葵ちゃんの物語

December 11, 2019

葵ちゃんの物語

27才の葵ちゃんは、ハジアという大都市に住んでいました。その頃のハジアでは、結婚が何より大切で、みんな急いで結婚していました。確かに、結婚は大切な事です。でも、相手を無理に見つける事はいけません。いつか大切な人と結ばれる事を神様にお祈りするのが良いのです。

 

葵ちゃんは、ハジアでかっこいい大人になりたかったので、結婚をしたくありませんでした。27才の女性で、ハジアで独身だったのが、なんと葵ちゃんだけだったのです。

葵ちゃんは嫉妬されるようになりました。

そして、葵ちゃんは、いじわるな友達に旅行に誘われ、事故にあわされたのです。

なんとか一命をとりとめましたが、葵ちゃんは、一生重い障害が残ってしまいました。

 

ハジアという大都市が大好きな葵ちゃんでしたが、今は一人でトイレに行く事もできません。実家で両親と、お兄さんの家族と一緒に暮らす事になりました。

葵ちゃんは最初のうちは泣きました。体が動かない事はもちろんですが、両親は明るい色の服ばかり買ってくるのが嫌だったのです。葵ちゃんは、ハジアで来ていたような紺のスーツや黒い服が着たいと思いました。

それでも、お兄さんの子供である志穂ちゃんと明菜ちゃんの声を聞くうちに、だんだん元気になりました。

葵ちゃんの事が好きだった男の人も、葵ちゃんのために祈り、葵ちゃんは30才までの命と言われていましたが、寿命はどんどん延びました。

葵ちゃんは、週に何度かデーサービスに行き、それ以外の時間は、絵を描いたり、本を読んだり、勉強をして過ごしました。

葵ちゃんが40才の時、志穂ちゃんが、ハジアの専門学校に進学する事になりました。

でも、優しい葵ちゃんは何も言いません。

志穂ちゃんは、ハジアで2年過ごすと、葵ちゃんが暮らす家に戻ってきました。

 

しかし、今度は、明菜ちゃんが、ハジアに行く事になってしまいました。

志穂ちゃんは、葵ちゃんに美味しい料理を作って喜ばせましたが、明菜ちゃんは何年たっても、ハジアから戻りませんでした。

葵ちゃんの命は、何度寿命を迎えても、どんどん伸びていきました。もう一度、明菜ちゃんと一緒に暮らしたかったのです。

 

しかし、葵ちゃんの体は悪くなる一方です。もう次の世界に行かなければなりません。

寿命で死を迎える日だという事を知らせる天使のメッセージはいくつかあります。

鐘がなる事、夜、妖精たちが歌を歌いに来る事、また闇の音楽‥です。

いろいろなメッセージで、葵ちゃんに寿命の日を知らせましたが、葵ちゃんは強く断りました。寿命を迎える日が来たという事は、本人にとっても、生きる事が難しいという意味です。葵ちゃんは生きる事が難しくても、明菜ちゃんともう一度、一緒に暮らしたかったのです。

 

しかし、ハジアの虜になった明菜ちゃんは帰ってきません。

 

51才の時、葵ちゃんはついに死ぬ事になってしまいました。

天照大御神様が迎えに来たのです。

これは、神様の秘密なのですが、51才まで一度も結婚しなかった女性は、葵ちゃんだけでした。

葵ちゃんは一筋の涙をこぼしました。それは、今まで、自分のお世話をしてくれた85才のお母さんへの感謝の気持ちと、明菜ちゃんと一緒に暮らせなかった事への切なさです。

でも、天照大御神様は優しい方です。明菜ちゃんの事も想っていました。

 

葵ちゃんは気づくと、大きなベッドで寝ていました。

先に亡くなったお父さんが来て、「もう少し寝ていなさい。」と葵ちゃんに言いました。

葵ちゃんは安心して、眠れました。

 

本当はまだ寝ていたいのですが、起こされる日が来ます。葵ちゃんは別の世界に行かなければなりません。それには、三途の川を渡ることになります。

しかし、葵ちゃんは、お母さんよりも先に亡くなったので、賽の河原で石を積まなければなりません。葵ちゃんが石を積んでいると、奪衣婆さんが来て言いました。

「葵はそれくらいでいい。」

「え‥。」

葵ちゃんはびっくりして、奪衣婆さんを見ました。奪衣婆さんと懸衣翁様は、とても恐ろしいと聞いていたからです。

 

懸衣翁様は言いました。

「何をぼんやり見つめている?何か心残りがあるのかい?」

「ええと‥。」

葵ちゃんは口を閉ざしました。

奪衣婆さんが言いました。

「明菜の事かい?お前のせいじゃないさ。あの子は、ハジアに染まったんだ。ハジアは良い子の事も、悪く変えてしまうんだよ。」

懸衣翁様も言いました。

「ハジアの謎はたくさんある。なんせ、人がいっぱいいるんじゃ。一番は、ハジアで暮らせば、大切な人の命を失う危険がある事だ。でも、ハジアでは、大切な人が誰なのかも忘れてしまうけどな。」

 

葵ちゃんは、口を開きました。

「あの、明菜ちゃんを幸せにしてあげてください!」

「もちろんさ。俺たちの方からも、神様に頼んでおくよ。」

「ありがとうございます。。」

 

「ちょうど、葵がお前を迎えに来たよ。」

奪衣婆さんが言いました。

 

『葵。』

「誰?」

『元気だったころの葵よ。』

霊はそう言い、葵の体に入りました。

葵はようやく、自由に動ける体に戻ったのです。

 

「葵、元気で。」

「もう二度と、ここではお前には会わないからね。」

 

「ありがとう、お爺さん、お婆さん。」

葵は感謝し、次の世界へと渡り始めました。

 

天照大御神様は、明菜に光を落としました。

明菜は、ようやくハジアから出る事を決めたのです。

必ず幸せに生きられます。ハジアにいなくても。

 

有名人もたくさん住んでいるハジアという大都市。

みんな、大切な人を奪われているのです。

もしくは、大切な人が、ハジア以外の場所に住んでいるのです。

 

その事にハジアの人は気づきません。

謎が一つ一つ解けるたびに、秘密はどんどん崩れるのです。

 

神様は『辛い時でも笑う事』を一番に教えてくれます。

どんな時も笑う事ができれば、どんなに秘密が崩れても、平気でいられるでしょう。

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