神になった男

September 28, 2019

神になった男

 

神になった男[ベテラン執事]1

「一男、早くメシを食い終えろ。」

とても貧しい農家の黒い床で、小さな男の子は黙ってイモを食っていた。

食べ終わった一男(いちお)は手を合わせた。

父親は、一男の頭をコツンとした。

「なんとか言いなさい。」

「ありがとうございました。」

 

「いただきました。」

「いただきました。」

 

「一男、行ってくるでな。お前は家にいろよ。」

両親は農業のために、家を出た。

 

一男は家の外に出て、トイレをした。

すると、父親のものと思われるクソがあり、嫌な気分になった。

 

一男は家の中の引き出しからお金を出し、しげしげと眺めた。

「神様、僕にも勉強を教えてくださいよ。僕はお役人になって、天皇に勝ちたいんです。」

 

「だけど‥、こんな家からじゃ、無理だよなぁ。」

一男が家の外にもう一度出ると、クソが消えていた。

「あれ?」

 

「神様、便の事はありがとうございます。でも、僕のお父さんは貧乏です。だから僕が勉強するのは無理ですよね。」

 

『一男、願い事を言ってみなさい。』

 

「あの‥僕の‥家を変えてもらえませんか?」

 

両親が帰ってくると、魚を持っていて、夜は美味しい料理を作ってくれたので、一男は楽しい気分になった。

でも、朝、目覚めると、一男は別の家の子になってしまっていた。

とても大きな農家の子で、一男の名前は、栄一になってしまっていた。

 

ある日、女中さんと出かけると、前の両親に会った。

前の両親は、栄一を見ると、知らない子に会ったかのように笑って会釈して、行ってしまった。

栄一は切なくなり、少し泣いた。

 

でも、栄一は、神様にもらった夢を叶えるために、必死で勉強をした。

うまくいかなくなると、「神様お願いします。」神頼みをした。

 

栄一は、どこにいても、毒に気をつけた。

トップに立ち続ける栄一の命を狙う者は多い。

社員が自殺をしたりすると、家に行って挨拶をすることもあった。

毒入りだと分かっていながらも、栄一はお茶を飲んだ。

具合を悪そうにしながらも、栄一は最後まで家族の話を聞いた。

 

栄一は、変動の時代を生き、たくさんの歴史的人物に出会った。栄一は、500以上の会社を作り、日本の資本主義の父と呼ばれるようになる。

しかし、それでも、栄一は天皇に勝てなかった。

 

栄一は日本が好きだったが、ただ1人の男、天皇だけは嫌いだった。

 

栄一は様々な苦しみの中で、神にすがり、神に近い存在だったからこそ、偉業を成し遂げられたのだろう。

栄一は、死んだ後、自分の人生絵巻の中をただよった。

栄一の人生絵巻は、まるで日本の歴史のようだった。栄一本人も、この絵巻が自分の人生だと信じられないほどだった。

 

栄一は天国を一周した後、まだ生まれ変わらずに、幽霊として日本に降りることにした。

 

栄一はベテラン執事の幽霊だ。

豪邸に暮らす女の子に仕える幽霊ではない。

悩める普通の女の子の下に来てくれる。

 

遥は、とても美人だったが、男たちは二十歳そこそこの遥を相手にしてくれなかった。

二十歳をこえた美人は、高値の花だと思われる。

大学3年生で、今までは先輩に可愛がられていたが、今度は後輩を可愛がる番が来たのも辛かった。

ネットニュースやテレビでは、自分と同じ年のスポーツ選手やアイドルが活躍していて、自分が何にもなれないことをだんだん分かってきていた。

頭一つ飛び出るためには、どんなに険しい道を歩く必要があるのだろう?

