっている。あの子たちを最初に発見したのは、あなたですよね?」

「ちがう。」

プーミンは首を振った。

「最初にあの子たちを発見したのは、ポラルドを殺した犯人だ。」

モアサは、プーミンをしげしげと見つめ、手帳に何かをメモした。

「では、ポラルド・ロリィタさんと、双子の関係は?」

「知らない。」

プーミンは答えた。

 

次は、チャーミングなスティーダ先生の番だ。

「ハロウ。」

スティーダ先生は少し笑って椅子に座った。

「タバコを吸っても?」

「どうぞ。」

「僕は、黒魔術師と人間のハーフなんだ。でも、あまり、魔術は使ったことはない。」

「そうでしたか。あなたから見たポラルド先生は、どのような人物でしたか?」

「気弱。時間にルーズ。女好きで、しかもロリコン。」

「ええ?」

モアサは顔をしかめた。

「あなたは、ポラルド先生と同じ生物の教師ですよね?あなたは彼を嫌っていたということですか?」

「うん。」

フー‥スティーダは、息を吐いた。

「あなたにはアリバイがあります。でも教えてください。具体的に、ポラルド先生には何があったんですか?」

 

「‥ポラルドは、学校の女子生徒と付き合っていたんだ。」

スティーダは思い出し泣きをした。

 

 

本当に普通の女性である、インド系のロナセン・ルイジュウス先生は、泣きながらモアサに話した。

「そうなの。私、見ちゃったの。ポラルドが生徒のジュミちゃんと歩いているのを。火曜日、私がポラルドを問い詰めると、ポラルドは興奮してしまって。」

「そうでしたか。」

その時のことは、ポラルドを捕まえた3年の男子からも聞いていた。

 

「レリカ君とワイト君は、やってないわ。」

「僕も信じています。」

「他に容疑者はいないの?」

「あの子たちは、カラス人間を見たというんです。」

「カラス人間?もしかして、ニグラムバードのこと?」

「よくご存じで。」

「でもニグラムバードって、とっても少ない生き物なんでしょう?」

モアサは笑った。

「類は友を呼ぶ。実は、僕もニグラムバードなんです。」

モアサは言った。

 

双子が、刑務所の部屋でうずくまっていると、同じ部屋のドロシーさんが帰ってきた。

「新入りか。」

「はい。」

「名前は?俺の名前は、ドロシー・ハッピー。」

「レリカ・ピピンです。」「ワイト・ピピンです。」

「はは、そうか。何の罪?」

ドロシーさんは、布団を敷き始めた。

「えんざいです。」

「あ、俺も。俺が、デート商法をするわけないだろう。それも男相手にさ。

本当は、近所の女の子がやったんだ。」

 

ドロシーさんは、いびきをかいている。

双子は眠れず、天井を見つめていた。

 

「どうだ?」

泣いているレリカとワイトがいる牢屋の窓の外から、あの時の男が覗き込んだ。

「あの時の‥。」

「僕たち、あなたのせいで捕まったんです。」

 

「ごめん。俺は愛する人を奪われたんだ。俺の名は、ヒュリアダ・ニクソン。」

ヒュリアダは飛び立った。

 

ジュミ・マーチルは、ヒュリアダの好きな人だった。

ずっと昔から‥。一番守りたくて、笑わせたい女の子だった。

マトリアシルから引っ越して来て、近くに住んでいた。

ある日、空を飛び、遠くから学校を見ると、ジュミとポラルドが逢引きをしている所を見てしまったのだ。

ヒュリアダは、ポラルド殺害を決めた。

決行の日。

ポラルドの家のポストに、ジュミの字を真似て書いた手紙をいれ、呼び出した。

そして殺害し、1分後に双子が来た。

 

ヒュリアダは、海岸の大きな石に座り、涙を流した。

 

 

次の日。

モアサとナロウは、ウイストンとマトリアシルの境目にある、トトアムという街に来ていた。アクアワス博士に会うためだ。

凶器のナイフは、特殊な布で拭かれており、指紋鑑定が難しかった。

 

「どう?」

「出てきたぞぉ‥。」

アクアワス博士はパソコンを見ながら言った。

 

アクアワス博士は検索ボタンを押した。

マトリアシルの外に出ている魔法族は全員、指紋を提出することが、義務付けられている。

 

「ヒュリアダ・ニクソン。」

 

