多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

June 22, 2019

多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

倫子は、歌手になりたかった。

最初の両親が、子育てがうまくできないと、新しい両親が現れる。

私もベイビーの頃、そうだった‥。ママの事なんて、もう忘れた。

子供なんてみんなそうだが、自分の真っ黒な足を見ると、切なくなった。

この体でどうやって良い大人になれるのか。

 

 

新しい両親を本物の家族だと分からないと、酷い事になる。

苦しみが消えないからだ。家族は、不純異性交遊を繰り返す。

子供はそれを目撃する。

倫子はそういう子供だった。

 

高校生になった倫子はため息をつくようになり、中年男性シンのアパートに行ったりした。

シンのアパートには、大学生も暮らしていた。

「しゃあないねぇ。」

シンは言った。

 

倫子の家は家賃を払えず、取り立てが来た。

そのたびに、可愛い倫子が顔を出した。

妹の朋子も可愛かった。

みんなで、「ごめんなさい。」と謝った。

 

「知ってる?」

朋子が聞いた。

 

「何?」

「お父さんって、お母さんじゃない女の人と会っているんだよ。」

「へー。」

倫子は布団の中で泣いた。

 

倫子は高校を卒業したが、そんなものはうわべだけの物だった。

倫子は、23才の一堂と付き合うようになる。

一堂の部屋で、一堂が、大人だという事を見せるために淹れたブラックコーヒーを飲みながら、倫子は言った。

「私、モデルになりたいんだ。」

「ええ?倫ちゃんがモデル?」

「うん。」

 

でも、倫子はモデルではなく、歌手になることになる。

「あいつ、こんな物、持ってやがった。」

一堂は、幼馴染のユウの家から、お洒落なレコードを持ってきた。

「どれ、見せて。」

倫子が見た。

「どうしてこんな物、持ってきたの?」

倫子はドキドキして聞いた。

 

かっこいい一堂は、一度、俳優に誘われたのに、なれなかった。

狂っていたので、無関係のユウのアパートに殺しに入ったのだ。

 

倫子には、それが分からなかった。その晩も、一堂と寝た。でも、とても辛い夜だった。

 

一堂は、今度、照彦を狙うことにした。

一堂は、おっとりした奴しか狙わない。

弱い男だった。

 

一堂が、照彦のアパートに侵入すると、照彦はギターを持って、歌を書いていた。

そして、驚いて言った。

「何~!?ちゃんと鍵かってあったでしょう?!」

 

いろいろあって、倫子と一堂と照彦は、3ピースバンドを始める事にした。

朋子は反対した。じじいと付き合ったりして、倫子に見せたがダメだった。

 

メジャーデビューすると、始めの方はうまくいった。

でも、紅一点の倫子に苦情がきた。

 

一堂か照彦が抜けることとなった。

 

ひょんな事から、倫子は、歌が書ける神童と出会う。それが私である。

私は、母に歌っていた歌を聞かれ、その歌を渡すことになってしまった。

家族の安全のために、仕方のないことだ。

 

でも、音楽というのは、その家の事情を隠すためや守るために流れるものなので、人の音楽を盗ってはいけない。

もしも、自分がそのメロディーを引き立てることが出来そうなら、書いてみせるといいと思う。

メロディーの作者も、良い心を持って、お互いに協力し合うことだ。

でも、みんなが、自分の言葉を歌うことに快感を覚える人だっている。

それは快感ではなく、安堵でもない‥。感謝なのだ。

私はメロディーの中に、魔法を入れてある。

あとは編曲家が、その魔法を呼び起こしてくれるのを待つのみだ。

 

作者が好かれることも肝心だ。だから、私は恋をしない。

どんなに良い人に愛されても、答えない。

東京五輪に私がふさわしい理由は、ファンが、私の良い男から、愛してもらえることだ‥。

 

倫子の話に戻る。

私があげた歌は最高だった。

でも、肝心な所で話はねじれ、それは、照彦が書いたこととなってしまった。

「さよならっ‥。」

倫子は、一堂に別れを告げた。

 

いろんな事があって、倫子はシンに再会した。

私は、車の中から、排水路に嘔吐する倫子を見た。

母が言った。

「あれ、倫ちゃんかなぁ?」

私は言った。

「関わらない方がいいよ。」

 

両親は胸を痛めた。できるかぎり、女の人を、娘だと思うようにしていたのだ。

 

どんなわけか分からないが、倫子はシンに、尿と便がかけられた白米を出されたのだ。

 

倫子はパンしか食えなくなった。

 

倫子は、病気になり、死んだ。

代わりの両親は、お米農家だった。

そちらに行けば、幸福だったと思う。

シンや一堂には、逢えなかったと思うが‥。

 

倫子は人気だった。

照彦の前に、倫子2世が現れた。

 

会社の人とよく話して、照彦も納得したことだ。

倫子2世が、倫子よりも伸びのある声で歌った時は、安堵した。

でも、恋人が来て、頭をなでたりしたので、不快だった。

 

 

私は、倫子の事が、忘れられなかった。

このところ、毎日のように思い出していた。

倫子は、尿と便のかかった白米を食べた。

 

デビューしなくても、音楽を書くことが赦されたのは良い事だった。

それは、歌に意味をこめて、聴いた人にとって、価値のある物にしたからだと思う。

 

私は、ダメだと言われても、作品を書き続ける。

 

人間の価値は、死んだ時に決まるのだ。

それまでに、お金にならなくても、素晴らしい作品を残しておくことだ。

他のみんなのためになる宝物を‥。

 

私は、もしも自分の息子がいたら、そう教えたい。

そう言って、無料の素晴らしい作品を書かせたいと思う。

 

 

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