遥はそうするために、過去に戻る必要があると思った。

 

東京オリンピックパラリンピックは華やかにすぎ、自分も感動をもらったが、終わってしまえば、過ぎた事に変わりなかった。自分の悩みである『頭一つ飛び出る事』の解決法が見つかっていない。

お洒落な会社に就職したかったが、うまくいかなかった。遥は友達や親にも何も言わず、グラビアアイドルを始めてしまう。

 

しかし、遥は両親にそれがバレてしまった。父親は何も言わなかったが、母親は激怒した。

遥は、マフィアにもらった毒で、母親を殺してしまう。

父親も、遥が大好きだった兄も、犯人は遥ではないかと疑った。

 

父親はトイレを汚し、遥は、「お母さん!」と呼んだが、もう来るはずがなかった。

遥は泣きながら、トイレを掃除した。

 

遥は麻薬をやって、脳をいかれさせるしか、生きる道が残されていなかった。

いくら迫っても、兄は相手にしてくれなかったが、父親は遥を相手にした。

遥は、父親と母親の代わりをしたのだ。

 

遥は東京の部屋に戻り、テレビの前でぐったりとした。

遥の母親は、スポーツ選手に相手がいたのに、待つ事ができなかった。

だから、遥も兄もスポーツができなかった。

美男美女の兄弟だったが、運動神経が悪すぎたので、まわりからバカにされた。

頭も悪かった。兄は野球部のマネージャーをしていて、ドーピング検査をすると部員に言ったのだ。兄は、また高校でバカにされた。

遥はその時の事を思い出した。

兄にドーピング検査の練習をさせられたのだ。

 

『遥お嬢様。』

ベテラン執事となった渋沢様は、遥の人生の一部始終を見ていた。

 

テレビでは、マラソンがやっている。華奢な選手が走ってゆく。

全然、何をやってもダメで、元気が出ない遥には、輝いて見えた。

「私、この人になりたい!」

 

『遥お嬢様、これをお飲みください。』

渋沢様は、遥に毒を置いた。

 

生まれ変わった遥には、魔法の体が与えられていた。

それでも完璧ではない。マラソンをするために、乗り越えなければならない事もいくつかあった。

本当に好きだった人の事も忘れないといけない。

 

『遥お嬢様、それでも、マラソンを続けるのですか?』

「うん。これは、私が見つけた道なんだから!」

『そう、分かりました。』

 

「何!その言い方は!」

 

『申し訳ございません。失礼いたしました。』

 

「もっと、ちゃんと謝ってよ!」

渋沢様は消えた。

 

今でも、渋沢様は、悩める女性のベテラン執事を務め続けている。

 

 

神になった男[釈迦]2

柴三郎は裕福な家に生まれたが、世の中が遅れている事には、いつも不満を持っていた。

だから、「政治家になって、世の中を変えてやる。」と家族に言った。

すると、家族は大笑いした。

「こんな田舎からじゃ無理だって。」

「じゃあ、相撲取りになって、世界一になってやる。」

 

家族は仲が良かったが、柴三郎はいつでも不平不満があるような少年だった。

でも、11才くらいになると、背も伸びてきて、心もまともになった。

男の若い先生が、小1の生徒の尻を出して叩く姿を目撃してしまい、その光景は、柴三郎の晩年まで心に焼き付いた。

 

柴三郎は本気で相撲取りを目指すと決め、両親と取っ組み合いまでしたが、結局折れて、医学学校に進むことにした。

東京では、美しい女性と出会った。

女性と付き合うようになり、夜のベンチで、女性の膝を自分の膝に乗せたりして、幸せなひと時を過ごした。

でも、ひと夏が終わる頃にはお別れすることになった。本当は、その女性はよくない女性だったが、柴三郎は生涯その人を忘れなかった。

 

医者になり、いろいろな入院患者の治療をして、とても大変な想いをしたが、いつでも、あの時の女性や、幼い頃の光景を思い出した。

柴三郎は息を引き取った人を、数時間放置したので、遺族から心配された。でも、すぐに死を断定しない柴三郎を、遺族たちは好きになった。

 