モアサとナロウは、ヒュリアダ・ニクソンの顔を険しい表情で見た。

 

双子は裁判にかけられることになった。

弁護士は、ウイストン出身の青年、マーポ・トルクレンチだ。

マーポは少し頼りない。

 

ポラルドの家族たちが来ている。

お姉さん家族と、お母さんと妹と弟だ。

 

裁判は始められ、マーポは弁護を始めたが、検事が遮った。

なんと、裁判官も全員グルで、向こうの味方だったのだ。

 

「では‥レリカ・ピピン、ワイト・ピピンを、殺人の罪で‥。」

裁判官が判決を下そうとした時、「待って!!」ナロウとモアサたちが入ってきた。

 

「ナイフから指紋が出たわ。真犯人は、ニグラムバードのヒュリアダ・ニクソンよ。」

 

みんな息を飲んだ。

 

「でっち上げよぉ!!!」

ポラルドの姉、アナニー・ロリィタが叫んだ。

 

「そうだ、でっち上げだ!!」

客席の者たちも叫んだ。全員グルなのだ。

 

「死刑!!死刑!!」

みんな叫び始め、ナロウも蒼白な顔で、客席を見上げた。

マーポもオイドレンもプーチもモアサたちも、双子も、恐怖で怯えている。

 

裁判官は口を開いた。

「レリカ・ピピン。ワイト・ピピン。殺人の罪で、死刑とする。」

会場はざわざわした。

 

「なお、双子が未成年のため、マトリアシルの法律にのっとり、家族が身代わりになってもよいこととする。」

 

裁判は閉幕した。客席のロドリアムは蒼白な顔だ。

 

双子は抱き合い、泣きながら歩いた。

オイドレン、プーチは、うつろな目で後ろを歩いた。

 

マーポは困惑した表情で、裁判官席を見て歩き出した。

 

「こんなの最低よね。」

ナロウは泣き、モアサが肩を抱いて慰めた。

 

ヤンダルム高校の職員室では、双子が死刑宣告されたという電話がきたので、ブースター先生は、怒って、電話を切った。

ロナセン・ルイジュウス先生は泣き崩れ、スティーダはうなだれ、プーミンは椅子に、赤い顔で座り込んだ。

 

 

「どうだった?」

牢屋で、赤い糸で編み物をしながら、ドロシーさんが聞いた。

「ダメでした。」

「ダメ?君たちが?」

「死刑です。」

「死刑?そんな。そりゃ酷いよ。2人はまだ、未成年なのに。」

 

レリカは、今日届いたボッティからの、バレンタインカードを放り投げた。

「大丈夫だって。なんとかなる。」

ドロシーさんが布団を敷きながら、双子を励ました。

 

 

「おい。裁判どうだった?」

深夜にヒュリアダが来た。

「僕たち、死刑になってしまったんですよ!!」

ワイトが言うと、ヒュリアダは笑った。

「あはは、ごめん。」

 

「どうするつもりですか。」

 

「何もしない。俺は、ジュミと暮らすんだ。」

ヒュリアダは、カラスに変身し、飛び立ち、双子は泣いた。

「あいつ誰?」

ドロシーさんが聞いてきたが、双子は声を上げて泣き続けた。

 

その1時間後、ナロウがカラスになり、様子を見に行くと、すでに一羽のカラスが、様子を見ていた。

ナロウは人間に戻り、カラスを観察していたが、カラスは行ってしまった。

 

ポラルドの家族の意向で、明後日、ウィズラス広場で公開処刑(ギロチン)になる。

 

「俺が身代わりになる。」

次の日、外を歩きながら、オイドレンが言った。

プーチはオイドレンを見て立ち止まり、冷たい風が、2人の髪をなびかせた。

 

「いいのか?」

「ああ。息子たちのためだ。」

 

その頃、ロドリアムは魔法練習をしていた。

 

ついに処刑の時が来た。

 

「出なさい。」

看守が来た。

双子はうなだれ、無言で従った。

「ちょっと待て。この子たちは、冤罪だぞ。」

ドロシーさんが止めたので、双子は振り向いた。

「黙りなさい。」

「そうはいかない。」

ドロシーさんは、隠し持っていたマッチで火をつけた。

「ちょっ‥。」

火はもくもくとあがり、ドロシーさんは戦ったが、連れて行かれてしまった。

「俺、使えねぇな。」

「ドロシーさん!!」

 

