倭建命伝説【ミヤズ姫とタケルの最後編】⑤

March 10, 2019

倭建命伝説【ミヤズ姫とタケルの最後編】⑤

タケルはルルズに言った。

「足柄山には歩いて入る。ここで降ろしてくれ。」

ルルズは30メートルほどの上空で、大きくカーブし、ゆっくりと降下した。

 

「ありがとう。」

タケルはルルズの嘴に顔をつけた。

「ルルズ、お前はここで帰ってもいいぞ。」

タケルが言うと、ルルズは首を振った。

「わかった、ありがとう。お前は、空からついてきてくれ。」

 

「カマキリとカメレオン。お前たちはどうする?」

「我々は、どこまでもタケル様にお供致しますゆえ。」

「そうか、ありがとう。」

 

「じゃあ、もう行こうか。」

タケルが言うと、ルルズは羽ばたき、空に飛び立った。

 

足柄山は、ただの森ではなく、青い森で不気味だった。

これまで見た事もない虫や獣がいるので、タケルは太刀を握った。

 

カマキリは言った。

「なんだか不気味ですね。」

「ああ。こんな森に入ったのは初めてだ。」

 

「ひっ。」

そう言って、カメレオンは地面のねばねばした物をなめた。

「どうした?カメレオン。」

「これ、人の血だ。」

 

タケルは太刀をぬき、あたりを見て、前進した。

「ああっ。」

刀に腹が刺さった男が座っている。

 

「大丈夫か?!」

「う‥。」

男は白目をむき、倒れ込んだ。

「おい、しっかりしろ。」

タケルは男をゆすったが、男は死んでしまっていた。

タケルは立ち上がった。

カメレオンは言った。

「こんなに致命傷をおって、生きながらえるのは、己にとっても、親族にとっても、地獄になるゆえ。」

「そうかもしれないな。」

 

「でも、命の長さは、神が決めることだ。世界に不要な命など、どこにもない。

その命があるからこそ、平穏が生まれるのだ。命がない場所に、本当の平穏などない。」

 

「それゆえ、タケル様は人間の命を奪わないのですね?」

「そうだ。もし俺が王になるのなら、この国の民、全員にとっての王になりたい。」

「タケル様は立派でございます。」

カマキリが言い、カマキリとカメレオンは頭を下げた。

 

「あ、そうだ‥。」

タケルは懐から、シラギの鏡を出した。

でも、シラギは霊力を使い、空に目をうかべ、タケルの事を見ていた。

 

「シラギ様に連絡してみよう。」

タケルが鏡をのぞくと、倭で石に座ってタケルを霊視していたシラギは、懐から鏡を出して、覗いた。

「タケル‥?」

「シラギ様、元気ですか?俺は今、足柄山に来ました。」

「そうか。足柄山は、思い人を亡くした男たちの死に場所だ。気をつけろ。」

「はい。」

タケルは少しすっきりした顔で、前を見た。

 

シラギはため息をつき、鏡を懐にしまい、

「おー、かわいい。」

小鳥たちにエサをあげた。

 

少し歩くと、乙女の姿が見えた。

並んで首吊りをしている男の縄をほどいている。

「ミヤズ‥?」

「タケル様?」

「お前、ミヤズなのか?!」

「ええ。」

「どうしてここにいる?」

「どうしてって、尾張に向かっていたの。そうしたら、男の人達が死んでいたものだから。」

「ああ、そうか。俺も手伝うよ。」

タケルは縄をほどき始めた。

 

カマキリは言った。

「タケル様、私にお任せください。」

カマキリは縄を切った。

 

「可哀想だわ。」

「そうだな。先を急ごう。」

タケルはミヤズの腕を抱き、先を急いだ。

 

「どうしてこちらに来たんだ?」

「上総に用があったの。」

 

「そうか、尾張までは、ずいぶん遠いだろう?足柄山から降りたら、ルルズに乗って、君を送って行く。」

「ありがとう。」

 

「こんな場所で会ったのは、運命だ。ミヤズ、俺たち、結婚しないか?」

「ええ?結婚?」

「そうだ。ミヤズこそ、俺の運命の想い人だ。どうか俺と、結婚してほしい。」

 

「タケル様‥。」

「ミヤズ様‥。」

カマキリとカメレオンは二人を見た。

ミヤズは言った。

「わかったわ。あなたと運命をともにする。」

「いや、ミヤズは俺の妻になってくれるだけで充分だ。俺のために命を落とすな。」

「ええ。わかったわ。」

ミヤズは言った。

 