柴三郎の手はとても優しく、どんな病気でも治せるわけではなかったが、安心できた。

人気の役者が苦しみながら、病院に来た時は、柴三郎は少し見つめてしまった。

その役者はしばらくすると元気になって、見舞い客に冗舌に話したりした。

でも、ある時、その役者は亡くなってしまう。柴三郎は担当から外れていた。

見ると、投与された薬が間違っていた。

柴三郎は申し訳ない気持ちになった。

運ばれる役者のベッドを見て、「申し訳ないです。」とつぶやいた。

すると、役者は言った。

『ううん、いいよ。俺、どうせ、もう無理だったし。』

 

柴三郎は夢の中で、その役者の演技を、舞台袖から眺めた。

そして、やっぱり頑張ろうと決めた。

 

一番大変だった治療は、知り合いの女性の尻の穴に指を入れたことだ。

その事は、他の人に打ち明けられなかった。

 

たくさんの研究をして、世の中に自分の知識をどんどん流したが、くだらない思い出は忘れられなかった。それでも、その事が、柴三郎の支えとなった。

 

医学の学問はとても深い物で、柴三郎には他の世界の知識もあった。

だから、柴三郎は自分が日本一の男かなと思った。いや、世界一かもしれない。海外の医学研究者の論文を読んでみたが、浅い物だったからだ。

柴三郎は英語ができた。英語が分かるのは、雲の上で暮らしているお釈迦様方のおかげだと考えていた。

 

柴三郎が亡くなった時、多くの花が供えられた。

柴三郎はしばらくの間、ずっと寝てみたかった病院のベッドで眠った。

そして、いつも想像していた雲の上のお釈迦様方が迎えに来た。

想像サイズをはるかに超えた、人間サイズの方だった。

 

いろいろな神のテストを受けて、柴三郎は、最大権力を持つお釈迦様になる事となった。

普段は、大きくそびえたっているが、人間サイズに戻る事もある。

人間の大事な会議に顔を出す事もある。

言う事を聴かない、守護神の神獣たちと、決闘をする事もある。

 

神の世界は楽しそうだが、人間として、素晴らしい功績を残さないと、入る事ができない。

柴三郎も近い内に、お釈迦様の任期を終え、人間に戻ることになる。

 

それまでは、人間の健康を見守り続けることだろう。

 

 

神になった男[シド]3

シドがバンドをやった決定的な理由は、モテたかったからである。本当の好きな人の影はぼんやりとしか分からなかった。

初めてナンシーと会った時、なんて下品な女の子だろうと思ったが、本当の好きな人の気を引きたかった。

ライブで歌う自分は、サイコーだと思った。

でも、クスリをやっていて、ライブの前に、ナンシーが自分にした事や、自分がナンシーにした事は最低だった。

ライブは、いつもなんとなくション便臭くて、不快な気分にもなったが、歌い始めて、テンションがマックスになると、そういう物は全て吹き飛んだ。

 

ライブを始めてから、裕福な男や兵隊から話を聞かされたので、客から投げられた物が顔に当たって、鼻血を出しても、歌い続けた。それくらいすれば、奴らも認めるかもしれない。

 

シドはクレーマーに呼ばれ、体にシドの名前を刻んだ男の写真を見せられた。

そして、シドも同じ目に遭う事になってしまった。

 

シドがベッドの中で、ぼんやりとした本当の好きな人を想った。本当の好きな人とは、ベッドの中で、どこか別の世界で暮らしているような感じだった。

でも、それが、スターというものだ。

 

シドは目覚めると、顔をさわり、自分がまだ、シドヴィシャスだという事を思い出した。

どんなに酷評をされても、自分が歌う事は、許される気がした。

 

ある時、目を潰してしまった女の子を見た。それ以来、シドの心は落ち着かなくなった。

戦争で顔をぐちゃぐちゃにした男を見た夜に、最高のライブをしたのに、その女の子を忘れられなかった。

 