魔法の輸送車で、ウィズラス広場まで、連れて来られた。

やじうまの中に、学校の先生たち、モアサ、マーポ、プーチ、ボッティ、ロドリアム、ナロウがいる。

ナロウは、危険そうな杖を構えている。

 

ロドリアムも、杖をかまえた。

 

一羽のカラスが、お洒落なアパートにとまっている。

ヒュリアダである。

 

オイドレンが来た。

オイドレンは振り向き、双子の頬をなでると、双子は、オイドレンに抱きついた。

 

オイドレンは、死刑台にうつぶせになった。

ナロウは金色の目で見ている。

3・2‥

その瞬間、ナロウは、オイドレンと位置を交換した。

死刑台にいるのはナロウである。

1‥ギロチンは降りる。

「エスプレンサ。」ロドリアムは、魔法の呪文を唱えた。

エスプレンサは、物を止める呪文だ。

 

ギロチンが止まったので、観客はわいた。

ナロウは、金色の目で起き、会場を睨んだ。

 

 

ナロウは、一羽のカラスをとらえ、黒い翼を生やし、飛び立った。

 

2人はカラスになり、睨むように飛び回った後、黒い翼の人間になった。

 

2人はお互いの位置を入れかえあっていたが、ヒュリアダが、全然関係のないロナセン先生と位置を交換したため、ロナセン先生は、悲鳴をあげ、地面に落ちた。

すれすれの所で、モアサが、ロナセン先生と位置を交換したため、ロナセン先生は無事だった。

 

「本物の犯人はあいつだ!」

モアサは、黒い翼を生やし、歩きながら、警官たちに言った。

 

 

ロドリアムは、空を見上げたが、箒は来ない。

魔法使いは、空を飛びたい時に、どこからともなく、魔法の箒が飛んでくるのだ。

しかし、ロドリアムは長年、魔法を遠ざけていたため、魔法力が弱くなってしまっていた。

 

ナロウは、ヒュリアダに向かって飛び、再び2人は決闘になった。

ヒュリアダがナロウの翼をナイフで切ったので、ナロウは落ちてしまった。

 

ニグラムバードの位置交換の力は、喉の奥にある。

地面に落ちたナロウの喉に、ヒュリアダは、危険そうな杖を向けた。

 

「どうしますか?」

若い刑事がモアサに聞いたが、

「今、無理に動くと危険だ。」

 

「ナロウ。」

モアサは、ナロウは、大丈夫だと思っていたのだ。

 

しかし、ブースター先生にとって、ナロウはただの女の子だった。

ブースター先生は、こっそりとモアサの隣に行き、位置交換した。

ブースター先生には、黒い翼が生えている。

なんと!!ブースター先生もニグラムバードだったのだ!!

 

ブースター先生は、危険そうな白い杖をつかみ、自分から離した。

ヒュリアダがニヤリと笑い、黒い翼を閉じたまま空に直進すると、ブースター先生も同じように飛び立った。

 

「まさか、ブースター先生までもが、ニグラムバードだったとは。」

モアサは目を見開いた。

 

ブースター先生とヒュリアダは、決闘になってしまった。

 

スティーダは、魔術師と人間のハーフだ。

父がやっていた瞬間移動を試す時がきた。

 

全てを見抜いていたので、ジュミを連れてくるためだ。

「瞬間移動。」

スティーダは、橋から川を見ていた、ジュミの下にたどり着いた。

「ヒュリアダが大変なんだ。一緒に来てくれるか?」

スティーダが聞くと、ジュミはうなずいた。

 

ブースター先生は、ヒュリアダの喉に集中して戦っていたので、ヒュリアダは位置交換ができなかったが、ヒュリアダがナイフを投げ、ブースター先生がよけたすきに、弱っているナロウと位置交換した。

 

ナロウはどんどん落ちていく。

しかし、モアサが直進し、ナロウを抱きとめた。

 

プーミンは、まぶしそうに空を眺めた。

「あれぇ。ニグラムバードってこんなにいたの?」

プーミンは、人間なので魔法力はない。

ボッティも、まぶしそうにしている。

 

双子は泣きながら‥、プーチとオイドレンは、心配そうに空を見ている。

 

 

ようやく、ロドリアムのところに箒が来た。

ロドリアムは箒に乗り、空高くまで直進する。

 

