戦友【一伯】5

March 19, 2019

戦友 【一伯】5

落下傘訓練の後、19才や二十歳の男達は、一伯を不気味がった。

一伯を見捨てたことに罪悪感を感じた、高選手と日比野が、同じ部屋になり、面倒を見ることになった。

 

「一伯、大丈夫か?」

高選手は、二段ベッドの二段目から、声をかけた。

「はい。」

「上じゃなくていいか。」

高選手は、聞いた。

日比野は、布団をひいて寝ることになっていた。

 

一伯はうなずいた。

 

「代わりたくなったら、いつでも言え。」

高選手は、優しく言った。

 

 

「一伯って少し変わってるよな。」

一伯と同じ年の兵士が話していたので、高選手と日比野は切なくなった。

 

2人に、一伯は笑顔を見せるようになり、一伯の思い出話などを、聞いたりする仲になっていたのだ。

 

一伯は、ご飯をぽろぽろ落としながら話した。

 

ふとした話の流れから、落下傘訓練の時、一伯がどこにいたか、高選手は一伯に聞いた。

「船の見えない所です。」

「えっ、そうなの?」

「潜って泳いで、船につかまっていました。」

「そうだったんだ‥。」

「心配したよ。」

 

「はい。」

一伯は、きょとんとした目で、2人を見た。

 

別のテーブルでは、若い男達が笑っている。

 

一伯はうつむいてしまった。

「どうした?」

「別に‥。」

「仲良くしたいなら、俺が頼んでやるぞ。」

一伯は、黙っている。

 

日比野は、ため息をついて、目をそらし、自分のことを考えた。

高選手と日比野は、未来から、タイムスリップして来ているのだ。

 

2人で、いろいろなことを話し、キャッチボールしている時に、2人に雷が落ちた。

2人はプロレスラーだ。

高選手も一瞬、未来のことを考えたが、すぐに首をふってやめた。

一伯の顔をのぞきこむと、一伯は後ろを向いて、泣きだしてしまった。

 

ちなみに、他のテーブルの男達が笑っていた理由は、高選手と日比野と一伯が、父母と息子に見えたからだった。

 

「おいおい、どうしたんだよ。」

「一伯、大丈夫?」

 

一伯はぐずぐずと泣いている。

「ダメ。」

一伯は立ち上がり、行ってしまった。

 

「おいっ。」

高選手は立ち上がったが、日比野はお茶を飲みながら、高選手を小突いた。

 

1年後。

一伯は、死んだ。

 

「あ‥。一伯いねぇな。」

午前2時。

高選手が言った。

 

日比野は、完璧にいびきをかいていたが、ちゃんとした声で答えた。

「トイレ、じゃないですか。」

「そだな。きっとそうだ。」

高選手も右向きになり、眠りについた。

 

日比野は、ぱっちりと目を開け、天井を見上げた。

悪寒が全身を襲った。

なんと、一伯も、未来から来た人間だったのだ。

 

一伯は未来の世界で、海外の悪質テロ事件に関わっていた日本人であり、かなりの霊感の持ち主であった。

 

でも、一伯はとても弱い人間だった。

服毒自殺するために、理科室に行った。

基地は、廃校になった中学校を使っている。

前に調べたら、致死量の薬を調合できる分の薬剤が置いてあったのだ。

 

でも、怖くなり、うずくまった。

 

午前3時半。

誰もいないはずの理科室の奥から、1人の男が歩いてきた。

 

伸である。

 

伸は伸でも、この時代にいる伸ではなく、未来から来た伸だった。

 

伸は優れた霊感の持ち主で、タイムスリップは、雷なしでもできる。

 

伸は物音一つ立てず、近づいたので、伸が一伯の頭に、拳銃を当てるまで、一伯は気づかなかった。

 

一伯が、伸の目を見るか見ないかの所で、伸は撃った。

 

何も一伯は覚えていない。

 

伸も未来に戻った。

 

しかしまた、未来の一伯を見た。

いまだに、複数の女性へのストーカーを続けている。

テロもまた、起こすかもしれない。

 

伸は、現実の一伯がしたことを想像すると、夜、眠れなくなる。

それはテロと、女性にしたことだ。

 

一度、果物ナイフと一緒に寝た時には熟睡できたが、そのことを周りに話しても、誰も理解できず、みんな伸を止めた。

 

高選手と日比野は、まだ、戦争の時代にいる。

 

 

 

 

 

 

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