『いいか、みんな!犯罪はダメだ。』

『絶対に人殺しをしちゃダメだ。』 

こういう言葉をライブで言いたかったが、言えなかった。言えるはずない。ピストルズの奴らだって、信用できないんだ。

 

その事を思い出し、ホテルのベッドで、シドはまた頬をさわった。

今日も気持ちの悪いナンシーが帰ってくる。

でも、シドは、ピストルズのメンバーから自分の命を守るために、ナンシーと付き合うしかなかった。

 

しかし1978年10月13日、ついに、怒りの限界を超えたシドは、ユニットバスに連れて行き、ナンシーにキスをしてから、ナイフを取り出し、ナンシーの腹を刺した。

 

シドは動揺し、何度も手を洗った。

ベッドに横たわると、ユニットバスは静まり返っていた。

でも、ナンシーはまだ生きていた。

クソをしたくなったシドは、瀕死のナンシーの隣でうんこをした。

 

バタン

うんこの臭いが充満しているが、シドはドアを閉めた。

 

本当にナンシーの事が嫌いだった。

 

『黙秘しなさい。』 

シドは警察に捕まったが、母親の声が響いてきたので、黙秘を続けた。

 

レコード会社が多額の保釈金を払い、シドは保釈された。

レコード会社の事は嫌いだったが、その時だけはありがたいと思った。

シドは母親に「クソ。」と言ったが、母親はレコード会社に頭を下げた。

 

シドは、母親に薬をせがむようになる。

母親は父親に話した。

「あの子、あのまま、死ぬつもりかしらねぇ。」

 

最後の日、「どうぞ。」母親は厳しい顔で、シドにヘロインを渡した。

 

シドは顔を歪ませて、遺書を書いた。

決して、自分が殺したとわからないようにだ。

母親と真っ向から話合おうとしなかったが、『絶対に、自分が殺したと言ったらダメよ。』その声が、心には届いていた。

 

「なんでだよ!俺が殺したんだから、刑務所に何年だって入るのに!」

 

「もしかして‥お袋、自分の人生が、これからどうなるか怖いのか?」

 

『母さんの人生なんて、どうでもいいわよ。どうせ、いつか死んでしまう体だから。』

 

「クソ‥。」

シドは頭をかき、遺書を書いた。

 

『俺たちは死の取り決めがあったから、一緒に死ぬ約束をしてたんだ。こっちも約束を守らなきゃいけない。

 

今からいけば、まだ彼女に追いつけるかもしれない。

 

お願いだ。死んだらあいつの隣に埋めてくれ。

 

レザー・ジャケットとレザー・ジーンズとバイク・ブーツを死装束にして、さいなら。』

 

 

シドは、天国に旅立った。

 

いろいろな試練を受けたシド‥。

 

殺人者として人生を終えたシドは生まれ変わり、今飛行機に乗っていた。

生まれ変わったシドの目は、太平洋横断中の飛行機の中を見渡した。

白いジャージ姿の男が数人乗っている。みんな退屈そうだ。

シドの目は飛行機内を歩き、奥まで行き、みんながジロジロと見た。

やっぱり引き返すことにした。

 

シドの目は、白いジャージ姿の男の隣に座った。

 

なんと、シド自身、その白いジャージを着ている。

シドは気まずそうに目をそらした。

 

生まれ変わったシドは、今度はオリンピック選手になったのだ。

 

「さいなら。」

シドはつぶやいた。

シドの胸には、輝かしい金メダルがかかっていた。

 

神になった男 End

 

 

 

 

 

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

最新記事

December 7, 2019

November 30, 2019

November 29, 2019

November 29, 2019

November 25, 2019

Please reload

アーカイブ
Please reload

タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

© 2023 by EMILIA COLE. Proudly created with Wix.com