その頃、スティーダはジュミを連れ、瞬間移動してきた。

ジュミも、ヒュリアダに気づいていたのだ。

ポラルドと付き合ってしまったのは、まだジュミが高校生で、心が未熟だったからである。

 

ジュミは心配そうに、広場の中央まで来た。

 

ヒュリアダとブースター先生は、向き合っている。

ヒュリアダが白い杖で攻撃しようとした時、ジュミが叫んだ。

「ヒュリアダさん、やめて!!」

ヒュリアダは止まった。

 

オイドレンは、目を見開いて、空を見た。

『ロドリアム。』

 

音のない時間が過ぎ、箒に乗ったロドリアムが、一直線で落ちてきた。

 

そして、ヒュリアダを突き落とした。

 

黒い羽が空中に舞い、ヒュリアダは落ちた。

 

ヒュリアダが目を開けると、ジュミが覗き込んでいた。

「ヒュリアダさん。」

「ジュミ‥ごめん‥。」

「いいの。こちらこそごめんなさい。」

 

ジュミはヒュリアダの頬にキスをした。

 

 

一週間後。

マーポが本気弁護をし、ヒュリアダは、10年の刑になった。

 

双子は、元気に学校に戻った。

ジュミは反省し、髪を丸刈りにした。ヒュリアダを待つつもりらしい。

 

「はーい、みんな席について。」

ブースター先生は、相変わらずだ。

 

プーミンは赤い顔で、双子をさけ、オリーブヘアの変わり者、ロロム君の相手をしている。

ロロム君には、大学生の彼女がいる。

この前、双子が相談室を覗くと、3人で話していた。

双子は扉を閉めた。

 

 

「どうぞ。」

生物研究室を覗くと、スティーダと、ポラルドの代わりに入った先生、70才のワンパン先生が、座って書き物をしていた。

「どうした?」

スティーダは、目をキラキラさせて聞いた。

「あの‥この前のこと、ありがとうございました。あと‥迷惑をかけて、ごめんなさい。」

「いいんだ。ポラルドが、まいた種だから。」

 

ワンパン先生も優しげに笑い、うなずいた。

 

コンコン

「はい。」

ブースター先生と話すために、数学研究室に来た。

「どうしたの?」

「今更なんですけど、この前はありがとうございました。」

「いいよ。これからは気をつけてね。」

「はい。」

双子は数学研究室を出た。

 

 

「あ、先輩。」

ボッティがバスケ部の人たちと、ユニフォームを着て、ボールを持ち、歩いている。

「ボッティ。」「部活?」

「そうです。先輩たちは帰るところですか?」

「うん、今日は、お父さんが、迎えに来てくれる日だから。」

「じゃ、また月曜日ですね。」

ボッティは行こうとしたが、レリカが声をかけた。

「‥次の試合、見に行くわ。」

「頑張ります。」ボッティは敬礼ポーズをして、行ってしまった。

 

家につくと、オイドレンとロドリアムとプーチが待っていた。

「学校、どうだった?」

「大丈夫だった。」

「そうか、よかったな。」

 

双子は反省の印に、2人で晩御飯を作り、みんなで食べた。

 

家の外には、ブースター先生が、カラスになり、双子を見守っていた。

そして、カラスになったナロウが来たので、飛び立った。

 

モアサは、方位磁石のような時計を取り出した。

その時計には、ジェイソン・モアサの名前が刻んである。

モアサは思い出した。

 

「すまない。君の兄さんを助けられなくて。」

少年のモアサは、うつむいた。

「俺を呪っていい。俺の名前は、キアラン・ジュード。」

その人は、ナロウのお父さんだ。

 

次の日の朝、双子は、オイドレンが読んでいた新聞をひったくった。

ドロシーさんが脱獄した記事が、載っていたのだ。

 

「なんだ。新聞に興味があるのか?まだ3才だというのに。」

 

「返せ。」

オイドレンが新聞を奪い、その新聞をプーチがとった。

「おお、アムタールムのテロから、もうすぐ30年か。早いのぉ、オイドレン。」

「ああ、その頃、俺はまだ15だった。」

 

1人で釣りをしていたロドリアムも、何かを感じとっていた。

 

【Nigrum】

【Matriacil】

【マトルキャットの切ない I love you】

【MICILUMA】

By Shino Nishikawa

 

 

 

 

 

 

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