尾張国へたどり着いたタケル達は、しばらくその場所で暮らすことにした。

タケルはシラギに連絡をした。

最近は、オホウスも城に戻ってきている。

シラギが鏡をのぞくと、オホウスは空の書斎から透明な階段で降りてきた。

オホウスも鏡をのぞいた。

「タケル‥?」

「兄様、お久しぶりです!俺、ミヤズ姫と結婚をしました。」

「そうか。おめでとう。」

「しばらくの間、こちらで暮らそうと思っています。」

「わかった、好きにしろ。」

オホウスは言った。

 

シラギは言った。

「しかし、父上は、タケルが王になることを望んでいる。いつかは戻ってきてくれ。」

 

「分かりました。いつかは戻り、この国の民のために、命を捧げます。」

 

 

「ただいま!」

タケルが家に入ると、ミヤズが赤子を抱いて座っていた。

カマキリとカメレオンもいる。

「おかえりなさい。」

 

「えっ?!その赤子は?」

「なぜか、私の腕の中にいたのよ。きっと、神様からの贈り物だわ。」

「なんと可愛らしい。きっと、クマソの弟、タケルの生まれ変わりだ。」

 

「あはは、タケルの生まれ変わりなら、きっと強くて優しい男になるにちがいない。」

タケルは赤子を抱き、笑った。

「カマキリ、絶対にこの子を切ってはならぬぞ。」

「わかりました。絶対にこの子に鎌を向けません。」

カマキリは鎌をわきの下に入れた。

 

数日間、タケルは赤子と一緒に幸せな日々を過ごした。

 

月夜、タケルは草薙の剣を、ミヤズの枕元にそっと置いた。

幸せすぎて、力がぬけていた。

家を出たタケルに、カマキリとカメレオンがついてきた。

「タケル様、どこに行くのですか?」

「伊服岐の山の神を平らげに行く。ミヤズに言うと、きっと心配するだろう?」

「はぁ‥。太刀を置いて行くのですか?」

「ああ。きっと言い聞かせれば、聞いてくれると思う。」

 

「我々もお供致しますゆえ。」

「ありがとう。」

 

伊服岐の山を登る途中で、白い猪が現れた。

カメレオンが聞いた。

「あの猪、なんでしょう?」

「きっと、山の神の使いだろう。帰る時に殺せばいい。」

タケルは言ったが、実はそれが山の神だった。

侮られたことに怒った山の神は、大粒の雹を降らせた。

 

「わぁぁ。」

「あああ!」

「ルルズ‥。」

タケルがつぶやくと、離れた森で眠っていたルルズが耳を動かした。

 

タケルはうずくまり、もう一度つぶやいた。

「ルルズ‥。」

ルルズは羽ばたき、タケル目指して飛んできた。

 

雹が止み、弱ったタケルをルルズは運んだ。

「あ‥。」

ルルズの背で起きたタケルを、カマキリとカメレオンがのぞいている。

「タケル様、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。」

 

ルルズは、能煩野でタケルを降ろした。

タケルは、木の枝を使い、空気の中に歌を詠んだ。

カメレオンが聞いた。

「タケル様、いつのまに呪術を?」

「あ‥。俺、呪術が使えるようになっている。」

 

「ヤマトタケル、お前を殺す日が来た!」

ふりむくと、後ろに男が立っていた。

「お前、誰だ‥?」

「俺は‥誰でもない。気に食わないお前を殺したいだけの男だ。」

「なんだ、つまらぬ。失せろ。どこかに行け。」

タケルは言い、また歌を詠みはじめた。

 

「よくも侮ってくれたな!!」

男は剣を持ち、タケルに向かった。

 

ガシャン

しかし、タケルの真後ろに男が飛び降りた。

「出雲‥?」

「ヤマトタケル、久しぶりだな。太刀を持たずに旅に出るとは、油断しすぎじゃないか?」

「すまぬ、幸せすぎて、不用心になっていたんだ。」

 

出雲健は戦い、男を倒した。

出雲健は言った。

「お前は倭に戻れ。お前の妻には、俺から倭に戻ったと伝えておく。」

 

「ああ、わかった。」

タケルは書きあがった歌を、空気に浮かべた。

 

 

ピュー

タケルは口笛を吹き、ルルズを呼んだ。

 

シラギは、空気から流れてきたタケルの歌をながめて、少し笑った。

 

倭に戻ったタケルは、王座に座った。

そして、兄弟、国の民は、タケルにひれ伏した。

 

「この国の民を、俺が必ず守る。」

タケルは言った。

 

タケルの魂は永遠である。

倭建命は、今でもどこかにいる。

そして、日本を守り続けている。

 

【倭の国】

【雷鳴】

【Return to the Moon】

【Requiem ~Rewind of the time~】

【栄時】

【KARASU】

【風を読む人】

By Shino Nishikawa

 

 

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